第18話◇フォロワーさんとコンテスト
次の日は、コミックアクセス5についての記事を書いた。
主にイベントに誘ってくれたかなめと、交流した月浦さん、シンヤさん、AKARIさん。
フォローしてくれている四人に向けての個人的な感謝がメインだ。
あとはシンヤさんの漫画の感想や、AKARIさんのコスプレ衣装、月浦さんのポストカードについて軽く触れて、それぞれのアカウントを紹介するようにリンクした。
これで二回目の投稿。
少し慣れてきたかもしれない。
記事の投稿後、しばらくすると、四人分のコメントが付けられていた。
かなめは「めっちゃ話したいことできたから、また連絡する~。あと、こないだ言ってたインドカレー屋さんも、偵察してくる!!」。
シンヤさんは「先日はありがとうございました、おかげで次の日の締め切り間に合いました。でもそんな俺の漫画、えっちじゃないから!!全然、Rつかないくらいだから!!」。
AKARIさんは「オフィーリアとアルザスの衣装と髪型は作るの苦労したの。褒めてくれてありがとー。あと、三人で撮った写真、今度会った時にデータ渡すから!!」。
月浦さんは「イベントおつかれさまでした」と、一行。
だけど、もう先日の彼の写真つき記事でかなり多めの情報量が込められていたので、さしてこれをそっけないとも感じない。
私はそれぞれのコメントに小さく笑ってしまいながらハートマークを押して、返信した。
「あの店の、チーズナンの中のチーズの量と、マンゴーラッシー、すごい気になる」
「間に合ってよかったですね、えっちな原稿。笑」
「着た姿もかっこよかったです。データ、了解しました」
「おつかれさまでした」
すると、それからまた数時間後。
意外なことが起こっていた。
四人からそれぞれのコメントにスキが押されて反応されるのは予測していた。
けれども、それだけではなくて、全く知らない人からのフォロー通知も来ていた。
「新しいフォロワーさんだ。みんな知らない人たちだ……」
直近では「すももさん」という人がフォローしてくれている。
新しく現れた、知らない人たち。
けれど、これからはこの人たちのことも少しずつ知っていくんだろうか。
「どんな人なのかな……」
クリックして少し覗いてみると、すももさんという人は二次創作の方であのイベントに出ていたようだ。
あれ?
このクリエイターページの上部の画像の、少年二人組のミニキャラ。
青髪と赤髪の……。
私、こういう組み合わせ、どこかで見たような気がするけど、何だっけ……。
こういう時、微妙に察しが悪くて自分でももどかしい。
もしかなめならすぐに反応できるだろうに。
どうやら、他の人もみんな、先日のイベントに参加していた人たちみたいだった。
かなめのように自作の本やキャラクターについて語っていたり、シンヤさんや月浦さんのように、イベントの参加情報をプレゼンしている記事があるアカウントだ。
「漫画や小説書いてる人が多い?」
つまり、「創作系・クリエイター」という繋がりで流れてきたのだと思われた。
似た傾向のアカウントの人たちが寄り合い状態になってグループ化していくものなのか、もしくは「♯コミックアクセス5」と先日のイベント名のタグをつけていたから、それで辿ってきたのだろうか。
しまった。
他には何も記事を書いてないところにイベントのタグをつけたりしていたから、「創作系の人っぽさ」が割り増されて見えてしまったのかもしれない……。
私には小説も漫画も書けない。
生み出す方の存在ではないのに。
せいぜい読むことしかできないのに。
ここにいてもいいのかな、私……。
またしても不安な気持ちになる。
早く何か、それっぽい記事を上げないと……。
私は、私の立場で、何を伝えるのがいいんだろう。
思考はここ数日、グルグルと堂々巡りしている。
私はページの上方にあるベルマークを押す。
スキやフォローの通知の確認のためだった。
けれども、その「通知」の横に「お知らせ」というのがある。
何だろう?と私はそれを押してみた。
『投稿コンテスト「忘れられない家族の思い出」を開催します!』。
そこに表示された文面に、私はまばたきする。
『エルム・ヘルスケア×noteで、投稿コンテスト「♯忘れられない家族の思い出」を開催します!
日常の出来事や特別な日の出来事など、家族としたこと、その記憶や体験など、印象的だった思い出を募集します。』
まさにその「お知らせ」の中に、私は自分の答えを見つけたような気がした。
「noteって、家族のことも、書いていいんだ……」
私は思わず呟いていた。
お祖母ちゃんと過ごした、子供の頃の記憶がよみがえってくる。
そうして、元々は時代劇「昇龍舞う」についての記事を書いてみようか、と考えていたことも思い出した。
「このコンテスト……参加して、みようかな」
自然と、独り言を漏らしていた。
そして初めてちゃんと書く記事のテーマとして、このコンテスト用の記事を、お祖母ちゃんの話を書くことに決めた。
誰にも、両親に対してもずっと言えなかったお祖母ちゃんの話を、やっとここで書けるんだ――。
こう考えて。
「やっと書ける」という思いを抱いている自分を、そこに新発見する。
気にしてないふりをして何年も生きてきたけれど、本当は当時のお祖母ちゃんとのことがずっとこの胸に引っかかり続けていたのだと、私は実感をもって理解したのだった。
こんな気分になっているということは。
たぶん、本当はずっと、誰かに聞いてもらいたかったんだ……。
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