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48話 ~異世界Tシャツ~


【ポロロッカ】前世でインチキ宗教の教祖だった。神様を楽しませればその罪が償えるということで転生した。妄想癖が酷く、何かあればすぐに黙り込む。体を帯びる強力な魔力と鋭い目つきのせいで無意識のうちに周囲を威嚇している。頭のネジが飛んでいるので喧嘩を売られれば必要以上に買ってしまう。


好きなもの:女性、食事、睡眠、金。嫌いなもの:面倒な事、辛い事。怖いもの:神。


特殊魔法「ネゴシエーション」:言葉や文字に力を持たせる魔法。


 


 まだ朝の早い時間だけど僕とポロロッカさんは街へと繰り出して大通りから外れた道を歩いて行く。


 僕達が向かっている先は服屋さんだ。朝起きたら突然髪が長くなって体が頭一つ分くらいは大きくなってしまったポロロッカさんが、今までの服が全部サイズが合わなくなったという事で買いに行く。


 こういう狭い通りにある服屋さんが扱っているのは中古の服。普段のポロロッカさんなら新品の服をちゃんとした服屋さんに買いに行くのだけど、服屋さんに買いに行くための服が無いらしい。


 確かにいまの服の裾からはおへそが見えているし、袖からは手首がはみ出している。この姿をちゃんとした服屋さんに笑われるのが嫌みたいだ。


 それにこういう通りにあるお店の方が朝早くやっているからというのもあるだろう。


 僕としてそこまで気にすることもないような気がするのだけど、それはきっと僕が服にそれほど興味が無い人だからだろう。


 それにしても一緒に歩くポロロッカさんには違和感がある。何回見ても大きくなった体は別人のように見える。街ですれ違ったとしても気付かないかもしれない。


 だけどあまりジロジロ見すぎると嫌な思いをするだろうから、僕は出来るだけ見ないように気を付けながら歩いている。ポロロッカさんは人の目には結構敏感な人だ。


 露店が並ぶ所までやってきた。


 というかさすがにまだ時間が早かったようで、お店の人たちはいまからやっと商品を並べ始めている感じだ。


 どこかで時間を潰してから来ましょうか?そう言おうとしたけれど、ポロロッカさんが一つのお店の前で立ち止まり、腕組みを始めた。


 待つつもりだ。


 そこには大きなカバンから服を取り出して並べているオジサンがいる。髪の毛がくせ毛すぎて羊みたいになっている顔の小さいオジサンだ。


 お店の準備をしながらも僕たちのことが気になるようでチラチラとこちらを見ている。多分じっと待っているポロロッカさんの視線がプレッシャーなのだと思う。


 オジサンが汗をかき始めたところに、もうひとりのオジサンがやって来た。「遅れちゃって悪かった」とか言いながら一緒に服を並べ始めたのは、短髪で全身緑色の服を着たオジサンだ。見た目からして二人は同い年くらいなのかなと思う。その人もポロロッカさんに気が付いて急に緊張し始めたようだ。


 ポロロッカさんが並べられたばかりの一枚のTシャツを手に取って広げた。


 それは、真っ赤な唇から真っ赤な舌が飛び出している絵が大きく描かれている、かなり個性的なデザインのTシャツだった。


 僕が知る限りポロロッカさんが好きな服というのはシンプルなデザインなものが多い。それなのにどうしてこの服に注目したのかすごく気になった。


「気に入ったんですか?」


 そう聞いてみたら「前に見たことがある」という答えが返ってきた。


 ポロロッカさんが服を買う時には僕はいつも一緒にいると思うのだけど、こんなものを僕は今までに見たことが無い。いったいどこで見たのだろう。


「あれーお兄さんそれ買っちゃうの?残念だな、俺も欲しかったのになぁ………」


 振り返ってみたら金色の髪をした男の子がそこにいた。身なりが少し汚れているけど背が高めで格好いい顔をしている。たぶん僕と同じくらいの歳だと思う。


「知ってる?それって異世界の服なんだよ」


 異世界の服!?


 驚いた。どおりでかなり個性的なデザインだと思った。こんなのをTシャツにしようと言う人の考えが信じられないくらいだ。お店の人にに値段を聞いてみたら2,000ゴールドだという答えが返ってきた。


 高いな、と思った。それだったら普通に新品の服が買えると思う。いくら異世界の物は値段が高いとは言っても買う人はそうはいないだろうなと思う。


「安いな」とポロロッカさんは言った。僕とは全然違う価値観だなと思う。けど服が好きなポロロッカさんがいうのなら、安いのかもしれない。僕は欲しいとは思わないけど。


「格好いいよねー」


 金髪の子が言った。


「俺はこういう派手なデザインの服、しかもそれが異世界の服だって言うんだからものすごく好きなんだけど、他の人は嫌いみたいだね。異世界の本とかだったらものすごく高い値段が付くって言うのにさ。でもそのおかげで異世界品にしては値段が安いんだよ」


 よく見たらその子が着ている白いTシャツも凄かった。


 天使の白い羽の付いた人が描かれているのだけど、その人の体の内臓がなぜか透けているという、僕にはとても理解できないデザインだ。


「そのTシャツもいいな」ポロロッカさんが褒めたらその子はすごくうれしそうな顔をしながらジャンプし始めた。


「お兄さん分かってるね、僕もすごい良いなと思って店の近くに来るたびに毎回見てたらさ、お母さんが買ってくれたんだよ。あの時はもうすっごくうれしかったなー。汚さないように気を付けてるんだー」


 話を聞いてみるとその子は「カート」という名前で、お母さんとふたりでこの近所に住んでいるみたいだ。


「お兄さんその服買うの?けど少しサイズが小さいんじゃないの?」


 カートが言うようにポロロッカさんには少し小さいように見えた。たぶん昨日までの体格だったら丁度良かったと思う。


「ここから少し言ったお店にさ、同じデザインでサイズが大きいやつがあったから、そっちのやつにした方が良いんじゃないの?」


 なんでもカートは異世界の服が好きすぎて、ここら辺にある古着のお店を片っ端からチェックしているのだそうだ。お金さえあれば異世界の服は全部僕が買うのになーと、悔しそうに言った。


 ほかにも色々なデザインの異世界の服がいっぱいあるのか?とポロロッカさんが聞いたら沢山あるという。


「お駄賃を払うから、私の代わりに異世界の服を買い集めてくれないか?」ポロロッカさんはそう聞いた。


 カートはまず飛び上がった。


「いいの!?それんなのでお駄賃暮れるの!?」


 ポロロッカさんはもちろん服の代金も私が全部払うから、カートは何も準備する必要はないと言った。


「やるやる、絶対にやるよ!大好きな服を買うだけでお小遣いをくれるって言うならそんなに楽しい事は無いんだもん」


 カートは目をキラキラさせながら跳び上がっている。相変わらずポロロッカさんはお金を使うのが上手だ。こうやって自部が出来ない事や大変なことはお金をうまく使うんだ。


 ポロロッカさんは服を買うための資金だ、といって少年に金貨を手渡した。金貨は10万ゴールドの価値があるからこれなら相当買い込むことができるはずだ。


 それと異世界の服をひとつ買うごとに2,000ゴールドのお駄賃をあげると約束すると、少年は「任せて!」というと、ものすごい勢いで走り去っていった。


 2,000ゴールドは結構大きな金額だ。職人さんが一日働いてもらえるお給料がたしか1万ゴールドだったと思う。ということはTシャツを5枚見つければ、それと同じ金額が手に入ることになる。


「あのー、すいません」


 声の方を見ると、服屋のオジサン二人がキラキラした目をしながら、自分達にもさっきの子供と同じ条件で働かせてもらえないかと聞いてきた。


 どうやら服屋さんの売り上げがあまり良くなくて生活に困っているので、服を1枚買うごとに2,000ゴールドも貰えるのなら生活が相当楽になると言っている。


 少しの間考えた後でポロロッカさんはその話に頷いた。オジサンたち二人はハイタッチして喜び、急いでお店の片づけを始めた。どうやらすぐに買い集めるつもりらしい。


 ポロロッカさんにざっとした服の好みを聞くと、今度はオジサンたちも走り始めた。早くしないとカートに全部買われてしまうと思っているのだろう。


 その背中を見ながらポロロッカさんは満足そうな笑みを浮かべて頷いた。


 わからない。


 あの3人の気合の入りようを見るにかなりたくさん買ってきそうだ。いくら異世界の服が気に入ったとは言っても、体は1つしかないというのに、そんなにたくさん集めてどうしようというのだろう。


 僕にはわからなかった。




最後まで読んでいただきありがとうございました。


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