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35話 ~イケイケのマリー~


【ポロロッカ】前世でインチキ宗教の教祖だった。神様を楽しませればその罪が償えるということで転生した。妄想癖が酷く、何かあればすぐに黙り込む。体を帯びる強力な魔力と鋭い目つきのせいで無意識のうちに周囲を威嚇している。頭のネジが飛んでいるので喧嘩を売られれば必要以上に買ってしまう。


好きなもの:女性、食事、睡眠、金。嫌いなもの:面倒な事、辛い事。怖いもの:神。


特殊魔法「ネゴシエーション」:言葉や文字に力を持たせる魔法。


 


 魔武器と魔道具を取り扱う「ジャニスの家」という店にやって来た前世詐欺師のポロロッカと元奴隷のスイリン。


 店主であるマリーから美味しいアップルタルトとお茶をいただき、少しの談笑をした後で隣の部屋へと案内された。


 底は一面ガラスケースが置かれた神秘的な部屋だった。踏み入れた途端に様々な音を振動を発しているのは、彼女が若い頃に集めたお気に入りの品たち。


「すごい音ですね」


 耳を塞ぎたそうにしているスイリン。


「魔武器や魔道具には悪魔の魂が宿っている」


「え?」


「未練を残して死んでいった悪魔たちは再び自らの体を手に入れるために、物に魂を憑依させ再び復活の時を待つ。人間の持つ魔力を取り込むことにより傷ついた魂を癒し、肉体を得る」


 マリーは淡々と語る。


「だから魔武器や魔道具というものはただ魔力を流し込むだけで、様々な力を発揮することが出来る。それは悪魔たちがもともと持っている特性。人間は悪魔の特性を求め、悪魔は人間の魔力を求める。それが魔武器や魔道具の本質なのだ」


「悪魔の魂ですか………」


「学者たちはそう言っているね。真偽のほどは分からないけどね」


「なんだか怖いですね」


「そうだよ、こいつらはとても怖い存在なんだ」


 さすがに元探索者でいまでも数十個を所持しているだけあって魔武器や魔道具に関してかなり詳しいようだ。


「魔力は欲しいが人間の言いなりになるのは御免とばかりに、隙あらば人間を傀儡にしようとする」


 真偽のほどは分からないといいつつその声は真剣。恐らくマリーは学者の言葉を信じているのだろうと思った。


「悪魔は対価を払わずに人間に魔力だけを出させ、出し切ったところで殺し、その魂ごと食おうとする。それが悪魔だ。分を弁えず強力な道具を求めて身を滅ぼしていった人間は数限りなくいるんだよ」


 何だか格好いい物、という認識しかなかったが聞いてみればずいぶんと危険らしい。そんなことカトレアは一言も言っていなかった。


 魔道具と言えば競馬場に行ったときに付けられた魔力を抑制するための指輪を思い出す。専用の魔道具を使わなければ外れないという話だったがあっさりとはずれて、そのおかげで大金を稼ぐことが出来た。


 危険、か………。


 それじゃあまずはスイリンに試してもらう事にしよう。


「僕ですか!?」


 驚いて跳び上がったスイリンが面白い。さすがにそれは冗談だ、不安そうな弟分の目の前で、自ら先頭に立つことこそ兄貴分の務めなのだ。


「冗談ですか、よかったです」


 ほっと胸をなでおろすスイリン。


「なんだい、思っていたよりも怯えてないね。せっかく反応を楽しもうと思ったのに拍子抜けだよ」


 からっとした笑顔でマリーが言う。


「何か希望はあるかい?」


 試すような表情には何か含みがあるような気がした。


「基本的には魔道具よりも魔武器の方が人に危害を与える可能性が高いね。強力な力を発揮する魔武器であればなおさらだよ。並の人間ならほんの少しの魔力を込めただけで頭痛や吐き気、眩暈なんかがしたりして、ひどい時にはそれが死ぬまで続くこともあるね。それが嫌で二度と魔武器には触らない魔法使いもいるくらいだね」


 それはさすがに嫌だ。


 前世の時から私は痛みに弱く、頭痛や風邪に備えて常に薬を常備しておくほどだった。


 ここは安全第一で行こう。さっきの話では魔武器よりも魔道具の方が安全だという事だったから、最初は魔道具にしてもらおうか。


「思ったよりも慎重なんだね。一番強力な魔武器をくれと言いだすかと思っていたよ」


「僕もそう思っていました」


 マリーもスイリンも私の事を馬鹿だと思っているらしい。子供の頃の私は結構な馬鹿だったが、今の私には前の世界での人生経験があるから、そこまでイケイケの性格はしていない。


「魔道具と言うならあれがいいかもしれないね。何かあった時に一番役に立つといっても過言じゃないからね」


 そう言いながらマリーは少し離れたところまで歩いて行った。そしてガラスケースの中から、大きなドクロの模様が描いてある手榴弾に似た形の物を取り出して持って来た。


「これは水を作り出すための魔道具だよ。冒険者なら全員が持っているものだけど、これは普通よりたくさんの魔力を消費する分、冷たい水を出してくれるっていう優れ物なのさ」


 おお、すばらしい。という事はこれさえあれば砂漠で道に迷っても大丈夫ということだ。


 自己主張強めのドクロのデザインはかなりあれだが、水を生み出せるというのは良い。サイズも手の平に収まるくらいだから持ち運びもしやすい。ただ問題はたくさんの魔力を消費するという言葉だろう。


 魔法使いの弱点。それは魔力を使いすぎると体に力が入らなくなって、役立たずと化す。そして最悪の場合には死ぬこともあるという。それだけが心配だ。


「なんだい、魔道具を目の前にしてもまだ迷っているのかい?案外意気地がないね。私の若い頃はそんなこと気にもしなかったんだけどね」


 そう言って胸を張るマリー。今気が付いたのだけど頭のサイドを刈り上げて髪を金髪に染め上げているこの人は、若い頃は相当イケイケだったに違いない。


 というか言わせてもらうならば私は意気地がないわけじゃない。慎重なのだ。


「意気地がない奴はみんなそう言うよ」


 マリーは笑うがそんなものは無視だ。


 まあとにかく一度試してみることにしよう。私はドクロ手榴弾を手に取った。今のところ特に変わった感じはしない。頭痛は無いし吐き気もない。


 ヘソの下にある魔臓から魔力を流し込んでみる。すると、ドクロ手榴弾から赤い液体がドバドバと流れ出してきた。





最後まで読んでいただきありがとうございました。


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