第21話◇リフレちゃんが繋ぐもの
本当に有名だったんだなぁ、「SOLUNAR」……。
ただ、そんな「SOLUNAR」好きな彼女が、本当に私の記事の、それも私の超個人的な話をしているだけの地味な内容の記事を、見てくれるものなのかな?
プロの作家でなく素人なのに、それも赤の他人が書いた長文なのに、好き好んで?
正直、信用しきれないと思う。
読まなくてもスキのボタンはいくらでも押せる仕様のようだから。
そう考えた私は、あえて「すももさん」の反応を探ってみることにする。 この人がちゃんと私が上げた記事に反応しているのかどうかを。
「そうだ、たしか、この辺に……」
私は呟きながらクローゼットを漁る。
出てきたのは、お歳暮のお菓子の詰め合わせが入っていた、大きな缶。
これは就職決定後、実家からこの部屋に引っ越す時に、ゴミとしては絶対に処分できなかったものだけを詰めた宝箱だ。
中に入っているのは、例のお祖母ちゃんの形見の大林さんのビデオと。
それから……。
「……あった。『リフレ』ちゃん」
探し出したリフレちゃんのお人形。
限定グッズの。
それは当時、全種類コンプリートを目指していたかなめから、被りで余ってしまったひとつを、たまたまもらったものだ。
せっかくだから、と思って。
それはきっとあの水滴のキラキラの美しさが、当時の私の頭の中に残っていたから。
元々は、かなめとの友情の証として、持っていたものだけど……。
今となっては、かなめだけじゃなくて、もしかしたら月浦さんもすももさんも、何かしらの反応をするかもしれない。
これは三人の「それぞれの思い出」の一部のはずだ。
私は「久々にクローゼットから発掘した」という一文を添えて、スマホで撮った写真を新たな記事として上げてみる。
大林さんの「昇龍舞う」のビデオパッケージの上にリフレちゃん人形一体を乗せた、一見、そっけない写真付きの記事。
さっそく、かなめからスキがつく。
「私があげたリフレちゃんじゃん!!私もまだ持ってる!!笑」というコメントもすぐに追加された。
そして――
『これ、リフレのグッズですよね?懐かしいです、私も押入れに保管してます!!私、ソルナーで洸推しなので。さゆさんの、お祖母さんについての記事も見ました。大林昌親、以前に洸と刑事ドラマで共演していた時しかチェックしてなかったのですが、お祖母さんの推しへの愛が熱くて、さゆさんのお祖母さんへの愛も熱くて、とても切ないのに優しいお話でした』
数時間後、このコメントが、すももさんから届いていた。
ここまでしっかりした返事が来た。
ということは。
「この人、本当に私の記事読んでるんだ。すごい……」
さゆさん、と呼ばれたことも、何だかくすぐったいような気がした。
私はこの人から見て「さゆさん」なのだ。
登録のためにかなめに便宜的につけてもらっただけのアカウント名から、やっとnoteをやっている人――「noterのさゆ」としての自覚が少し出てきたかもしれない。
ていうか、大林さんと「東雲」さん、共演してたんだ。
大林さんの刑事ドラマ……把握しているだけでもいくつかあるな。
どれだろう。
有名なところだと、二時間サスペンスの「殺人日記の夜」シリーズか、それとも単発スペシャルドラマの「マリオネットは供物を捧げる」あたりか……。
そしてもうしばらくすると、月浦さんもこっそりとリフレちゃん人形と「昇龍舞う」の写真にスキしてくれた。
他にも数人のフォロワーさんたちが反応してくれて、嬉しいな。
こんな何気ない、独り言みたいな更新なのに。
さらに、次の日。
すももさんが、私のお祖母ちゃんの記事を、自分の記事の中で紹介してくれていた。
「私的・おすすめの推しnoter様の記事」という題名で、5人の他のnoterさんたちと一緒に紹介されていた。
コメントで語っていたことと同じ語り口で、とても好意的に。
あと、リフレと大林さんの写真の記事にも、東雲洸の話題と一緒に触れて。
そのおかげか、フォロワーが、いつの間にか十人単位で増えていた。
プロフィールで確認すると、全員にアイドルや俳優やドラマ・映画などについての記事が。
どうやら芸能人好きなnoterさんばかりのようだ。
「わ。やっぱり芸能人の影響力ってすごいや……」
大林さんはともかく、「東雲」さんについては……元、だけど。
でも、芸能人の推しについて語る人も、noteにはたくさんいらっしゃるんだなぁ……。
その日から、私は少しずつ、大林さんが出演した作品のレビューと軽い日記のような記事を上げ始めた。
そういう形なら何とか続けられるかも、と思って。
すももさんのおかげで新規のフォロワーさんが増えはしたけれども、収拾がつかないほどではなかったから、私はしばらく、のんびりと探り探り、このnoter生活を続けていくことにする。
週に一回程度、リアルの仕事がしんどくて疲れた時、そっけない時はありつつも。
目標は「細くとも、せめて長くやり続ける」。
そんな今の私が客観的に見てどんなnoterかを、表現するなら……たぶん、「大林昌親推しの祖母の洗脳を受けて、大林さんの出演作をひたすら記事にし続けている人」だろう。
それ以外については「よく分からない謎の人」だと思う。
私も、自分がよく分からないな……。
果たして、提供コンテンツとしてこれでいいのか。
フォロワーさん、こんなので大丈夫なんだろうか。
毎回、十ちょっとくらいはスキがついてるから、これでいいのかなぁ?
それさえも、ちょっとよく分からない。
でも、ものすごく大量のフォロワーさんが欲しいとか、マネタイズしてお金を稼ぐ記事書いてみたいとかは今のところ思ってないし、流行にも疎いから、ウケそうな時事ネタに触れた記事書きたいとかも、特に思ってないもんなぁ、私は……。
書けるものは大林さんの出演作と、通勤路の道端でこれ見つけたとか、スーパーやコンビニでこれ買ったとか、そういうの。
いつかまたnote公式さん主催のコンテストで「書いてみたい」と思うネタが、来るといいな……。
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