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40話 ~ぶん殴り~


【ポロロッカ】前世でインチキ宗教の教祖だった。神様を楽しませればその罪が償えるということで転生した。妄想癖が酷く、何かあればすぐに黙り込む。体を帯びる強力な魔力と鋭い目つきのせいで無意識のうちに周囲を威嚇している。頭のネジが飛んでいるので喧嘩を売られれば必要以上に買ってしまう。


好きなもの:女性、食事、睡眠、金。嫌いなもの:面倒な事、辛い事。怖いもの:神。


特殊魔法「ネゴシエーション」:言葉や文字に力を持たせる魔法。


 


 背後から不意打ちで吹っ飛ばされて壁に激突し、鼻血を流した私はグローブ型の魔武器「雷王」を手に嵌める。私はすっかり頭に血がのぼっていた。


 相手はSランク冒険者らしい、無謀であることは分かっている。しかし私の悪い癖でやられたらやり返さないと気が済まないのだ。


 とにかく腹の下にある魔臓から魔力を送り込む。相手は強敵。中途半端な量じゃ返り討ちだ。一発で仕留めるつもりで魔力を注ぎ込め。


 深い洞窟の中に入った時のような寒さを感じる。それと引き換えに両手に漲る拳には雷のような圧倒的はパワーを感じる。


 壁を蹴って突進する。


 向かう先はもちろんSランク冒険者クワバラ。一瞬にして距離はつまり、目の前にスキンヘッド髭大男がいた。


「ん?」


 ウサギ耳受付嬢と何やら口論していた男が振り返り少し驚いたような表情。私は雷王を嵌めた右腕で大きく振りかぶった。


 狙いは巨大な川石のような右肩。体を思いきり捻り、渾身の力を込めた右フックを打ち当てた。


「ぐをおおーーーーー!」


 獣のような声をあげながら木の葉のように回転し、丸テーブルが並ぶ左方向へと吹っ飛んでいく大男。


 そこで飲んだり食べたりしていた人の叫び声が聞こえ、椅子やテーブルがボーリングのピンのように吹っ飛ばされていく。玉はもちろんスキンヘッド禿げだ。


 痛い。


 右の手首に強烈な痛みが走っている。あの髭大男のデカい肩は、トラックのタイヤを蹴飛ばした時の感触に似ていた。表面は少し柔らかく、中に弾力はあるのに中までは絶対に到達しない重厚感。


 殴った腕の方に反動が来て、拳と腕との境目である手首の関節に、衝撃が跳ね返ってきた。地面にぽつぽつと赤黒い血が滴っていて、靴の先端も濡れていくのが見える。


「だ、大丈夫ですかポロロッカさん、鼻血出てますよ」


 スイリンの表情を見て急に不安になる。もしかして壁にぶち当たった衝撃で鼻が折れて曲がっているんじゃないか。


「折れているかどうかは分かりませんけど、見た感じ曲がっては無いです」


 安心した。


「ポロロッカさん、これもし良かったら」


 スイリンはそう言ってハンカチを差し出してくれる。これは前に買い物に行った時に私が買ってあげたやつだ。やはりスイリンはずいぶんとしっかりしている。私も一緒に同じものを買ったのだがどこかに失くしてしまった。


「おうおうおう、なかなかいいパンチしてるじゃねぇかよ」


 Sランク冒険者桑原が笑いながら立ち上がった。結構な勢いで吹っ飛んだのにもかかわらずまったくダメージを追っている様子がない。


「ダメですよクワバラさん!これ以上お客さんに手を出したら本当に冒険者の資格を剥奪されます」


 ウサギ耳受付嬢モモコが叫ぶ。


「大丈夫だ安心しろモモコ。俺から手を出したりはしねぇよ、オイ、もう一発殴って来いよ。好きなだけ殴って来いよ、その代わりにさっき俺が吹っ飛ばしたことはチャラにしてくれよ」


 そう言って自分の顎を指でさす。


「ここだここ。肩なんて遠慮してねぇで、ここを思いっきり殴って来いよ。おいどうしたさっさと来いよ、それとももう怯えちまって手が出せねえのか?」


 馬鹿にしたような顔をしながら鼻息を吹き出した。


「こいよ、こい、とっとと殴りに来いよ」


 これは私の悪い癖なのだが、挑発されるとカッとなってしまうところがある。だから私は魔力を込めた足を思いきり踏み出して一気に距離を詰めて大きく右腕を振って相手の顎を殴りつけた。


「おお、いいじゃねえかいいじゃねえか、結構いいパンチ持ってるじゃねえか」


 クワバラはその場に立ち尽くしていた。顔こそ左方向に跳ね飛ばされるように捻じれたが、体は一歩もその場から動かずに笑いながらこっちへ向き直った。


 右の手首が爆発したかのような痛み。


「次はこっちだ、反対の手でも殴って来いよ」


 そう言って再び顎を指し示す。


 信じられないほどの体の強さ。これは間違いなく身体強化の力だろう。魔力を体前代に充満させて耐久力、力を向上させるという魔力の基礎の基礎の技。


 しかしクワバラの魔力は桁違いで殴ったこっちの手が壊されそうになるほどの強度に体がなっている。


 コイツの体はトラックか?


「どうした、もっと魔力を込めるんだよ。体で殴るんじゃねぇよ魔力をぶっ放すんだよ。ほらほら、こいよ、やってみろよ」


 魔力。


 そうだ、私は今筋力を使って殴ろうとしていた。そうじゃない、この世界には魔力があり私には魔臓があるのだ。


 ヘソの下にあるという臓器を意識し、魔力を意識し、体の中を高速で流れることを意識し、思いきり殴る。


「へごぉ!」


 クワバラが2,3歩よろけた。


「やるじゃねぇか、さっきよりずいぶんと良くなってるぜ。もっとだ、もっと殴ってこい!」


 言われるがままに私はクワバラを殴り続けた。


 自分でも信じられないほどの拳の速度と振動から感じられる威力。後から振り返ってみれば私は完全にハイになっていたのかもしれない。


 何も考えず、獣のように男の顔面をひたすら殴打する。


 血が噴き出した。


 それでも男は笑っている。


 私の視界は暗くなっていった。


 それでも殴る。


 殴り続ける。


「おお?お前大丈夫か!?」


 クワバラのムカつく声を顔がうっすらと残りながらも、私の目の前は真っ暗になって、全身の力が抜け、そのまま前のめりに崩れ落ちていく。


「ポロロッカさん!」


 魔力欠乏症だ。


 気が付いた時には時すでに遅く、指一本触れられることなく私は意識を失っていく。


「おい!大丈夫か」


 床に顔面を打ち付けそうな時、ぶっとい腕が体の前に差し出される。助かった、これでさっき打ち付けた鼻をもう一度打ち付けなくて済む。そう思ってのだが「なんだ!?」という声と共に、私はそのまま床にたたきつけられた。


 何が起こったのか分からないまま、薄っすらとした視界に中に一緒に床に倒れている大男の姿が映った。体を支えるのに失敗した?そしてすぐに私の意識は完全に途絶えた。





最後まで読んでいただきありがとうございました。


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