55話
【ポロロッカ】前世でインチキ宗教の教祖だった。神様を楽しませればその罪が償えるということで転生した。妄想癖が酷く、何かあればすぐに黙り込む。頭のネジが飛んでいるので喧嘩を売られれば必要以上に買ってしまう。
<好きなもの>:女性、食事、睡眠、金。<嫌いなもの>:面倒な事、辛い事。<怖いもの>:神。
特殊魔法「ネゴシエーション」:言葉や文字に力を持たせる魔法。
不動産屋のキーニさんに連れられてポロロッカさんと僕は、丸ごと権利を買い取った薬屋さんへとやって来た。
小さい。
両隣に2階建ての家が建っていて、それに挟まれて小さな平屋がある感じだ。建物の大きさの違いもあって、思っていたよりも小さく感じる。
キーニさんの話では、立地が良いのでこれでも昔は結構繁盛していたのだそうだ。けれどある日、ここよりもさらにいい立地に大型の薬屋さんが出来てお客さんがそちらに流れたのだそうだ。
さらに、誰が言いだしたのか、ここのお店の薬は偽薬だという噂が立ったことで、さらにお客さんが減っていって数年前にお店は締めてしまったのだそうだ。その話を聞きながら見る古びた建物はなんだか寂し気だ。
不動産屋さんで一度点検をしたけど、雨漏りの跡が何か所もあるのでリフォームするか、いっそ解体して新しい建物を建てるしかないとキーニさんは言った。
どうするつもりなのか聞いてみれば、やはり解体して新しい建物を建てるつもりだ、とポロロッカさんは言った。
そこまでだったら「やっぱりそうだよね」という感じだったのだけど、その後の言葉に僕は驚いた。
「お前が建ててくれ」ポロロッカさんは僕に言った。
ちょっと待って欲しい、確かに僕は土魔法が得意だけど、それはいくらなんでも無茶だ。土壁なら何度も作ったことはあるけど、建物なんか一度も作った事は無いからやり方が分からない。
僕は焦りながらそういう言事を言ったのだけど、ポロロッカさんは落ち着いた様子で土壁を繋ぎ合わせれば壁になるし、上を塞げば屋根になると言った。
確かにそうかもしれないけど、それで出来たものは建物じゃなくて窓も出入り口もないただの土壁の箱だ。それだったらちゃんとした大工さんに建ててもらった方がいいと思った。
そうしたらすぐに「なにもお前ひとりで全部作る必要はないんだよ」と言われた。
意外な言葉に驚いてどういうことですかと聞いてみれば、扉や窓を付けるのは大工さんにやってもらえばよくて、僕は大工さんに指示された場所に土壁を作って、そこにちょうどいいサイズの穴を開ければいいだけだと言われた。
そして不動産屋のキーニさんに、大工さんを紹介できるかと聞いたら、「もちろん可能です」という言葉が返ってきた。ふたりの表情を見てみると落ち着いていて、焦っているのは僕だけだ。
何だか恥ずかしくなってきた。簡単にできることなのに一人だけ焦っているみたいな気持ち。
そうか、僕一人で作らないくて良いのか、僕は只言われた場所に土壁を作るだけでいいんだ。そう考えてみたら不思議と出来るかもしれないという気持ちになってきた。
不動産屋さんであるキーニさんの落ち着いた感じを見れば、もしかしたら土魔法使いが家を建てるというのはよくあることなのかもしれない。僕は聞いたことが無いけど。
ただ、家として使うのなら何十年も雨風に負けない頑丈な土壁にしなければいけないので、時間がかかるなと思った。
そうしたらポロロッカさんは、ここに住む予定も何かに使う予定も今の所ないのだから、時間がかかっても構わないと言われた。やってみて失敗してもやり直せばいいだけだとも言ってくれた。
そうか、僕達は宿の部屋を借りて住んでいるから、別に何も困ることは無いのか。なぜだか分からないけど、すぐに建てないといけないみたいに思っていた。
それならやってみようと思う。今までやったことが無いからと言ってできないとは限らない。やってみてどうしても駄目だったら、考えればいいんだ。
やってみます。
僕がそう答えるとポロロッカさんは満足そうに頷いた。その笑顔を見ているとなんだか嬉しくなってきた。そうだ、僕は前からポロロッカさんの役に立ちたいと思っていたんだ。
お医者さんでもどうしようもない僕の病気を治してくれたのはポロロッカさんだ。毎日、高価な漢方薬を買って、声を掛けてくれたお陰で今ではどんなに激しい運動をしても体の中が苦しくなる事は無い。
僕にとってのポロロッカさんはがんじがらめの鎖から解放してくれた神様みたいな存在。もしかしたら家族に対してよりも思う気持ちは強いかもしれない。
ポロロッカさんが僕に頼みごとをしている。これはようやくやって来た恩返しのチャンスじゃないか。土魔法は僕の得意魔法なのだから、ここで良いところを見てもらおう。土に関してなら自信はある。
そう考えたらドンドンやる気が湧いてきた。よし、がんばって立派な建物を建てるぞ。
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