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59話


【ポロロッカ】前世でインチキ宗教の教祖だった。神様を楽しませればその罪が償えるということで転生した。妄想癖が酷く、何かあればすぐに黙り込む。頭のネジが飛んでいるので喧嘩を売られれば必要以上に買ってしまう。


<好きなもの>:女性、食事、睡眠、金。<嫌いなもの>:面倒な事、辛い事。<怖いもの>:神。


特殊魔法「ネゴシエーション」:言葉や文字に力を持たせる魔法。


 


 ここは若い芸術家たちが集う狭い路地裏の中にある家。私たちがここにやって来たのは、スイリンが建てている5階建ての建物に彫刻をいれたいと考えているからだ。


 頑丈さはありそうだが白くて長方形すぎて、私の目には豆腐にしか見えない建物なので、今から軌道修正して何とか格好いい建物にしたい。


 目指すのは五重塔。


 私のかなりあやふやな知識によれば、五重塔というのは1階層ごとに屋根があって一番上の屋根には長細い剣みたいなものが伸びていた。そして建物全体に派手過ぎない程度の装飾が施されてあった。


 スイリンに聞いたところ、巨大な石壁を作ることは簡単だが、細かい作業をするのは苦手だという。それだったら得意なものに任せればいい。スイリンにも説明したが、全部をたった一人でやる必要はないのだ。


 というわけで若い芸術家たちが集うこの場所へとやって来た。私が知っている芸術家というのは彼女達しかいないし、ベテランの芸術家だと性格が終わっている人間しかいない気がするから。彼女と会うのは私が前に調子に乗って、大量に絵を買ってしまった時以来だ。


「私たちに絵を描く仕事をくれるってことか!?」


 身を乗り出して勢いよく喋ったのはセンティーという名の若い女性画家。明るめの綺麗な茶色の髪のショートカットなのだけど、自分で切っているのではないかと思うくらいに前髪が斜めだ。


 センティーの話に対しては完全に否定する。


 さっき言ったばかりなのだがもう一度説明すると、私が探しているのは彫刻の出来る人間なのだ。この女は勢いはすごいが、人の話を聞いていないやつだという事がこの短い時間で分かってしまった。


「彫刻?そんなのやったこと無いよ、できるかなぁ………」


 出来ないならしょうがない。なぜ私が画家である彼女達に声を掛けたかと言えば、ダビデ象を作ったミケランジェロは彫刻家であり画家でもあるという事を知っているから。


 なので彼女達にも出来るかもしれないと思ったのだが、どうやら難しかったようだ。それならそれでOK、私には本命がいる。それはアクセサリー職人のアスカだ。


「わたし?」


 頭にバンダナを撒いている若い女性が自分を指さす。そう、私は露店でアクセサリーを売っている彼女の作品を気に入って、特注の腕輪を作ってもらったのだが、その出来が大変すばらしく、また頼みたいと思っていたのだ。


 腕輪には桜をモチーフにした彫刻を入れてもらった。金属と石では素材はまるっきり違うし、建物に入れるのだから大きさも違うが、それでも彫刻という点では同じだ。


 なので彼女ならばきっと素晴らしいものを作ってくれるだろうと私は確信している。


「私も建物の彫刻なんかやった事は無いけど、面白そうね。本当に私でいいの?」


 もちろんだ、きっといいものが出来ると確信している。


「ねえちょっと、諦めるの早くない?」


 アスカと喋っている間に、いつの間にか画家のセンティーがものすごく近い所にいた。なんだか怒っているような気がするがそんなはずは無いだろう。断って来たのは向こうなのだから希望通りではないか。


「最初の一回くらいは断らせてよ、それは芸術家に対するマナーでしょ?もう一回言って来てくれたら快くやってあげても良いよ、って言おうと思て待ってたのに。なんでたったいいかい断った位で諦めるのよ。それになんかアスカに対しての熱量の方が高くない?私達に声を掛けてきたのはなんかついでだったみたいな感じがする、ねえ、そう言うのすごく嫌な感じなんだけど」


 物凄く早口で喋っているが、そんなこと言われても知らんがな、と言いたい。言わないけど。


「わ、わたしはやってみたいです、やりたいです。彫刻は一度やってみたいと思っていたんですけど、道具を買うお金が無いのであきらめていたんです」


 少し慌てながら手をあげて喋っているのは、赤毛で丸顔の画家の少女、確か名前はセリーヌだ。


 やる気がありそうなのは嬉しいが少し不安もある。というのも前に彼女の絵を見たのだが、丸いはずのリンゴを平べったく描いていたからだ。


「私に任せて、小さいやつだけど彫刻なら経験があるから」


 色白で赤い髪の少女が言った。私が前に絵を買った画家たちの中で彼女の絵が一番上手だと思った。さらに彫刻の経験もあるというのなら安心できる。ただ一つ不安なのは彼女が書いていたのがなぜかバレリーナの少女の絵ばかりだったという点だが、まあ問題は無いだろう。


「しょうがないから私たちみんな協力するよ。前に沢山絵を買ってもらったからそのお礼」


 センティーが言った。悪気が無いのは分かっているが、私が必死に頼み込んでいるみたいなこの感じはなんなんだろう。ちょっとイラっと来る。


 だけど私は大人なので歯を食いしばって「ありがとう」と伝えると彼女たちは嬉しそうな顔をした。


 そして改めてアクセサリー職人のアスカにも仕事を引き受けてもらって、これでようやく私が思い描く五重塔完成に向けて一歩近づいた。リーダーはアスカに決めた。それしか考えられない。


「それで、彫刻のテーマはどうするの?」


 さっそくリーダーのアスカが聞いてきた。


 確かにそれは必要だ。それぞれが好き勝手に彫刻を入れられては困る。作品というのは服であれ建物であれ全体のバランスが大事なのだ。


 神様にするか?


 私がこの世界に来た目的は、この世界での私の行動を見て神様の楽しんでもらって、前世の罪を帳消しにして天国へ行くことだ。


 だから神様をテーマにした五重塔を建てて、神様に対して胡麻を擦るというのはありなんじゃないか。ついでに天使も加えたりすれば、私の評価がうなぎ上りになるに違いない。


 いや、待てよ。


 あまりにもわざとらしすぎて逆に嫌われるという可能性もあるな。目の前にいる画家の少女達の表情とこれまでの言動を見てみれば100%信用することは出来ない。しかも神様と天使だと宗教感が強すぎてこの世界の教会と蚊に目を付けられる可能性すらあるな。それはさすがにやめておこう。


 それなら花にするか。天国は花が咲き誇っているというイメージがあるから神様も天使も好きなはずだ。しかも教会に目を付けられることもない。


 花にすることを決め、彼女たちに告げた。


 この時の私は気が付いていなかった。私の悪い癖は考え事に集中しているとたまにブツブツと独り言を言っているという事がある。


 つまり「神様と天使」という言葉も、少女達にはバッチリ聞こえてしまっていたのだ。


 宗教感の強い五重塔の誕生はここから始まった。





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