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58話


【ポロロッカ】前世でインチキ宗教の教祖だった。神様を楽しませればその罪が償えるということで転生した。妄想癖が酷く、何かあればすぐに黙り込む。頭のネジが飛んでいるので喧嘩を売られれば必要以上に買ってしまう。


<好きなもの>:女性、食事、睡眠、金。<嫌いなもの>:面倒な事、辛い事。<怖いもの>:神。


特殊魔法「ネゴシエーション」:言葉や文字に力を持たせる魔法。


 


 灰色の分厚い雲が横たわる空へ向かってそびえ立つその白い建物を私は見上げた。


「どうですか?まだ仮の状態ですけど立派に建物だと思いませんか?」


 スイリンが土魔法で建てた5階建ての建物。


 工事の責任者であるスイリンが問いかけてくる。ここ2ケ月ばかり毎日ここに通い詰めていたのだから、それはもう思い入れがあるのだろう。


 確かに言っているように建物としては出来ていると思う。これが土魔法を使って作り上げたと言われても分からないくらいにはなっている。扉も窓もついていて雨風を防ぐには申し分ないはずだ。


 豆腐みたいだな。


 第一印象がそれだ。飾り気のない長方形の白い建物は豆腐にしか見えない。なんというかまったく面白みがない。


「もしかしてあまり気に入りませんでしたか?大工のウユリさんとも相談して使いやすくできていると思いますけど」


 誇らしげだった表情が心配顔に変わっていた。


 周りの建物を見渡してみても豆腐型というのは無い。大工のウユリは経験値が高くて頼れそうな見た目をしているので、こんなに面白みのないものを作るだろうかというのは疑問だ。


 もしかしたらこの形はスイリンが決めたんじゃないのか?


「よくわかりましたね。ウユリさんが持ってきてくれた図面は複雑な形をしていて大変そうだったので、出来るだけ簡単な形のものにしてくださいと僕が頼んだんです」


 やはりそうか。


 スイリンが土魔法を使って建物を作るのは初めてなので、自信が無かった。だからただの長方形型の構造になってしまったのだ。


 もっと格好いやつがいい。


「ええぇぇぇえ!駄目ですか?!」


 駄目じゃないんだけど、これじゃあテンションが上がらない。


「テンションですか………」


 スイリンは全く分かっていないような顔をしている。そうだ、わかった。スイリンの数少ない欠点の一つがファッションセンスが壊滅的だという事だ。


 いま着ている服も黒のタンクトップの真ん中に、青色の大きな丸がプリントされているという、偽物の日本国旗みたいなデザイン。


 スイリンがこれを選ぶ時からずっと思っていたのだが、いくらでもある選択肢の中からどうしてこれを選んでしまったのかという感じだ。


 そんなスイリンだから見た目に対してのこだわりは一切なくて、ただ頑丈で雨風を凌げて、早くて簡単に造れればいいと思っているのだ。


 それは分かるがいくらなんでもこれは豆腐すぎる。なので、時間は掛かっていいからもう少し凝ったデザインの建物にしてほしいと頼む。


「うう………わかりました」


 明らかに肩を落としているスイリンに、これだけの短い期間で5階建ての建物を作れるなんてすごい、天才的だと褒める。


「本当ですか?」


 それはもちろん本当に思っている。大工の手伝いはあるにしても基本的にはこれらはすべてスイリンの土魔法によって作り上げた物。住宅販売会社にでもなれば大儲けできるだろう才能だ。


 だからこそもっとチャレンジして欲しいと告げる。


「チャレンジですか?」


 そうだ、これは魔法で建物を建てるという目的だけでやっているわけでは無くて、スイリンの土魔法の修業でもあるのだ。だからこそ難しいことにチャレンジして欲しい。


「修行、そういうことですか………確かにいつも土魔法の練習をする時よりも緊張しながらやっていたので、良い修行になっていたと思います」


 私の気持ちが通じたようで、スイリンの気持ちが前を向いてきたのを感じる。


 お前ならできる。


「わかりました!もう一度やってみます。ただ僕にはどういう建物が格好いいのかが分からないので一緒に考えてもらえませんか?」


 どうするか………。


 スイリンに対しては好き勝手言ってしまったが、私には建物のデザインをした経験などあるはずもないし、何も考えてないなんて言いにくい。


 困った。


 待てよ、それならば自分で考えるのではなく、誰かが考えた物を使わせてもらえばいいのじゃないか。5階建ての長細い建物で、だけど格好いい建物………それはなにか………日本の建物、日本らしい建物………。


 そうだ。


 大工のウユリも呼び寄せて、落ちている木の棒を使って私は地面に絵を描いていく。


 5階建ての建物の1階ずつにそれぞれ屋根を付けていく、そして一番上には真っ直ぐにそびえ立つ棒。これならば、今ある建物を生かすこともできるはずだ。


 私がイメージしたのは五重塔だった。





最後まで読んでいただきありがとうございました。


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