四話
「失礼します」
許可を受け、千里は扉を開いた。窓から差し込む日光が眩しく、目を細める。目の前に彼女がいることはわかるが、逆光となっていてその姿は見えない。
「眩しいか?」
問いかけられる。女子にしては低く甘い声だった。
千里が言葉を返す前にカーテンを閉められる。余計な光がなくなり、その姿が浮き彫りになった。
千里は思わず息を呑んだ。瑛太の話から想像していた姿に違わない。いや、それより遥かに美しい少女がそこにいた。
高貴さと妖美さを両立させた光り輝く黄金の長い髪に炎を宿したような赤い瞳、肌理細やかで日の光を一切浴びたことのないような白い肌。顔を構成するパーツの一つ一つにこれ以上ない整った形と完璧な配置がされ、髪と同じく金色でふさふさの耳と尾はひどく魅力的。十二単の袖から覗く手は細く、綺麗な爪は繊細な美しさを誇っている。赤と金の十二単にも負けない煌びやかさに目を奪われる。華やかさを体現したような圧倒的な存在感があった。
「初めまして、じゃな」
微笑む姿は優艶でとても同い年とは思えなかった。声が耳を蕩かす。夢心地となっている自分を叱り、千里は姿勢を正した。
「初めまして。三年一組の巽谷千里です」
「わらわは生徒会長の華狐光姫じゃ」
またも低く甘い声が耳に届いた。甘いと言っても一般的な女子の声の甘さではなく、低いと言ってもそれ程声が低いわけではない。どこか浮世離れした甘く低い声なのだ。光姫は上品な笑みを絶やさない。