秘密の扉
ティニカクヤセ隊の秘密基地とも言える隊長・茶団子丸の部屋。その部屋の奥に、一つだけ決して開けてはならない扉が存在している。扉には様々な模様のお札が貼られ、鎮められていた。
この扉の向こうにはお菓子天国があるのだ。
ありとあらゆるお菓子が詰め込まれ、しかもそれらのお菓子はエンドレスに増殖し、決して尽きることがない――開けば最後、まさに誘惑の無限地獄である。
ある晩、茶団子丸は部屋でくりいむ子と作戦会議を開いていた。ゾウ神との戦いに勝利するために。
「私たちが勝つためには、まずお菓子を断たなければならない。でも、どうやって?」
くりいむ子が首をかしげる。茶団子丸も深刻そうに腕を組んだ。
「それが分かれば苦労しないさ。とにかく、誘惑に打ち勝つ強さを――」
その瞬間だった。
ギィィ……
静寂を破るように、封印された扉が勝手に開き始めた。
「えっ……!?ちょっと待って、これ勝手に開くの!?」
くりいむ子が慌てて扉に駆け寄ろうとするが、遅かった。
ドドドドド……!!!
扉の向こうから雪崩のように押し寄せるお菓子たち。ポテトチップス、チョコレート、ビスケット、グミ、キャンディ、さらにはプリンやシュークリームまでもが床を埋め尽くしていく。
「なんでもある……!?」
茶団子丸は目を見開いたままお菓子の圧倒的パワーに呆然と立ち尽くしていた。
お菓子の大軍は止まることを知らず、二人の足元をどんどん埋め尽くしていく。その甘い香りとカラフルなパッケージが、二人のタベタイ欲求を刺激してやまない。
「くっ……誘惑が強すぎる……!」
茶団子丸はお菓子を掴んでは放り投げ、掴んでは放り投げるが、全く追いつかない。くりいむ子も必死にお札を拾い集め、再び扉を封印しようとする。
「隊長!お札を貼って、早く閉じないと!」
「分かってる!でもこの量は無理だ……!」
二人が奮闘している間にも、お菓子は床からベッド、さらには天井まで積み上がっていった。部屋全体が甘い香りと高カロリーな気配に包まれる。
終わらない戦い
数時間後、二人は完全にお菓子の山に埋もれていた。疲れ果てた茶団子丸が、無力感に包まれた声でつぶやく。
「どうして……止まらないんだ……?」
「隊長……これ、きっとお菓子の呪いだよ……。扉の向こうにあるお菓子は、私たちが欲望を持ち続ける限り、永遠に増え続ける……」
「永遠に……?」
茶団子丸は絶望的な表情で天井を見上げた。確かにその言葉には説得力があった。隊員たちのタベタイ欲求が消えない限り、この戦いに終わりはないのだ。
「じゃあ、どうすればいいんだ?僕たちは一生これに屈し続けるのか……?」
「分からない……でも、きっと何か方法があるはず……!」
その後、二人はなんとかお菓子を片付け、再び扉を封印した。しかし、隊員たちは知っている。この扉がまたいつか勝手に開き、お菓子の大軍が襲い来ることを――。
「これは永遠の戦いね……」
くりいむ子がため息をつくと、茶団子丸も頷いた。
「でも、諦めたらそこで終わりだ。僕たちはティニカクヤセ隊なんだ。極を目指す限り、この戦いを続けるしかない……!」
扉の封印は決して完璧ではない。だが、二人はそれでも進むしかないのだ。欲望との戦いは終わらない。
扉を見つめる隊員達の手にはポテトチップスとチョコレートが握られていた。