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41話


【ポロロッカ】前世でインチキ宗教の教祖だった。神様を楽しませればその罪が償えるということで転生した。妄想癖が酷く、何かあればすぐに黙り込む。体を帯びる強力な魔力と鋭い目つきのせいで無意識のうちに周囲を威嚇している。頭のネジが飛んでいるので喧嘩を売られれば必要以上に買ってしまう。


好きなもの:女性、食事、睡眠、金。嫌いなもの:面倒な事、辛い事。怖いもの:神。


特殊魔法「ネゴシエーション」:言葉や文字に力を持たせる魔法。


 


 気が付いたら知っている天井があった。これは私がこの王都に来てからずっと泊まり続けている宿だ。清潔で安くて治安もいいので気に入っている。


 物凄く体調が悪い。


 これはファイザーの2回目を打った翌朝を思い出す。あの時は部屋の床を吐瀉物まみれにしてしまい最悪だった。苦しさは同じくらいだが今回は特に下腹が痛い。自然と体を丸めていくうちに鼻が猛烈に詰まっていることに気が付いた。


 苦しい。


 吐き気と怠さもあるというのに口呼吸しかできないという状態。地獄だ、これは間違いなく地獄だ。


「あれ、気が付きましたか?」


 白くぼやけた視界の中に椅子に座っているスイリンの姿が見える。ひとりでは無かったことに安心する。


 ああそうだ、思い出した。


 私は冒険者ギルドに行って、壁に突き飛ばされて鼻を強打した。魔武器「雷王」を初めて使って、あのスキンヘッド髭を殴り続けていたら、体の自由が利かなくなって床にぶっ倒れたのだった。


「顔色がすごく悪いですよ」


 良い訳が無い。


 呼吸をするたびに胃の中では液体がじゃぼんじゃぼんと鳴っているし、腸の中ではごろごろごろと音が鳴っていて、そのどちらもが上下の口から噴出したがっているのが分かる。


 魔力欠乏症だ。


 魔法使いだけが持つ魔臓という臓器を酷使しすぎると行動不能状態になり、死ぬこともあるという。


 知っていた。知っていたはずなのにまさか自分がそうなるとは思わなかった。そして、まさかこれほど辛いものだとは思いもしなかった。


 魔武器。


 悪魔の魂が宿るという魔武器を使う際には十分に気を付けないといけないという事も知っていた。知っていたのに頭に血が上り、何の準備もなく感情のまま魔力を注ぎ込んでしまった。


 計画は完璧だった。


 冒険者を護衛として雇って、街の近場で魔物を相手に徐々に魔武器を慣らしていくつもりだった。それなのにあのクワバラとかいう野郎のせいで全てが破綻した。


「お医者さんに診てもらったところ、魔力欠乏症は寝て体を休めるのが一番の対処法だそうです」


 知らない間にいつの間にか医者に診てもらっていたようだ。スイリンが呼んでくれたのだろうか、すごく良い判断だ。


「あと、体調が回復するまでは絶対に魔法を使用しないでくださいと言っていました」


 使うはずがない。魔力を使いすぎてこの状態になっているのだから怖くて使えるはずがない。


「何か欲しいものはありますか?」


 欲しいものか………食べ物は絶対に無理だ、そんなことをしたら大惨事になることは間違いない。体中が汗でベタついているのが気になるが、それも今はどうしようもない。


 水。


 ずっと口呼吸をしているせいで口の中がカピカピで喉もどろどろだ。一刻も早く冷たい水で全てを綺麗さっぱり流したい。


「水なら枕元に………あっ!そうだ、魔道具。マリーさんから頂いた魔道具がありますよ。あれは魔力を込めると冷たい水を出すことが出来ると言っていましたよね、あの魔道具で出した水にしますか?」


 そうだった。私が魔力を流したら赤ワインが出てきてしまった魔道具だが、本来は冷たい水を出すための魔道具だった。私はかすれた声で頼み、手榴弾に似た形の魔道具から水がこぼれ落ちる所を見る。


 何も無い所から水が生まれるというのは不思議な光景だ。コップにゆっくりと流れ落ちていく水には朝の光がキラキラしていて、まるで光を注いでいるようにも見える。


「はいどうぞ」


 枕元まで持ってきてくれたそれに口を付けると、確かに冷えている、そしてちゃんと水だ。匂いも味も何の違和感も感じることなく喉の渇きが癒えていく。


 飲み終えてひとつ息を吐いたところで、腕に大きな青痣が出来ていることに気が付いた。こんな巨大な痣なんか昨日は無かったはずだ、倒れた時にどこかにぶつけたのだろうか。


「あ、それですね。多分クワバラさんが掴んでいたときの痕だと思います」


 スイリンの説明によれば、冒険者ギルドで私がぶっ倒れた時に手を差し伸べてくれたクワバラだが、なぜか突然体に不調をきたし、そのまま私と共に倒れ、一緒に病院に担ぎ込まれたのだという。


 倒れた後のクワバラは白目をむいて泡を吹きながら声を掛けても応答がないほどの状況で、なぜか私の体を強く抱きしめていて、病院に到着してから引き剥がすのに苦労したという事だ。


 魔力欠乏症の私に対して医者は、休ませる以外は何も対処する術がないという事で宿に戻ってくることが出来たが、クワバラに関してはそのまま入院することになったのだという。


 腕の青痣はたぶんその時のものだろうとスイリンは言った。言われてみれば指の形をしているように見える。


 何してんだあいつ………。





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