表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/63

49話


【ポロロッカ】前世でインチキ宗教の教祖だった。神様を楽しませればその罪が償えるということで転生した。妄想癖が酷く、何かあればすぐに黙り込む。体を帯びる強力な魔力と鋭い目つきのせいで無意識のうちに周囲を威嚇している。頭のネジが飛んでいるので喧嘩を売られれば必要以上に買ってしまう。


好きなもの:女性、食事、睡眠、金。嫌いなもの:面倒な事、辛い事。怖いもの:神。


特殊魔法「ネゴシエーション」:言葉や文字に力を持たせる魔法。


 


 太った雲が天高くそびえる青空には爽快な風が吹いていて、とても気持ちのいい朝だ。


 僕とポロロッカさんは日課である剣術道場に来て稽古をつけてもらっている。ポロロッカさんは魔力欠乏症を起こしてしまってから3日ほど休んでいたので、今日は久しぶりに来た。


 みんな驚いていた。


 それもそのはずでポロロッカさんの体格が明らかに大きくなっていたから。道場に入った途端に、何があったのかと質問攻めにあったポロロッカさんは、すべてを「成長期」という言葉だけで乗り切っていた。説明したくても何が起きたのか自分でも分からないからそうしたんだと思う。


 驚いたのは見た目だけでは無くて戦い方が全く変わっていたことだ。


 今までの稽古では木刀を構え、打ってきた相手の攻撃を防ぎながら、隙を見て相手の懐に一気に飛び込んで肉弾戦に持ち込むという戦い方だった。


 無手だ。


 それなのに今日は木刀を持たずに、両手を開いたまま手を顔の位置に置いて、相手にまっすぐ歩いていく。


 当然ながら相手は木刀を打ち込んでくるわけだけど、そのほとんどを開いたままの両手で弾き返していた。


 普通の人なら手が折れてもおかしくない。だけど魔法使いは普通の人ではない。


 身体強化。


 魔力によって体を満たし肉体の筋力、強度を上げることが出来るという基本中の基本のような魔法の使い方だけど、その強度が凄かった。


 打ち込んできた木刀がポロロッカさんの構える手に触れた途端、打ち込んできたのと同じくらいの速度で、木刀が弾き飛ばされてしまうのだ。


 大きな木に思い切り木刀を打ち付けた時のように、自分の方に跳ね返っていた。


 そうするとどうなるか。剣士は木刀を手放さないようにと必死に頑張るのだ。戦場で剣を手放したら終わり、それは剣術家にとって常識だから、握力で何とか持ちこたえる。


 その時点でもう体勢は完全に崩れている。


 一番大切な体の正面が隙だらけになってしまうのだ。これだったらむしろ剣なんか手放して、逃げた方が良いような気がする。だけど剣術家としての本能がそれをさせない。


 体勢を立て直そうとしたときにはもうすでにポロロッカさんの拳が自分の顎のあたりでピタリと止まっているという、いわゆる詰みの状態になって、審判から勝負ありの声がかかった。


 騒然とする道場。


 誰もはっきりとは言葉にしなかったけれどみんなが思っていることはひとつだと思う。


「強い」


 いくら訓練を重ねても自分の肉体以上に器用に操作できる武器というものは存在しないと、道場生の人が言っているのを聞いた。


 確かにその通りでどんなに練習を頑張っても木刀をコントロールするよりも手をコントロールする方が簡単だ。魔力によって圧倒的に強化された肉体は、強さと同時に精密さを持っている。


 二刀流のようなものかと思う。


 二本の腕が剣を弾き飛ばすための手段であると同時に攻撃方法でもある。つまりは攻防一体であり、これを掻い潜って自分の攻撃だけを当てることはかなり至難。


 僕も剣を使うから道場生のみんなが何を考えているのかは分かる。


 だったらこっちの武器が本物の剣だったらどうか、魔武器だったらどうか。それによってポロロッカさんの身体強化を突破する一撃を打ち込むことさえできれば勝てるはずだ、そう思っているはずだ。


 逆に言えばそれが出来なければどんな剣を持ってきても負けるという事だ。



 ポロロッカさんを見て気が付くこと。


 そのひとつめは、魔力欠乏症の後のポロロッカさんは体が大きくなって髪も伸びたのだけど、それだけでは無くて魔力が強くなっているという事だ。


 ポロロッカは一目でわかるくらいに力を持った魔法使いではあったけど、これほどの力は無かったような気がする。つまり魔力の総量が前よりも上がっていると僕は思う。


 そしてこの戦い方は魔力欠乏症を引き起こすきっかけとなった、冒険者ギルドでのSランク冒険者クワバラさんの戦い方を参考にしているはずだ。


 あの時のクワバラさんは、魔武器を身に付けたポロロッカさんの攻撃全てを仁王立ちで受け止めていた。殴られても殴られても笑いながら立っていた。


 あれは間違いなく身体強化を使ったことによる受けだった。


 つまり身体強化という技を極めれば、肉体だけで受け切るということが可能だということだ。ポロロッカさんはあの時クワバラさんを攻撃しながらそのことを実感したはずだ。


 だから今日は戦い方を変え、木刀を捨て、肉体だけで剣術家の木刀の攻撃を全て受け切ってみせた。たぶん今日は、これを試すために道場にやって来たのだろう。


 強くなっている。


 ポロロッカさんは間違いなく日毎に強くなっていっている。どんどん増えていく異世界のTシャツを満足そうに眺めているだけでは無く、自分がどうすれば強くなるのかを考えているんだ。


 強くなろう。


 僕も負けないように強くならないと、置いて行かれるかもしれない。その事を想像すると心が痛くなる。


 見捨てないでください、と泣きつくのは嫌だ。僕はポロロッカさんのお荷物にはなりたくない。目指すのはポロロッカさんの隣に堂々と立つ僕の姿。


 そうなれるかどうかは自分自身にかかっている。ポロロッカさんはすごいスピードで変わっていく。追い越すつもりくらいの気持ちでないと、あっという間に見失ってしまいそうだ。


 強くなろう。


 より一層その気持ちが強くなった。






最後まで読んでいただきありがとうございました。


「ブックマーク」と「いいね」を頂ければ大層喜びます。


評価を頂ければさらに喜びます。


☆5なら踊ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ