25話
【ポロロッカ】前世でインチキ宗教の教祖だった。神様を楽しませればその罪が償えるということで転生した。妄想癖が酷く、何かあればすぐに黙り込む。体を帯びる強力な魔力と鋭い目つきのせいで無意識のうちに周囲を威嚇している。頭のネジが飛んでいるので喧嘩を売られれば必要以上に買ってしまう。
好きなもの:女性、食事、睡眠、金。嫌いなもの:面倒な事、辛い事。怖いもの:神。
特殊魔法「ネゴシエーション」:言葉や文字に力を持たせる魔法。
若い芸術家たちが集まる夕暮れの狭い路地裏。
前世でインチキ宗教の教祖。現在は魔法を使い競馬で儲けた金を銀行まで運んでいる最中のポロロッカは頭を抱えている。
勢い任せに彼女たちの描いた絵画を全部買うとは言ったものの、彼が今住んでいるのは宿の一室なので、釘を打つことが出来ない。なので大量の絵画を飾ることが出来なくて困っているのだ。
最初は広い家に引っ越すまでは画家の子たちに預かっておいてもらえば良いと思ったものの、彼女たちも置き場に困っていたらしく、できれば持って帰ってもらいたいと思っていた。
「私が」
考えている時に声をあげたのは、冒険者ギルドから派遣されてきた護衛のカトレア。あまりに話を端折り過ぎていて、言ってることの詳しい内容が全く伝わってこないというのが彼女の特徴だ。
「カトレアさんの住んでいるお家に置いてもいいんですか?」
スイリンが聞くと彼女は頷いた。
「無駄に広い」
どうやら彼女の家は無駄に広いから大量の絵画を置いても大丈夫だという事らしい。最初はちゃんと喋れよと少しだけ思っていたけれど、だんだん慣れて来て何も思わなくなってきた。しかも問題も解決したわけだからありがたい。
「指輪」
そう言って指輪のはまっている手を見せてくる。どうやらさっき買ってあげた指輪のお礼だという事らしい。ありがとうと言ったら彼女は頷いた。
なんだか不思議な気持ち。
彼女とはさっき会ったばかりだし、ほとんど会話らしい会話をしたわけでもないのだが、絆が生まれたような気がして心がぽかぽかする。
「「おいテメェ!」」
違う方向から違う声で同じ言葉が聞こえた。
「わ、」
スイリンが声をあげたのは暴力のにおいのする男たちがぞろぞろと私たちを取り囲むようにしてやって来たから。
襲撃だ。
私はすぐに画家の女性たちに家の中に入るように手で指示を出す。一瞬だけ戸惑ったものの彼女たちはすぐに言う事を聞いてくれた。他の野次馬達も同じように家の中に駆け込んだ。
空気が引き締まる。
見ればカトレアの表情がさっきとは違って引き締まっている。腰に下げた日本刀に手をやって構えている。
居合斬り。
その言葉がすぐに頭に思い浮かんだ。私のような剣術のド素人でも感じ取れるくらいのピリピリとした圧。彼女がその気になりさえすれば刀を鞘に収めた状態から一気に加速して敵を斬るだろう。
カトレアは私たちの護衛だからそれについては心配する必要は無いが、気になるのは襲撃者たちが言い争いを始めていることだ。
てっきり全員が仲間だと思っていたのだが、今ここには2グループの襲撃者がいるらしい。そして、それはお互いのグループにとって予想外の出来事の様で、ぶつかり合う波のように叫び合っている。
まるでギャングの抗争だ。その間にいる私達。なんだか訳の分からない状況になっている。
ここは落ち着くべきだ。
こうなるかもしれないことは予想していた。だからこそ護衛を雇った。どこからどのように情報が漏れたのかは分からないが、それでも事前準備は的確だった。
私はこういう緊迫した状況の時には極力喋らないようにしている。喋るよりも自分がどう行動するべきなのかを冷静に見極めることに神経を使うべきだ。
カトレアの冒険者としてのランクはB。S、Aの次だから冒険者としては3番目のランク。Cで一流の冒険者と言われると聞いたから彼女は若くして一流を超えた領域にいる。
強盗は出てこなくていい。出てきてもいい。出てきたら出てきたでこの世界の強盗と冒険者の実力をこの目で見るいい機会だから。
私は田舎で生まれ育ったので、強力な魔法使いと出会う機会が無かった。子供の頃から町で一番喧嘩が強いとは言われていたが、世界基準では、自分がどの程度戦えるのかが分からない。
これを機に見極める。
自分はこの世界において自分は強いのか弱いのか。もし弱いのだとしたら自分が強くなるために何をすべきなのか。強力な武器を手に入れるのか、あるいは強い人間を仲間にするのか。いずれにしろ武力は必要だ。
それをじっくり確かめよう。
普段一緒にいる時には口数が少なくて感情が読み取りずらく、どこかボーっとしたような印象は受けるが、それでも冒険者ギルドという巨大組織から一流以上と認められたその腕前、見せてもらおうじゃないか。
慌てるな、傍に居ろ。
そう声を掛け、スイリンの様子を伺う。
この状況でスイリンはどういう動きをするのだろう。泣いてしまうのか、慌てふためいて逃げ出してしまうのか、それとも怯えて動けなくなるのか、それも含めて観察しよう。それによってこれからのスイリンとの付き合い方も変わるだろう。
そう思っていたら突然、周囲の土が盛り上がっていった。
「相手が魔銃や矢を売ってきたらここに隠れてください。しばらくは持つと思いますよ」
立派な土壁を作り上げたスイリンは頼もしく言った。
ただの性格の良い少年。
ずっとそう思っていたが、これはスイリンを見極めるための機会でもあった。
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