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29話 ~明るい未来~

 


 空の半分くらいを雲が覆う日の午前中。朝ご飯を食べた僕は手の中に小さな地図を持って街を歩いている。


 目的地はカトレアさんの住んでいるお家。カトレアさんと言うのは競馬の配当金を持って帰るときに、護衛として冒険者ギルドから来てくれた女性。


 一緒に強盗を退治して仲良くなった僕たちは、これからも仲良くやっていきましょうということで、お互いの連絡先を交換していたのだ。


 今日の僕の用件は、今度都合が合う日に一緒に魔物狩りに行きませんかという話と、僕達が魔武器を買いに行くのに付き合ってほしいという相談だ。


 これは友達として誘っているわけでは無くて仕事の話。もしカトレアさんが引き受けてくれれば、両方とも冒険者ギルドに依頼を出すつもりでいる。


 僕とポロロッカさんは魔物に対しても人に対しても実戦経験というのが少ない。道場で稽古はしているけれど、それだけでは足りないとポロロッカさんは言う。実戦の回数をこなさなければ、いざという時に実力を発揮することができないらしい。


 そこで冒険者としてBランクに認定されているカトレアさんに手助けしてもらいながら実戦経験を積もうという考えだ。


 その為には武器が欲しい。できれば魔武器。


 なので魔武器探しをカトレアさんに頼みたいと思っている。これをはカトレアさんが魔武器の使い手だからというのが理由だ。その腰には独特な形をした剣が下げられているので、僕も気になって仕方がなかった。


 言葉にするのは難しいのだけど、見えない湯けむりが立ち上っているような気がする。物なのに生きているような気配がするし、怖さも感じる。


 本物を持っているカトレアさんなら、いいアドバイスをくれるはずだと期待している。


 すごく楽しみだ。


 この世界の男子なら「魔武器」という格好良い言葉に引かれない人はいないだろう。「武器」というだけで心がときめくのに、さらにそこに「魔」が付いているのだ。


 物語の中の英雄は神様や精霊から「魔武器」を授けられて、たった一人で大勢の敵を倒し、海を割り、山を切り落とし、雷を消す。物語の中には絶対に必要なものなのだ。


 だからポロロッカさんが僕にも魔武器を買ってくれると約束してくれた時は飛び上がって喜んでしまった。


 自分も物語の英雄みたいになれると思ったら、もう楽しみで楽しみで夜になってもなかなか寝付けなかった。


 一度はあきらめた夢が叶うんだ。


 小さい頃から自分だけの魔武器を手に冒険をするのは夢だった。木の枝に名前を付けて必殺技を叫んで走り回っていた。大人になった僕は英雄になると思っていた。


 だけど年齢が上がっていくにつれて、それは普通の人にとっては夢のような話なんだと分かっていった。


 魔道具は家よりも高い値段が付いていると知った。しかも偽物が本物の数よりも多くて、本物を手に入れるのはすごく難しいという事も知った。


 持っているのは貴族様やお金持ち、それに特別に才能のある冒険者の人たちで、普通の人は見ることさえできないらしい。


 それでも僕には土魔法を使うことが出来た。すごく才能があると言われた。だからひょっとしたら僕も凄い冒険者になれるかもしれないなんて思っていた。


 体を壊した。


 僕はいつのまにか魔武器が欲しいなんて本気で願う事は無くなっていった。というよりも考えないようにしていたんだと思う。体調が悪い日には立ち上がることさえできないような僕には、明るい未来を想像することは辛いことになっていた。


 それがいまは病気も治って魔法もまた使えるようになった。そして本当に魔武器が手に入るというのだから嬉しくないわけがない。


 魔武器は魔法使いの中でも力のある魔法使いしか持つことが出来ないらしい。魔武器は生きていて自分を使う人を選ぶ。気に入らない人には悪さをしたりもするらしい。


 だけどポロロッカさんは僕ならぜったに使いこなせると言ってくれた。絶対にがんばる。道場での稽古も魔法の練習も毎日やっている。頑張り過ぎないようにするのが大変なくらいだ。


 今の僕は明るい未来を想像することが楽しい。



 一度立ち止まって地図を確認する。右のほうに高級そうな化粧品屋さんがあるから、ちゃんと正しい道を来れているはずだ。そしてもうしばらく歩けばカトレアさんのお家につくはず。


 どうやらカトレアさんのお家はお金持ちらしい。周りに立っているのは立派なお家ばかりで、歩いている人も綺麗な服を着た人ばかり。


 僕は今日、ポロロッカさんと一緒に良い服屋さんで買った服を着てきているから引け目を感じる事は無いけれど、そうじゃやなかったらきっと恥ずかしい思いをしていただろう。


 地図を見ながら歩いていると、道路に沿って立派な塀が立っている所までやって来た。地図には塀の事なんか書いていないけど、もうそろそろつく頃のはずだ。


 もしかしてこの塀の中にカトレアさんのお家はあるのだろうか。それだとちょっと困るな、訪ねていくのに緊張してしまうからできればあまり立派じゃないお家の方が良い。


 そう思いながらさらに進んで行くと、立派な玄関があってその表札に「ササキ」とい書いてある。どうやらここがカトレアさんのお家らしい。


 来てしまった以上は尋ねるしかないのだけど、僕は緊張してしまってその場に立ち止まっていた。



 そうしたら突然、か細い猫の鳴き声が聞こえた。





最後まで読んでいただきありがとうございました。


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