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魔が差すと即ち、死を見る。 2

2025/07/12 改

『ヴァドサ・シーク隊長の苦闘の日々 ~親衛隊に任命されてから、うだつが上がらなかった日々が懐かしい時がある~』を大幅に書き直しているものです。あまりに変更箇所があるため、投稿しなおしている状態です。ついでに改行を多くして、スマホでも少し読みやすいように努力中です。

「他に何か質問はありますか?」


 ベリー医師はさっさと進んでいく。あまりに自分達の思考を超える話だったので、すぐに質問すら思い付かない。


「なければ――。」

「お待ちを。」


 さっさと切り上げようとしているベリー医師を、シークは慌てて引き止めた。


「……待ってください。まだ、理解が追いついていません。あまりに想像を超えた話だったもので。」


 ベリー医師は、はっとした様子で頭をかいた。


「いや、申し訳ありません。確かに普通の話ではありませんから、なかなか理解するのが難しいでしょう。」

「つまり、十歳の子供に首輪をつけて鎖に繋ぎ、少し言うことを聞かなければ目の前で人を殺したと?」


 シークが必死に考えてまとめた言葉にベリー医師は頷いた。


「はい。そういうことです。元々セルゲス公は穏やかなお子で、大人達を困らせるようなことはあまりなかった方です。」


 シークは状況が少し見えてきた。


「つまり、妃――叔母の気分次第で『言うことを聞かない悪い子だ』と判断されたら、目の前で人が殺されるなり、何か折檻を受けたということですか?」

「そうです。はっきり言って、大人でも発狂しておかしくない。よく、本当によく、一年半も耐えられた。」


 シークは頭を振った。信じられなかった。そこまで幼い子供にできるのだ、ということが。

 こんな話を聞けば、自分の父がシークに対して厳しく当たるというのは、大した話ではないように思った。シークとしては理解できず苦しいものだったが、これほどではない。


「まあ、甥に刺客を送り続けるような方ですから、これくらい朝飯前でしょう。」

「!?」


 シーク達は全員でベリー医師を凝視した。


(…い、今、なんて? 聞き違いではないよな?)


「甥王子が邪魔でしょうがないんでしょうな、妃殿下も。妃殿下なんて言いたくないよ、全く。」


 さらっとベリー医師は、非常に危険な発言をした。いつか、不敬罪で捕まったりしないだろうか、この先生。本気でシークは心配した。まさか、噂が本当だったとここで証明されてしまうとは。


(……! しょっぴく場合は、私達の役目じゃないか! 聞かなかったことにしよう。)


 シークが心の中で決めた所で、ベリー医師がはっとして苦笑した。


「……。あ、ああ、今のは冗談ですよ、冗談。」


 今さら、取って付けても遅いですよ、先生。シークは心の中で言った。この先生に対して口に出して言うのは危険そうな感じがしたのだ。後にその危機感は正しかったと悟ることになる。


「分かりました。」


 シークは話を進めることにした。


「陛下が療養させると仰った意味も理解しました。先生がご注意されたことに気をつけてセルゲス公と接するように致します。」


 ふむ、とベリー医師が頷いた。


「ただ、慣れないものですから、おそらく何か不手際が起こるかと。いや、きっと起こると思います。そうなった場合、セルゲス公のニピ族の護衛に先生が取りなしてくださいますか?」


 シークの頼みにベリー医師はびっくりした様子だったが、少し考えてから承諾した。


「いいでしょう。前回の親衛隊と違い、セルゲス公を敬って護衛する気がおありの様子なので。まあ、故意に失敗した場合は知りませんが。」


 ちょっと(とげ)のある物言いだ。しかも、今の言い方からすれば前回の親衛隊が“故意に”護衛しなかったように聞こえる。

 さすがに、それはないのでは? 同じ国王軍の兵士として、そして、親衛隊に任命された者として少し疑問に思う。


「あなた達も聞いているでしょう?」


 いよいよ聞きづらい話の核心に近づくらしい。


「何をでしょうか?」


 シークは慎重に聞き返した。


「セルゲス公のニピ族の護衛が、前回の親衛隊の三分の二を殺したという話を。」


 やっぱり、その話である。


「はい、聞きました。ただ、本当の話なのでしょうか? その、理由が……、セルゲス公に欲情したからという理由でしたが……。」


 ベリー医師は眉間に皺を寄せて考え込んだ。


「理由まで聞いていたんですね。セルゲス公には決して口を滑らせないでください。もし、滑らしたら私が息の根を止めますよ。」


 シークをはじめ、隊員達は目を白黒させた。カートン家の医師はニピ族と契約しているため、全員、ニピの踊りができる。そんじょそこらの兵士なんかよりも強いのだ。真顔で言われると冗談には聞こえない。


「……先生、冗談には聞こえませんね。」

「ええ、もちろん冗談ではありません。セルゲス公には前の親衛隊達は契約違反をしたから置いてきたと話してあります。まあ、先ほどのは少し過激なので、話せなくなる程度にしておきましょうか。」


 いや、それはそれで困るが……。どっちにしろ過激だ。



 物語を楽しんでいただけましたか?

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。


                               星河ほしかわ かたり

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