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はじまり

 『ヴァドサ・シーク隊長の苦闘の日々 ~親衛隊に任命されてからうだつが上がらなかった日々が懐かしい時がある~』の推敲改訂版です。大幅に変更しようと思う箇所が大量にあって、推敲に当てはまらないかもしれないほどの変更になっています。そのため、もう一回、掲載しなおすことにしました。


 試みに、改行を多くしてみます。でも、改行って空白の行というのは、長年原稿用紙に書いてきた身としては、別の場面に移行するというイメージがあって、ちょっとまだ違和感があります。

 でも、おそらくスマホで横書きを読む場合は、改行多めの方が読みやすいだろう……と思い、ちょっと頑張ってみます。


 もっと、面白くなることを願いつつ、少しずつ推敲改訂していきたいと思います。


                               星河ほしかわ かたり

 むかし、むかし、ルムガ大陸にあるサリカタ王国に、気が狂っていると言われている王子様がいました。王子様は、二歳の時に父君の王様を亡くし、七歳の時に母君を亡くしました。

 そして、十歳の時に王子様の叔父君が政変を起こして王様になりました。そして、王子様は王宮の奥深くに閉じ込められ、姉君のお姫様はたった十五歳で敵国との戦地に赴くことになりました。

 王子様はそれ以来、ちゃんと話すこともできなくなってしまい、気が狂っていると言われるようになりました。


 そんな王子様が、田舎の村に行くことになりました。王様の命令で、療養するためです。でも、人々は気が狂っている王子様を王宮から追い出して、田舎の館に閉じ込めるためだと噂し合っていました。

 王子様が大きくなっても、王様になることができないようにするためです。


 その王子様を護衛するために、一人の剣士が選ばれました。彼は王国の国王軍の隊長であり、有名な剣術流派の息子でした。彼は部下達を含め総勢二十人で王子様の護衛をすることになったのです。

 王族の護衛をする者を親衛隊と言いました。親衛隊は特別な軍隊です。大変名誉な役職で、軍人ならば目指すものとされるほどでした。花形であり、多くの娘達が親衛隊と聞くと目の色を変えたほどです。

 しかし、王子様の親衛隊になることは、危険が伴いました。なぜなら、王子様のことを嫌っている王妃様が、たくさんの刺客を送るからです。そのため、軍人達はこう呼んでいました。“昇進という名の左遷”と。 


 誰もやりたがらない役目を負うことになった剣士は、その役目を断ることはしませんでした。なぜなら、王子様はとても可哀想な孤児の一人だったからです――。




 辺りは煙で靄がかっていた。大きく息をするたびに、煙も一緒に吸うことになってしまうが、動かないわけにはいかない。

 キィン、敵の剣を弾きながら、体を右に捻り相手の腕を捕らえた。腕を外に捻っているので、否応なしに腕が不自然にまっすぐに伸びる。その伸びきった脇の下に剣を滑らせるようにして入れると斬った。ドサッと音を立てながら、敵が倒れて絶命していく。急所である。二度と起き上がることはない。


「……悪いが、手加減している余裕はない! 死にたくなければ、かかってくるな!」


 今し方、死んだばかりなので、そう怒鳴ると多少の効果はあった。敵が少し怯む。お互いに誰がかかっていくか、様子を見ている。 少しの間、息を整える余裕ができた。誰も動かないので、しばし沈黙が下りる。途端に、パチ、パチ、パチと静かに木が()ぜながら燃える音が聞こえてきた。


「煙に巻かれて死にたくなければ、失せろ……! 金なんかより命あっての物種だぞ!」


 さらに怒鳴れば、敵が後ずさった。


「行け! 逃げれば誰も分からないはずだ! 捕まれば死罪だぞ!」


 さらに脅すと、敵が一人後ろを向いて走り出した。それに続き一斉にその一団は走り去った。その直後に思わず咳き込む。煙で喉がイガイガした。目も煙がしみて痛む。だが、立ち止まってはいられない。自分達も早く逃げなければならない。

 自分一人を守ればいいわけではなかった。胸に一人の少年を抱きかかえている。幼い頃に酷い目に遭い、今も心に傷を抱えている少年だ。


「……もし、父上が生きていたら、こんななの?」


 少年が抱きついてきて言った言葉だ。あまりにも不憫で深く心に刻まれた。たとえ、その身分が王子だろうと何だろうと、必ず守ってやると約束した。

 だから、決して負けてはならない。絶対に生き延びなければならないのだ。個人的にも、親衛隊の隊長としても、この一人の孤児の少年を守りたかった。




 物語を楽しんでいただけましたか?

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。


                               星河ほしかわ かたり

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