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狐姫様の婿  作者: 尾見環
第一章
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七話

「千里、お主の予想の根拠は?」

 光姫が口を開く。千里は頭の中で思い描いた文章を吟味し、覚悟を決め、口にした。

「俺がヒトで、身寄りがないからです」

 光姫は無言で続きを促す。

「狐姫様に対して俺が抱く印象を率直に申し上げますと、自信家で秘密主義、孤独を好むが人を使うことは嫌いじゃない」

「散々な言われようじゃな」

 光姫の茶々をものともせず、一拍おいて千里は言った。

「しかし、有能で聡明。豪胆な一面もある」

「お主は随分とわらわを買っておるの。それとも、なんじゃ、媚びているのか?」

 光姫は微笑を保っている。恐らく、微笑を浮かべた状態が常なのだろう。それが余裕からくるものなのかは千里には判断がつかないが。

「そんなお方が結婚を許すのはどんな人物か。俺が導き出した答えはこれです。誰とも結婚したくない。それが本音なのではないでしょうか?」

 光姫はうんともすんとも言わない。両者黙ったまま見つめ合い、時間だけが過ぎる。

「推測に推測を重ねた、偏見ともとれる意見じゃが。仮に今言ったことが正解だとして、わらわはなぜ伴侶に千里を選ぶ? 望まないのじゃろ」

「俺と狐姫様が対等でないからです。ヒトであるうえに孤児の俺は社会的弱者です。対するあなたは干支一族の当主を務めている社会的強者。当主に求められるのが跡継ぎならば、仮に離婚しても再婚しなければならない。立場の差がある以上、俺があなたに口出しすることなどありえませんし、俺とあなたでは明確な暴力の証拠でもない限り離婚は不可能です。あなたが夫に望むのは自分の自由を制限しない者。そのうえで俺は適任だったわけです」

「なるほど」

 光姫は得心が行ったように頷いている。千里の予想はあながち外れてもいなかったようだ。

「では、千里」

「何ですか?」

 干支一族の当主相手に随分と軽い口調だが、千里の緊張は既に限界に達していた。

「わらわと伴侶になるのはどうじゃ?」

 光姫は手を差し出した。

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