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27話 ~黙れ~


【ポロロッカ】前世でインチキ宗教の教祖だった。神様を楽しませればその罪が償えるということで転生した。妄想癖が酷く、何かあればすぐに黙り込む。体を帯びる強力な魔力と鋭い目つきのせいで無意識のうちに周囲を威嚇している。頭のネジが飛んでいるので喧嘩を売られれば必要以上に買ってしまう。


好きなもの:女性、食事、睡眠、金。嫌いなもの:面倒な事、辛い事。怖いもの:神。


特殊魔法「ネゴシエーション」:言葉や文字に力を持たせる魔法。


 



 僕の名前はスイリン。少し前までは奴隷として奴隷商にいたのだけど今はポロロッカさんと一緒に行動させてもらっている。


 ポロロッカさんは僕が今までに見たどんな人よりも変わり者、と言ったら失礼だけどそれくらいに何を考えているのか読めない人だ。すごく大人に見えるときもあれば僕よりも子供に見えるときもある。


 食べることは大好きで美味しいお店があると聞けば、すぐに行ってみないと気が済まないようだけど、食べ物の好き嫌いは結構激しい。とくにニンジンは大嫌いなので、小さいやつでもすぐに僕のお皿に移動してくる。


 気前はかなり良くて服をたくさん買ってくれる。それはすごく嬉しいんだけど困ったこともある。それは僕があまり服に興味が無いという事だ。


 自分の気に入った服を選んでいいとは言われても、僕にとって服というのは着られればいいものなので、好きとかは特に無い。


 だけどポロロッカさんは服のデザインにこだわりがあるようなので、そんなことを言っては水を差すことになるので言わない。


 今日はポロロッカさんに買ってもらった服を着て、頼まれた用事を済ませるために僕一人で街を歩いている。少し不安はあるけれどそれでも青い空の下を歩くのはとても気持ちが良い。


 病気が治る前の僕は歩くことはもちろん、ベッドから立ち上がることさえも辛かったので、信じられないほどの変わりようだ。


 それもこれも全部はポロロッカさんのおかげだ。僕のために色々な漢方薬を買ってきてくれたし、あとこれは病気が治ってから教えてくれたのだけど、ポロロッカさんの魔法「ネゴシエーション」の力もあるのだという。


 どういう魔法なのかと聞いてみたら、言葉と文字に力を与える魔法という、すぐには理解できないものだった。


 ポロロッカさん自身もまだこれが何が出来る魔法なのか良く分からないと困ったように言っていた。だけど病気を治すことが出来るのはとてもすごい魔法だと思う。


 この前もすごく驚くことがあった。それは僕たちが泊まっている宿に知らない人が訪ねてきた。話の内容は「寄付をしろ」だ。


 しかも一人だけじゃなくて何人も何人も来た。話には聞いていた。どこから情報が漏れるのかは分からないけど、競馬とか宝くじで大金を当てた人の所にはそういう人が集まるのだと。けど本当にすぐに来たので驚いた。


 ポロロッカさんはうるさいのが嫌いだ。強い口調で何かを言われることも嫌いだ。


 だからそういう人が来たらすぐに騒動になることは知っている。ただ、その後起きたことは僕の想像をはるかに超えることだった。


 寄付をしてくれと大声を上げながらノックをし続けるおばさんに対して部屋の中から一言、「黙れ」と言った。


 その途端に不自然なくらいに急に静かになった。


 何が起きたのかと急いで廊下に出てみたら、おばさんは両手を使って自分の口を開こうとしていた。


 口を開くことが出来なくなったみたいだった。そして僕と目が合った途端、脱兎のように逃げていった。


 そこに残ったのはポロロッカさんの魔法のにおい。


 強い力を持った魔法使いと言うのは独特なにおいがするので、簡単に嗅ぎ分けることが出来る。奴隷商店主のウォドラーさんとかもそうだ。


 寄付おばさんの身に何が起こったのか、すぐには理解できなかった。


 ポロロッカさんの特殊魔法「ネゴシエーション」は言葉や文字に力を与える魔法。


 きっとあの「黙れ」という言葉には魔力が乗っていた。それを受けた寄付おばさんは喋れなくなった。


 魔法だったら僕も使うことが出来る。それは土魔法だ。土を固めたり穴を掘ったり。だけど僕の魔法とは全然違う魔法。あまりの違いに僕は少しだけ怖くなってしまった。


 偶然なんかじゃもちろん無い。その後も来る人来る人みんな同じ目に遭っていた。身振り手振りでこれを治してくれと言ってくる人もいたけど、ポロロッカさんにその気は全く無かった。


 きっとポロロッカさんという人は、何か大きなことを成し遂げる人だと僕は思っている。



 そんなことを考えていたら到着したのは郵便局。


 ここにやって来たのはポロロッカさんと僕の実家にお金を配達してもらうためだ。お金を送ること自体はやったことはあるけれど、その手続きをするのは初めてだ。


 緊張する。


 郵便局の中は結構な人がいて、窓口の前には人が列になっている。きっとあそこに並べばやり方を教えてくれるはずだ。大人しく順番を待つことにしよう。


 僕とポロロッカさんには田舎から出てきたという共通点がある。そしてふたりとも実家に対して複雑な感情を持っていることも同じだ。だけど嫌いというわけでは決して無い。だから送ったお金を生活の足しにしてもらえればうれしい。


 ポロロッカさんは100万ゴールド、僕は10万ゴールドを送るつもりだ。ポロロッカさんは100万ゴールドを送れば良いと言っていたけれど、僕が遠慮した。


 というのもいきなり100万ゴールドなんて大金を送ったら、王都に行った僕が奴隷から解放された後で、犯罪でもしているんじゃないかと思われそうだからだ。


 もしこれが終わったら次は孤児院にお金を寄付するための仕事をしないといけない。


 というのは競馬で大金を稼いだポロロッカさんは、このお金は良いことに使いたいと決めたからで、二人で相談した結果、孤児院に寄付をするのがいいのではないかと考えたのだ。


 しかも普通に寄付をするのでは駄目で、匿名、つまり二人の名前を出さないで寄付するつもりだ。


 ポロロッカさんがいうにはこれは不正な手段でお金を手に入れた罪滅ぼしなのだから、寄付によって感謝されたり有名になるようなことになってはいけないのだという。


 それを聞いた時僕は感動してしまった。競馬で大金を稼いだ時には悪いことをしてしまった。しかも僕も協力してしまったと心の中にずっとモヤモヤがあったのだけど、それが晴れた気持ちになって、嗚呼、この人は何て素晴らしい心を持った人なんだと感動した。


 こういうお金の使い方をするのなら、神様もきっと許してくださると思う。だから僕はこの後、買った封筒に500万ゴールドを入れて、こっそりと孤児院のポストにでも入れて来ようと思っている。


 まてよ。


 封筒にお金だけ入っていたらむこうは怖がるかもしれないな。何か一言くらいは文章を書いた方が良いかもしれない。


 けどなんて書いたらいいだろう?競馬で大金が手に入ったから、というのは書かない方が良いかな?わからない、僕はいままでそんな文章なんか考えたことが無いんだ。


 とりあえず、子供たちのために使ってくださいとか、だけ書いておけばいいかな。


 前の人がいなくなって僕の番がきた。思ったよりも速かった。ちょっと不安だ、僕はちゃんとやり遂げることが出来るのだろうか。





最後まで読んでいただきありがとうございました。


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