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魔が差すと即ち、死を見る。 6

2025/07/17 改

『ヴァドサ・シーク隊長の苦闘の日々 ~親衛隊に任命されてから、うだつが上がらなかった日々が懐かしい時がある~』を大幅に書き直しているものです。


 主人公のシークは、いよいよ護衛する王子と対面することになりましたが、その前にリタ族という部族の親子がやってきて……。

 庭を歩いている。施設から施設までの間は庭園のようになっており、その間が通路になっていた。何でも、少しでも自然な環境にすることにより、緊張状態にある医師の心身を労るためなんだとか。

 さらに、コニュータが出来る前から生えている木をできるだけ切らないようにするためにも、庭を多く造ったそうだ。

 そんな説明の合間に、セルゲス公についての説明は続く。何度目かの注意をベリー医師はした。


「いいですか、覚悟してください。セルゲス公は亡きリセーナ王妃を小さくしただけのお方です。変わっているのは性別だけ。気をつけてください。フォーリを怒らせないように。」


 シークは先ほどから、その注意を受けるたびに部下達が失態を犯さないか心配に駆られていたが、ふと、自分も失敗する可能性に気がついた。なんせ、先の親衛隊は王妃の息がかかっていたとはいえ、過ちを犯したのに間違いはないのだ。


 妹よりも幼い少年に対して、そんなことを思うはずはないだろうと思っていたのだが、もしかしたら、間違いを犯すかもしれない。

 何度も繰り返されるベリー医師の注意と、先の親衛隊の過ちを考えた時、自分も大丈夫だという確信性は以外に低いのではないかという疑いが生じた。

 簡単に言うなら、シークは意外に心配性だった。急に心配になった。


 それで、マントを留めるための予備のピンを、歩きながらこっそり取り出し左手に握っておく。万一、本当に万一、過ちを犯しそうになったら、これで目を覚ますためだ。


「ここでしばらくお待ち下さい。今、呼んできますので。」


 ベリー医師は言って、自然の木立が立っているかのような中庭にシークを残すと、さらに奥に入っていった。


 コニュータはリタの森のすぐ側にある。街の建設時、森を切り開いたが、その時の木々を何本も残しているという。シークの目の前にある木も、その時から生えているのだろうかと思うような巨木だ。

 思わず木の大きさに感心して、苔が生えている木に近寄った。根っこもかなり太く張っている。きちんと手入れされているようだ。よく見れば白蟻やなんかにやられて腐った所を切って、薬か塗料のようなものを塗ってある。これも薬草なのだろうか。


(いや、草じゃないか。薬木だな。)


 どれくらいの大きさがあるのだろうか。待っている間、圧倒されるほどの大きさの木をシークは見上げた。苔むした大きな根っこは、人ほどの高さがある。自分の額の位置に根っこがあるのだ。大きな木の根っこの間に立って、幹に触れてみた。

 一体、何年前からここに生えているのか、分からなかった。風が吹いて木の葉が揺れると「お前なんて、まだまだ青二才のひよっこだな。」と言われているような気がした。


 ぐるりと回ってみれば、巨大な洞があった。もしかしたら、中に入れるかもしれない。思わず考えてみるほどの大きな穴だ。シークが子どもだったら間違いなく中に入っただろう。 周りに誰もいないので、そっと中を覗き込んでみた。すると、他にも穴が空いている部分があるらしく、中は意外に明るかった。それでも、倒れずに立っていることに驚く。


「凄いな、お前。」


 思わず木に向かって話す。


 その時、人の気配にシークは振り返った。向こうから少年の声が聞こえてきた。


「じゃあなー、グイニス……! もう、会えないかもしれないけど、元気でな!」


 声がした直後、リタ族の戦士と少年の親子連れが向こう側の木の陰から出てきた。どうやら、リタ族の親子はセルゲス公のために森から出てきて、一緒に遊んでいたようだ。グイニスという名からして、明らかにそうだろう。


 すると、親子連れがこちらを振り返った。シークの姿を見た途端、少年が足を止める。


「!」


 そして、目をキラキラさせて走り寄ってきた。


「すっげー! おじさん、国王軍の兵士!? かっこいいー! おれ、初めて国王軍の制服を見るよ!」


 おじさんって誰だろうと一瞬思ったが、すぐに自分のことだと気がついた。あまりに目を輝かせているので、仕方なく側に近寄った。


「へぇー!」


 少年はぐるぐるとシークの周りを走り回る。やんちゃな子犬のようだ。


「おじさん、かっこいいよ!」

「こら、おじさんというのは、失礼に当たる。」


 すると、少年の父親らしいリタ族の戦士が注意した。


「ねえねえ、剣を抜いて見せてよ!」

「…残念だが、それはできない。剣は危ない武器だ。」


 シークが答えると、少年は明らかに残念そうな顔になった。


「えぇー。」


 少年の父親が何かリタ語で言ったが、少年はシークの側を離れようとせず、マントを引っ張ったりしている。


 物語を楽しんでいただけましたか?

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。


                             星河ほしかわ かたり

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