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魔が差すと即ち、死を見る。 8

2025/07/27 改

『ヴァドサ・シーク隊長の苦闘の日々 ~親衛隊に任命されてからうだつが上がらなかった日々が懐かしい時がある~』を大幅に書き直しているものです。

「ふむ。では、また。」


 父親はそこで話を終わり、立ち去ろうとしたのだが、少年が父の手を振り切ってきた。


「ねえ、何か剣術の技を見せて。」


 少年もヴァドサ流を知っていたらしい。シークだけでなく、少年の父親もベリー医師も苦笑した。


「すまない。」


 少年の父親はシークに謝罪した後、何かリタ語で注意しているが、少年は一向に気にした様子もなく、にこにことシークを見上げている。シークは周りを見回した。棒きれか何かあればと思ったのだ。

 すると、庭の奥の林のような場所に棒きれがいくつか転がっている。


「ベリー先生、あの棒きれは拾っても大丈夫ですか?」

「良いですよ。腐ってなければ。」


 ベリー医師は何をしようとしているのか、察して苦笑しながら答えてくれた。


「おれ、拾ってくるよ!」


 少年が勢いよく駆けだした。シークはその後を追う。腐っているものもあったが、簡単な打ち合い程度なら耐えられそうな堅さのもいくつか転がっている。二人は適当な棒きれを拾うと、ベリー医師達の元に戻る。


 少年も棒で打ち合ってくれるものと期待して、ワクワクしている様子だ。


「ねえ、いつ始めるの?」


 シークが普通に立ったままなので、少年が催促する。


「いつでも、好きな時にかかってきていいぞ。」

「……ええ? 好きな時に?」

「そうだ。」


 少年は不思議そうにしながらも、かかっていく間を計っている。やがて、勢いをつけて走りかかってきた。その際に振りかぶりながらやってくる。基本はできているようだ。


 カンッ


 と軽い音を立てて棒きれをはじき返す。シークは少年が打ち込みやすいように誘導してやる。


 カンッ、カンッ、カコンッ


 立て続けに打ち合い、少年は頬を紅潮させて楽しげだ。楽しいと思えば、懸命に練習するだろう。

 だが、途中で少年の棒きれがボキッ、と音を立てて折れてしまった。折れた破片が少年に向かったので、シークは急いで破片をはじき返した。


「大丈夫か? 破片は飛んできてないか?」


 顔を覗き込みながら確認する。


「大丈夫だよ。」


 少年は神妙に頷いた。突然のことだったので、彼も少しびっくりしたのだろう。


「ほら、終わりだ。帰るぞ。」


 父親がやってくる。


「ねえ、おれって強い?」

「そうだな。筋は良い。父上の言うことをよく聞いて、練習に励めばもっと強くなれるぞ。」

「! うん!」


 少年は嬉しそうに笑うと、今度こそ父の元に走り寄る。


「息子に付き合ってくれてありがとう。」


 少年の父親は礼を言うと、息子にも促した。


「ほら、礼を言いなさい。」

「…ありがとうございました。」

「こちらこそ、ありがとう。」


 おかげで緊張はすっかり解けた。いいのか悪いのか分からないが。シークが礼を言うと、少年は不思議そうにしながらも嬉しそうに照れ笑いした。


「それでは、また会える機会が訪れる日まで。」


 リタ族の挨拶をして、二人は帰って行った。


 物語を楽しんでいただけましたか?

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。


                               星河ほしかわ かたり

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