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47話 ~変化~


【ポロロッカ】前世でインチキ宗教の教祖だった。神様を楽しませればその罪が償えるということで転生した。妄想癖が酷く、何かあればすぐに黙り込む。体を帯びる強力な魔力と鋭い目つきのせいで無意識のうちに周囲を威嚇している。頭のネジが飛んでいるので喧嘩を売られれば必要以上に買ってしまう。


好きなもの:女性、食事、睡眠、金。嫌いなもの:面倒な事、辛い事。怖いもの:神。


特殊魔法「ネゴシエーション」:言葉や文字に力を持たせる魔法。


 


 カーテンを開けたらそこは快晴だった。僕は起き上がって枕元に置いていた水を飲む。喉を通ってお腹の中にぬるい水が入っていく感覚が心地よい。


 そしていつも通りの流れで寝巻きから着替える。今日はどの服を着ようかとクローゼットを開ける。


「沢山あるなぁ………」


 ここにはポロロッカさんに買ってもらった僕の服が並んでいる。僕は小さな貧しい村で生まれたので、服といえば一着か二着くらいしか持っていなかったので、この光景にはまだ慣れない。


 ポロロッカさんは服を買うのが好きなので、暇さえあれば服屋さんを覗いている。大体一着くらいは何か買っているし、僕にも買ってくれる。


 しかも新品の服も買う。僕の中で服を買うと言ったら中古の服の事だ。当たり前だけど新品の服は高いので僕は古着でも全然いいと思っているけど、買ってもらえたらやっぱりうれしい。


 新しい服を着ると、この服を着るのは自分が初めてなのだと思うとなんだか清々しい気持ちになる。


 いっぱいある中から僕はお気に入りのタンクトップと半ズボンの組み合わせを着ることにした。


 タンクトップはグレーの色をしていて「72」という数字が大きく書かれている。半ズボンのほうは青で花の模様が入っている。これは動きやすくて肌触りも良くて、とても良いんだ。


「お前はファッションセンスが壊滅的だ」というポロロッカさんの声が聞こえてくる気がする。


 ここがちょっと困ったところなんだけど、僕が良いと思った服はポロロッカさんにしてみれば全部ダサくて、組み合わせも悪いのだという。


 ダサいってなんだろうっていつも思う。僕はそんな風な気持ちで服を見たことが無いんだ。だけどポロロッカさんは毎回言ってくる。


 それじゃあ代わりに選んでくれませんか、と頼んでみても自分が着たい服を着ろと言われてしまう。


 そう言われても僕は服を見て着たいとか着たくないとかで考えたことが無い。清潔で季節に合っていて、派手すぎず、丈夫な服がいい服だと思っている。


 なので選んでいいと言われると、そういうので服を選んでいる。デザインなんか一番最後に考えるもので、結局どれでも同じようなものだと思っている。


 なので服を買う時にはいつも困るんだけど、こんなことで悩めるのは嬉しいことだとも思う。だって食べ物が無いとか、水が無いとか家に穴が開いたとか、僕が子供の頃に聞こえてくる悩みはそんなのばかりだったから。


 着替え終わると壁をノックする音が聞こえてきた。これはポロロッカさんが僕を呼ぶときの音だ。


 さて今日のポロロッカさんの体調はどうだろう。


 魔力欠乏症で倒れたポロロッカさんのことを、お医者さんは7日くらいは安静にしていないと言っていた。ポロロッカさんの元気が無いと僕も暗い気持ちになってしまう。一日でも早く良くなって欲しいと思う。


 ノックして部屋に入った途端に驚いた。


 そこには鏡の前に立つポロロッカさん。ベッドから起き上がれるようになっていることにも少し驚いたけど、もっと驚くことがあった。


「どうしたんですかその髪の毛!」


 僕は思わず叫んでいた。


 振り向いたポロロッカさんの黒い髪の毛が、肩くらいの長さになっていた。前髪の昨日までは眉毛の上くらいの長さだったのに、ほっぺたに当たるくらいまで伸びている。


「目が覚めたらこうなってた」何が起きたのか自分でも分からないと言った。自分の顔をくすぐる髪の毛の感触でさっき目が覚めたばかりなのだという。


 どうしてこんなことに、ため息をついたポロロッカさんから布が破けるような音がした。


「体も大きくなってますよ!」


 初めて気が付いたように自分の体を眺めているけど、明らかに大きくなっている。だって着ているTシャツの裾からおへそが見えている。服が好きなポロロッカさんが、こんなにサイズが合っていないものを買うはずがない。


 髪の毛にばかり目が行って気が付かなかったのだろう。たった一晩でこんなことが起きるのだろうか。


 魔法?


 ポロロッカさんが呟いた。そうだ、こんなことが起きるのはきっと魔法の力だ。


「昨日寝ている時に魔法を使いましたか?」と聞いてみれば、そんな事はしていないという。魔力欠乏症で苦しんでいるのだから、ここでさらに魔法を使おうなんてことは思わないと。


 それじゃあなぜだろう。魔法は使わなかったのに明らかに普通じゃないことが起きている。


 どうしてだろうと考えていると、魔法は使わなかったけど「早く治れ」と思いながら寝ていた、と言った。


 そこで僕は思い出した、ポロロッカさんの魔法が何であるのかを。


 特殊魔法「ネゴシエーション」は言葉や文字に力を与える魔法。


 もしかしたら「早く治れ」という言葉にも力が宿ったのではないだろうか。その結果、異常なほどの回復力で体が回復した。魔法を使う事を意識しなくてもただ念じただけでだ。


 一昨日、お医者さんは7日は安静にしていなさい、と言っていた。それなのに今のポロロッカさんはすっかり健康そうに見える。よく考えればこれもおかしいことなんだ。魔法は使っていないと言っていたけど、使っているとしか思えない。


 そしてこの体。髪の毛が伸びているという事だけで見ても体がとんでもない速度で成長したことが分かる。


 魔法が効きすぎた?


 本人さえも分かっていないのだから答えは出ない。だけどポロロッカさんの魔法には異常な力があることだけは間違いないと思う。


 たった一晩で体格を作り替えるほどの魔法の力?


 僕は全身に鳥肌が立っていた。


 ポロロッカさんは僕が想像していたよりもずっと力のある魔法使いだ。


 良くなったんだから、まあいいかと言ってサイズの大きい服を探し始めたポロロッカさんの後ろ姿。


 僕は少し怖さを感じていた。





最後まで読んでいただきありがとうございました。


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