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56話


【ポロロッカ】前世でインチキ宗教の教祖だった。神様を楽しませればその罪が償えるということで転生した。妄想癖が酷く、何かあればすぐに黙り込む。頭のネジが飛んでいるので喧嘩を売られれば必要以上に買ってしまう。


<好きなもの>:女性、食事、睡眠、金。<嫌いなもの>:面倒な事、辛い事。<怖いもの>:神。


特殊魔法「ネゴシエーション」:言葉や文字に力を持たせる魔法。


 


 土魔法を使って立派な建物を建てよう計画は順調だ。


 言われた時はかなり不安だったのだけど、大工一筋34年というウユリさんがしっかりと指示してくれるので、試行錯誤しながらもなんとか仮組みが完成したところだ。


 朝日に輝く長方形の白い建物を見ていると、誇らしい気持ちになる。自分一人で作ったわけではないけれど、それでも何も無い所にこれだけ高い建物を建てることが出来た。


 今日は扉と窓が運び込まれる予定になっているので、それを空けた壁の穴に合わせてみて、問題がないかを確認する。


 もしなにかあれば僕が穴の位置を調整したりして合わせる作業をするつもりだ。窓と扉が付けばさらに建物らしくなるはずで、とても楽しみ。



 僕としては平屋か、せいぜい2階建てくらいの建物を想像していたのだけど、ポロロッカさんがどうせなら50階建て位の建物にしたいと言ってきたので驚いたし、冗談だろうと思った。


 だけどポロロッカさんは全然笑っていなかった。50階建て!?そんな建物はこの広い王都の中のどこにもない。ポロロッカさんだって見たことが無いはずなのに、どうやったらそんな大きな考えが出て来るのだろう。


 そんなのがもし倒れてしまったら大事件だ。大工のウユリさんも建物が高くなるほど風の影響を受けて倒壊しやすくなるので危険だと説明してくれたおかげで諦めてくれた。そしてなんとか5階建ての建物で許してくれた。 


 やっぱりポロロッカさんはちゃんと説明すればわかってくれる人なんだと安心した。それでも周りの建物に比べたら全然高いけど。


「おいお前ら!誰に断ってこんなでかいもん作ってんだ!」


 怒鳴り声が聞こえたので僕は気持ちを切り替えてすぐにそこに向かう。


 そこにいたのはいかにも普通じゃない格好をした体格のいい2人の男で、窓を運び込もうとしている業者の人の行く手を塞いでいた。


 ついに来たか。こうなるかもしれないというのは、前から不動産屋のキーニさんから聞いていたので覚悟は決めていた。


「なんだお前!ガキは引っ込んでろよ、痛い目にあいてぇのか?」


 僕は男たちの目の前に黙って立ちはだかった。


 大工のウユリさんは声が大きくて快活でとても心強い人だけど、魔法使いじゃないからこういう場面では僕がやったほうがいい。


「引っ込んでろって言ってんだよ!」


 丸顔でスキンヘッドでかなり背の低い男が僕の顔に向かって声を張り上げた。


 これでいい。他の人が巻き込まれてけがをしてしまっては大変だ。僕はずっと剣術の稽古をしているし魔武器「隠者」も持っているから不安はない。


 顔を変形させて脅かそうとしているけど怖くもなんともない。全くの無駄な行動だ。まともに武術をしている人ならこんなことはしない。


「何の用ですか?」


「なんだお前?あ?」


「僕はこの工事の責任者です」


「責任者?お前が?ガキじゃねぇか」


「何の用ですか?」


「責任者なんだったら金持って来いよ」


「お金?」


「ここはな、俺たちの縄張りなんだよ。俺たちの許可もなく勝手にこんなもん作っちゃいけないんだよ、分かるか?」


「いくらですか?」


「300万だよ300万、いますぐ耳揃えて持って来いよ。そうじゃなかったらこれ以上なんも出来やしねぇぞ?払うまで俺たちは毎日来るからな」


 もう一人の方の背が高くて髪の毛を整髪料でバッチリ決めた男が言った。その言葉の通り本当に毎日来そうな感じだ。


 マフィアだ。


 こうやってお店の邪魔をして「みかじめ料」とか言いながらお金を取るのがこいつらのやり方。


 僕がこの工事をやることになってからポロロッカさんから1億ゴールド預けられている。だから300万ゴールド位のお金は簡単に払うことが出来る。


 周りに人が集まってきて僕たちのやり取りを見ている。その視線に自分の体が少し硬くなっているのを感じる。駄目だ。こんなことくらいで緊張していたら強くはなれない。


 体から力を抜いている状態こそが正しく剣を操るために必要なんだ。魔力だってそう。固まった溜まった体では魔力の通りが悪くなって威力を出すことが出来なくなる。


 僕は肩を回した。


「何してんだお前、金だよ金、どうせ持ってねぇんだろ?お前じゃなくて今すぐに本当の責任者呼んで来いよ、あ?」


 丸顔スキンヘッドが睨みつけてきた。


「払うつもりは無い」


 僕は言った。


 後々問題が大きくなるのは分かっている。金を払うのが一番簡単な方法なのは分かっている。


 だけど僕は絶対にそれをしない。


 許せない。なぜこんな奴らに金を払わなくてはいけないのか。なぜこんな奴らのために一生懸命頑張っている人たちが奪われなければいけないのか。


 僕は魔武器「隠者」を正眼に構えた。


「てめぇなにしてんだよ!」


 魔力を通すと隠者が植物に覆われていく。


 これを手に入れてから僕はポロロッカさんに相談しながら何が出来るのか色々と研究をしている。


 隠者は殺傷能力こそ真剣には劣るかもしれないけれど、その分だけ色々と使い勝手のいい魔武器だ。


 いま隠者が纏っているのは「ツタウルシン」という名前の植物で、山に行けば簡単に出会うことが出来る。


 すごく目立たない見た目の葉っぱなのだけどこの樹液に触れると、かぶれてひどい痒みをもたらすのだ。


「お前、魔術師か!」


 当たり前の言葉を叫んだあとで、慌てて懐に手を入れた男たちの顔へ向け、隠者を薙ぎ払った。





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