43話 ~金千百万払え~
【ポロロッカ】前世でインチキ宗教の教祖だった。神様を楽しませればその罪が償えるということで転生した。妄想癖が酷く、何かあればすぐに黙り込む。体を帯びる強力な魔力と鋭い目つきのせいで無意識のうちに周囲を威嚇している。頭のネジが飛んでいるので喧嘩を売られれば必要以上に買ってしまう。
好きなもの:女性、食事、睡眠、金。嫌いなもの:面倒な事、辛い事。怖いもの:神。
特殊魔法「ネゴシエーション」:言葉や文字に力を持たせる魔法。
冒険者ギルドから1,100万ゴールドを請求された僕は悩んだ。
手紙に書いてあったからこうなることは分かっていたけれど、それでも1,100万ゴールドはかなりの大金だ、理由もなく払えるようなものじゃない。
「理由を教えてください」
そういうとウサギ耳の受付のお姉さんはにっこり笑った。
「ギルド所属の冒険者に対する暴行です。診断によりますとクワバラは全治三か月の重傷です。その原因がそちらのポロロッカさんにあることは間違いがありません」
それは間違いなくそうだろう。
「怪我が治るまでの間、Sランク冒険者であるクワバラは活動が出来なくなってしまいました。ですからその間の賠償金として1,000万ゴールドを請求させていただきます。それでもこちらとしてはかなり少ない額だと思っています。Sランク冒険者であればそれくらいは簡単に稼ぐことが出来ますので」
むむむ………言われていることはすごく正論だと思う。ギルドから手紙が来たことはポロロッカさんにも言ってあるけれど、体調が悪すぎて興味がないのか「お前に任せる」といって目をつぶってしまった。
正直な所1,000万ゴールドくらいの金額ならポロロッカさんなら余裕で払うことが出来るけど、それでも納得できないこともある。
「お言葉ですけど………」
「何かご不満が?」
ウサギ耳お姉さんのカチコチの笑顔がちょっと怖い。笑っているように見えて笑っていない。良いから黙って金を払えみたいな感じに見える。
だけど僕だって簡単に引き下がるわけにはいかない。まかされた。そして僕は引き受けた。だったらできることはやらないといけない。
「僕もその場にいたので見ていましたけど、そもそもの原因はクワバラさんがポロロッカさんのことを背後から突き飛ばしたことが原因ですよね?壁に激突して鼻血が出ているのを見ましたよ」
「むっ」
笑顔の端っこがピクっと動いた。
「それはこちらでも分かっています。分かっているからこそ1,000万ゴールドに値段を下げているのです。本来ならば5,000万ゴールドくらいは請求したいところです。Sランク冒険者が活動できないというのはそれくらいにギルドにとっても影響が大きいのです」
たしかにクワバラさんがポロロッカさんのせいで仕事が出来なくなったのなら、その間の保証をしなくてはいけないというのは分かる。
だけどどうしてそれを冒険者ギルドが言ってくるのだろう。普通であれば被害者であるクワバラさんが言ってくるはずだ。それともクワバラさんがギルドに頼んだのだろうか?
けど昨日あの時、クワバラさんはもっと殴ってこい、そう言っていた。そんな人が怪我をしたからと言って金を払えなんて言ってくるだろうか?
それは僕の中では格好悪いことだ。これは人によって感じ方が違うだろうけど、あういう豪快そうな人は格好悪いことをするのが嫌いだと思う。お金よりも自分の思いを優先する人のように見えた。
それと気になることはまだある。それは昨日の事件が起きる前の事だ。思い出してみるとあれがすごく引っ掛かるので、それを指摘してみようと思う。
「だけどクワバラさんは謹慎中だったんですよね?」
「………」
「昨日お姉さんは確かに言っていましたよ。クワバラさんは謹慎中なので冒険者としての活動は出来ないって。最初はそれでお姉さんとクワバラさんが揉めていたじゃないですか。その様子見て、これは長くなりそうだと思ったポロロッカさんが帰ろうとしたところで背中を押さえれて事件が起きたーーー」
ウサギ耳のお姉さんは黙ったまま下を向いている。そして小さくて低い声で何かを言っているようだけど聞き取ることができない。
「つまり今回の怪我があっても無くてもクワバラさんは冒険者としての活動は出来なかったわけですから、その間にお金を稼ぐことは出来ませんでした。それなのにポロロッカさんがその間のお金を払うというのはおかしいと思います」
「るせ………」
「え?」
「うるせぇんだよテメェーーー!!」
テーブルを思いっきり叩いてウサギ耳お姉さんが叫ぶ。
「ごちゃごちゃ理屈語ってねぇでとっとと払うもん払いやがれ!それが嫌ならいっそギルド出禁にしてやろうか、え?うちらは世界を股に掛ける巨大組織だ勝てると思ってんのかこの野郎!」
怖い!
見た目はウサギ耳を付けてて可愛いのに、めちゃくちゃ口が悪いよ。そんなの脅しじゃないか。だけど困る。さすがに冒険者ギルドを出禁になるわけにはいかない。
ウサギ耳のお姉さんが言う通り冒険者ギルドというのは誰でも知っている巨大組織。何かあった時にここを使うことが出来ないのは生きていくうえでかなりのマイナスだ。
僕が間違ったことを言ったとは思わないけど、ここは謝ってお金を払うしかなさそうだ。
そう思ったその時ーーー。
「ちょっと待ったーーー!!」
背後にある扉を蹴破ってやって来たのは、スキンヘッドで髭で大男のSランク冒険者クワバラだった。
両手の松葉杖を高速で付きながら僕とウサギ耳お姉さんの間に入ってきた。
「おい聞いたぞモモコ。なんか昨日のことで俺が休んでる間の金を請求しているらしいじゃねえか、え、どうなってんだ?」
「ど、どうなってるも何も当然の事じゃないですか」
しどろもどろになりながらウサギ耳お姉さんが答える。
「当然?だったらなんで俺がその話を知らねぇんだ?当人の俺を差し置いて勝手に話を進めるなんておかしいだろ」
本人が知らない?つまりこのお金の請求は冒険者ギルドが勝手にやったことだったのか。
「あー、えーと、なんだか連絡の行き違いみたいですね、知らなかったとは知らなかった」
「何訳の分かんねえ言葉使ってんだよ、いいかお前、ギルドに金なんか払わなくていいぞ。こいつらは俺を出しにしてお前たちから金をふんだくって自分たちのポケットに入れるつもりだったんだからな」
クワバラは松葉づえをそのままの状態で首だけこちを向いてそう言った。さすがはSランク冒険者だ、目が合うだけでかなりの圧力を感じる。
「そんなことありません、私達は本当にあなたが休んでる間の賠償金をーーー」
「全額だな?全額俺に寄越すんだな?」
「そ、それは………」
「ほら見ろ、結局ギルドは俺を利用して自分たちが金儲けすることしか考えてねぇんだよ」
スキンヘッドの大男と受付のお姉さんの永遠に続きそうな言い争い。それは昨日見た光景と全く同じだった。ただなんだか分からないけどクワバラが僕を助けてくれている感じになっている。
これからどうなってしまうんだろう。
予想もしない展開が目の前で繰り広げられて、僕はただ黙ってその様子を眺めていた。
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