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62話


【ポロロッカ】前世でインチキ宗教の教祖だった。神様を楽しませればその罪が償えるということで転生した。妄想癖が酷く、何かあればすぐに黙り込む。頭のネジが飛んでいるので喧嘩を売られれば必要以上に買ってしまう。


<好きなもの>:女性、食事、睡眠、金。<嫌いなもの>:面倒な事、辛い事。<怖いもの>:神。


特殊魔法「ネゴシエーション」:言葉や文字に力を持たせる魔法。


 


 少し涼しくて清々しい朝の空気の中を僕はポロロッカさんと一緒に歩いている。


 目的地はポロロッカさんが買収した元薬屋さんの土地。古い建物を取り壊して今、五階建ての建物を建てている最中だ。


 いつものお決まりのルートを通って果物屋さんについた僕は、「生絞りピーチ」という桃をふんだんに使った、2000ゴールドもするジュースを口に含んだ。うん、やっぱり美味しい。


 この「生絞りピーチ」はポロロッカさんの大好物なのだけど、期間限定商品なので、飲めるうちに飲んでおきたいポロロッカさんはお店の近くに来るたびに、御馳走してくれるんだ。僕のお母さんが聞いたら飲み物に2000ゴールドなんてってビックリするだろうな。


 本当はお土産として作業を頑張ってくれている画家のセンティー達にも持って行ってあげたいんだけど、彼女たちは夜型タイプで朝は寝ているのできっと現場にはいないだろう。


 話ながら歩いているうちに建物に近づいてきた。ポロロッカさんがここに来るのは久しぶりだ。前に来た時は僕が土魔法で作った白色の建物が地味すぎるという事で手直しをすることになった。


 僕は頑丈でとても良いものが作れたと思っていたので、最初はちょっとショックだったけど、それでも僕のことを尊重してくれたのか全面的に作り直すというわけでは無くて、もう少し手を加えて複雑な作りにするという程度の物だったのは良かった。


 せっかく作ったのに自分の手で壊してしまうのはやはり悲しいものがある。それにポロロッカさんがイメージした絵をもとに大工のウユリさんが書いてくれた図面を見ながら作っていくうちに、僕にも段々とその良さが分かってきた。


 5階建てのそれぞれの階層に屋根が付いているというかなり不思議なデザインだったのだけど、見れば見るほどに心が落ち着いて来るというか、なんだか良く分からない不思議な魅力を持っていた。


 そう言えば最近の王都では「マッドマン」という新種の魔物がまた話題になっている。


 この魔物は人を殺すことは無いけど、その代わりに人の皮膚を溶かす魔法を持っていて、被害にあった人が何人も出ている。そんな魔物は過去に例が無いので人を溶かすことを楽しんでいるのだと言われているが本当かどうかは分からない。


 それが最近は王都の近くで目撃されているらしいので、いずれ塀を乗り越えて侵入してくるのではないかと噂されている。被害者の中にはBランク冒険者もいるという噂で、それが本当ならばかなりの身体能力を持っているはずで、王都の高い壁でも乗り越えることは可能だろうと言われている。


 もし本当にそんなことになれば王都は大パニックになるだろう。ここには魔力を持たない人もお勢暮らしているのだから。


 そんなことをポロロッカさんと話しながら歩いていると、作業の現場に到着した。


 ポロロッカさんは口を開けたまま何も言わない。その原因を僕ははなんとなく分かっている。


 ポロロッカさんが言う通りに屋根の設置は図面の通りに上手くできていると思うのだけど、図面とは大幅に違う点がある。


 ポロロッカさんは建物が地味すぎるので、悪目立ちしない程度に彫刻を入れようと考えて画家のセンティー達に仕事を依頼した。それ自体はすごく良かったと思う。


 問題はセンティー達だ。彼女たちはまだ画家として成功しているとは言えず、描いてもほとんどが家の中に溜まっていっている状態だ。


 それなのにこれだけ大きくて目立つ仕事を任せられたものだから、大いに張り切ってしまって、壁に絵を描き始めてしまったんだ。神様だとか天使様だとか花だかと、ポロロッカさんの顔だとか。


 花に関してはポロロッカさんの希望通りだけど、神様と天使様に関してはただの独り言だったので、実際には注文したわけじゃないし、ポロロッカさんの顔については完全に彼女たちの独断だ。


 どうしてこんなことに………という声が聞こえる。


 本当は僕が止めるべきだったとは思う。ポロロッカさんは柱や梁の部分に花や植物などの彫刻を入れて欲しかったのだ。


 落ち着きがあって風流で威厳と風格のある五重塔をこの世界に造る、そう言っていたポロロッカさん。それがどういう意味なのか僕には分かったけど、こういうのじゃないという事は分かる。


 5階建ての建物はこのあたりでは一番高い建物なのでその時点で目立っているのだけど、その壁の一つ一つをキャンパスみたいにして絵をかいてあるのだから余計に目立つ。


 ポロロッカさんが彼女たちに頼んだのは彫刻であって、絵を描くことじゃないんだ。それは分かっている、だけど言えなかった。


 近所の人や通りかかる人たちが神様や天使様の絵を見ながら「良い絵だね」とか「素敵」とか声を掛けられて、すごく嬉しそうに描いているんだもの。


 もしかしたら彼女たちは絵を描いていてこんなに褒められたことは無いのかもしれないと思うくらいに喜んでいたんだ。


 絵を消すことは出来るか?


 ポロロッカさんはそう言ってきたけど「僕には無理です、ごめんなさい」としか言えなかった。


 それにこれはまだ途中で、彼女たちはもっともっと書き込む予定なんです。今の所彫刻をやっているのはアクセサリー職人のアスカさんだけなんです。


 色を付けるためにペンキを沢山注文しているんです。なのでもっともっと派手になります。だけど僕には言えません、本当にごめんなさい。






最後まで読んでいただきありがとうございました。


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