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26話


【ポロロッカ】前世でインチキ宗教の教祖だった。神様を楽しませればその罪が償えるということで転生した。妄想癖が酷く、何かあればすぐに黙り込む。体を帯びる強力な魔力と鋭い目つきのせいで無意識のうちに周囲を威嚇している。頭のネジが飛んでいるので喧嘩を売られれば必要以上に買ってしまう。


好きなもの:女性、食事、睡眠、金。嫌いなもの:面倒な事、辛い事。怖いもの:神。


特殊魔法「ネゴシエーション」:言葉や文字に力を持たせる魔法。


 


 夕暮れの王都の路地裏で大乱闘が起こっている。雄叫び、悲鳴、呻き声、男たちの様々な声までオレンジ色に染まっていく。


 土壁の背後から石のように固くて丸い物体を投げつけ敵をなぎ倒しているのは日本でインチキ宗教の教祖だったポロロッカ。そしてそんな彼に対して砲弾を渡しているのは元奴隷少年のスイリン。


 奴隷商にいた時にはで雑音の混じった息を吐いていた彼だが、今ではすっかり完治して、剣術道場での稽古のあとで得意の土魔法の稽古を日課としている。そしていまその成果がはっきりと出ている。


 スイリンが軽々作った目の前の土壁は敵の攻撃を全て弾き返したうえで、なおも頑として立ちはだかっている。


 冒険者ギルドから派遣されてきた護衛のカトレアは、鞘に納めたままの日本刀で敵を次々にぶん殴っていく。人数こそ劣っているものの戦いぶりは盤石の一言。その様子を近隣の住人たちは建物の内側からこっそり覗いている。


 快感だ。


 襲撃を仕掛けてきた者たちは競馬で大金を稼いだことを嗅ぎ付け、襲ってきているのだろう。だから手加減する必要は一切ない。向こうは武器も持ってきているのだから死んだとしても文句を言う権利はない。


 敵は私たちが行動するたびに次々に倒れている。自分は絶対に安全な状態で敵をなぎ倒しえていく。まるでテレビゲームのようだが、この実感は現実で無いと味わえない。


 人の声と血の臭いが圧倒の快感を増幅してくれる。


 カトレアはBランク冒険者の名に恥じぬ戦いをしているし、私とスイリンは遠距離で敵を撃ち落としている。我ながらあまりにも命中率が高すぎて、敵が全く近寄ってこれていない状況だ。


 しかしこちらの誰もが全力を出していない。敵の大半は魔力を持たない一般人だろう。もうほとんどの敵が勝つことを諦めて逃げ出している。しかし私は逃がすつもりは全く無い。


 暴力によって人の金を奪おうとしている奴らだ、勝てなかったら逃げればいいというのはあまりにも都合が良すぎる。少しくらい痛い目に遭うのは義務だ。


 前世の自分だったら一人として倒すことは出来なかった屈強そうに見える男たちも、魔力という筋力を上回る力の前では無力。どう考えても負けない、そんな戦いだ。


 ただ一つ不安なのは神様が退屈していないかどうか。私がこの世界にやって来たのは前世での罪を帳消しにするためで、退屈させてはいけない。


 戦いとも言えないような戦いだが、収穫はゼロでは無くて、期待していた以上にスイリンが戦いに対して冷静だということと、彼の土魔法は戦いに非常に役立つ魔法だという事。


 そして一緒に戦うことによってカトレアとの仲が深まっているような気がすること、などがある。


 というかそろそろ私も魔法の力で戦うことを真剣に考えないといけない。魔力によって強化された腕力はかなり力強いことは間違いないが、魔法で戦っているという実感が少ない。


 しかしながら私の魔法「ネゴシエーション」は文字や言葉に力を与える魔法なので戦いどう使ったらいいのか思いつかないのだ。このくらいの敵だったら使わなくても問題は無いが、敵が強くなったら腕力だけでは厳しいだろう。


 一応毎日道場に行き、剣の稽古もして入るのだけど、自分でも分かるくらいに才能が無さそうだ。もしかしたらある程度はあるのかもしれないが、一緒に稽古をしているスイリンに比べたらこの上なく不器用なのだ。


 銀行にいく途中で、こんな大量の輩に襲われるような世界に生きているのだから、真剣に戦う術を考えないといけないだろう。


 スイリンの魔力によって強化された土の塊を投げつけ、敵を撃退しながらそんなことを考えていた。


 夕暮れのオレンジ色がさらに深まっていく中で、大した見せ場もない戦いが終わりそうな気配を見せ始めていた。


 ポロロッカの目的は持て余すほどの大金を銀行に預けること。しかし買い物などしながら街を散策し、戦いに明け暮れている彼は気が付いていない。


 銀行には営業時間というものが存在し、それは案外早く訪れるのだという事を。営業時間終了まであと3分だという事を。


 そして、戦っているポロロッカたちの姿を若き芸術家たちは食い入るように見つめ、ペンを走らせている。


 絶好の被写体だ。


 画家として生きることを決め毎日絵に向き合っている彼女たちにとって、間近で見る戦いというのはこの上ない御馳走。


 暫くののち、彼女たちはいくつもの作品を作り上げることとなった。多少の誇張が含まれたその作品を気に入るかどうかは、その人次第である。



最後まで読んでいただきありがとうございました。


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