Ep. 26 : 第13章 意識の彼岸 Heaven ? Beyond Consciousness
〇VR最深部・「門の核」
無数の光の粒が、まるで意識の断片のように漂っている。
それらは、蒼の記憶、感情、そして他者の思念すら含まれていた。
蒼:「ここは……俺の、内面なのか?」
その声に、応じるように空間がわずかに揺れた。
中央には、荘厳な紋様を刻まれた白銀の“門”――Noös Gateが浮かび上がっている。
その前に立つのは、《ユダ》の幹部にして、神経精神プログラムの改竄を専門とするドクター・ギャロ。
ギャロ:「君の“鍵”は、無意識下に保護されていたが……今は違うのだよ。
私が君の“自我構造”を解析する。君は《門》そのものになる運命にあるんだよ」
蒼が身構えようとした、その時――
再び、ラファエルが姿を現した。
仮面はない。かつての彼とは違う、透過された記憶の映像のような存在。
「驚いた? ……僕もだよ。さっき別れたばかりだって思っただろ?」
蒼:「……なんでここに?」
ラファエルは微笑む。
その表情には、仮想存在でありながらも、どこか“救済者”のような静けさがあった。
ラファエル:「ここは、“自我の最終領域”。Noös Gateの核。君が門に触れる限り、僕の存在も、ここに“再生”されるんだ。魂が記録媒体になった君の中に、僕の痕跡も――残ってたってわけなんだ」
「まるで……聖霊みたいだな。天使の名を持つ者が、魂の記憶として残るなら――それは、たしかに第二の聖霊かもしれないな」
「……“神は癒す”。それが僕、ラファエルの名の由来なんだ。だったら、僕の最後の役割は、君の“決断”を見届けることかもしれない」
ギャロが冷笑を浮かべる。
ギャロ:「滑稽だな。まるでヨハネ黙示録の四騎士ごっこだ。
だが現実は、魂さえもコード化されたただのデータだよ。君たちの“信仰”など、無意味だ」
蒼は、コルト・ガバメント・コンバットカスタムを抜き、静かに言った。
蒼:「魂がコピーできるなら、それはもう“俺”じゃない。
俺の意志は、誰の手にも渡さない」
蒼は医師としての知識を生かし、神経マップ上の防御パターンを即興構築。
ラファエルは演算干渉波を操作し、敵の攻撃パターンを逆解析。
ドクターギャロは「蒼の記憶」を次々とコピーして最強の幻影兵士、強化使徒を生み出す。
「この“記憶の兵士”たちは、お前の罪と後悔で構成されている。倒せるものか!」
その罪と後悔による痛みこそが俺を形作ってる。だから、俺が終わらせる!」
蒼は“自分自身”と戦い、撃ち抜く。兵士たちが崩れると同時に、《門》の装置が激しく暴走を始める。
だが現実は、魂さえもコード化されたただのデータだよ。君たちの“信仰”など、無意味だ」
蒼は、コルト・ガバメント・コンバットカスタムを抜き、静かに言った。
「魂がコピーできるなら、それはもう“俺”じゃない。俺の意志は、誰の手にも渡さない」
「魂は塵に還るが、記憶は残る。記録される限り、それは祈りにもなる」
〇最終決着:門の封印
手術室――。
静寂の中、火の鳥Vers.XII改型のロボットアームが、蒼の脊髄にiPS細胞を慎重に移植していた。
その指先には、0.01ミリ単位の触覚フィードバックが走る。
操作しているのは“もう一人の蒼”――VR内に存在する、意識化された外科医そのものだった。
祐:「終わったんだ……よな? 蒼……聞こえるか?」
だがその瞬間、モニターにかすかな波形が走った。
蒼の右手の指先が――ほんのわずかに動いた。
香坂:「反応あり! 蒼は生きてるわ……!」
香坂楓の声が震える。涙が、頬を伝った。
だが安堵は一瞬だった。
警報が鳴り響く。
【警告:神経構造の再構成進行中――注意:自発的意識復帰の可能性アリ】
祐:「まずい……! 神経の統合が完全じゃない! 蒼、まだ“向こう”にいる――!」