魔法使いさんと少年くん。
これは、
日々退屈していた魔法使いさんと、ある少年のお話。
「やぁ、はじめまして」
「……」
「静かで綺麗な良い場所だね。私は魔法使い・レーナ。よろしくね」
「…...」
なんてことのない、普通の日。
魔法使い・レーナだと名乗るその人は、不思議な雰囲気で笑っていた。
……それも、誰も立ち入ることができないはずの、王子の宮殿で。
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私はレーナ。
そこそこの魔法使いさっ(笑)
そこそこの魔法使いっていうのは、あれだよ? ちょこちょこ姿を変えてるから、有名にならないってだけなんだよ? 本当は、本気を出せば、結構すごいんだからね?
で、現在旅をしているのだけれど、なんか絶対に入れない王子の宮殿があるって聞いてさ? ほら、試したくなっちゃって。ふふ、まぁ、王宮なんてそう入れないのが当たり前なんだけど。ちょっとここは他とは違うっぽいんだよねぇ。
まぁ、捕まってもどうにかなるだろ☆って感じだったんだけど……
「君以外誰もいないの? あーいや、……いないのですか、王子殿下っ?」
「……」
うーん、なんも喋らないなぁ。
せっかく話しかけたのに。
まぁ、私は不審者だし、仕方ないのだろうけど...…
どうしようかなぁ
普通に入れちゃったしなぁ。
つまんないし、やっぱもう違うところに行こうかなぁ...…
「……どうやって入ってきたんだ」
あっ、喋れるのね。第一声が『どうやって入ってきたんだ』……うん、別におかしくないか。
「どうやってと言われましても..….魔法を使って、『えいっ』て」
「……」
うぉう、疑ってるなー? これは。
まぁでも、適当だからなぁ、わたし。うん。自分でもそう思うくらい。
「信じていませんねぇ……そうだ!」
パチン
と、指で音を鳴らせばこの通り!
「!?」
「……はい、呪いとーけた!」
ふふ、今のなかなかイケてたんじゃない? カッコよくなかった今の!?
なんたって私はそこそこすごい魔法使いだからね、ちょっと見たり魔法使ったりしただけで、呪いのときかたとか、分かっちゃうのだ。ふふん、すごいでしょ?
「……うそだ、そんな簡単に…….第一、呪いの効果さえ知れるはずが……」
「なんか、監禁系の呪いでしたね、そんな覚えてないですけど」
「覚えてないって……今解除した呪いのことだろう」
「まぁまぁ、とりあえずここから出ましょうよ」
「……一応王子なんだが?」
「そうですか。じゃあ、私はこれで」
「え」
「もともと絶対に入れないのが気になっただけですし。簡単に入れましたし。呪いもとけたんだから、大丈夫でしょう? 上手くやってくださいね」
私はひらひらと手を振る。
「….まて、ほんとに呪いは解けたんだな?」
「解けてますが?」
「…...」
この子これからどうするんだろう?
この子はフレメリン王国第1王子フィルミルン様。
側妃様の子なので、王妃様に嫌われ、こんな場所に監禁されていたらしい。この子の母親は亡くなってしまわれたので、味方がいない状況。国王も無視。さらに運が悪いことに、王妃様達が、強力な呪いをかけることができた。そのせいでこの子は今までこんな生活を……
強力な呪いをかけられているので、騎士たちが見回ることはほとんどない。王妃にとっては暗殺者は大賛成だし。おっかない。呪いの効果が、この宮殿から離れるごとに痛みが強くなるものだから、逃げることもできなかったのだ。かわいそうに。王妃はひでぇやつだ。
「呪いがこわいのなら、痛みを感じるまで出てみてはいかがでしょう?」
「……呪いの効果、知ってるじゃないか」
まぁね。
それから王子は歩き出した。
びくびくして、ゆっくりちょっとずつ歩いていた王子だったが……
「……痛く、ない……?」
「当然です! 私が解呪したのですから」
ついでに回復魔法とかもかけておいたから、今非常に調子がいいはずだ。ちなみに私、魔法だけじゃなく、他のこともまあまあできるのだ。もちろん解呪も。剣術とかもできるよ? なんたって私はそこそこの魔法使(以下略)
……さて、これで呪いが解けたことはわかったかな。この少年は、これからどうするのだろう。行く当てあるのかな。なければ一緒に旅をすることに……? 私が助け出しちゃったし? まぁ、こっぴどく振られる可能性あるけど。
「それで、これからどうするのですか? 王子殿下」
「……にげ、ようと思う」
「なら一緒に来ます?」
「……いいのか?」
「はい、どちらでも。助けたのは私ですし」
「なら、よろしく」
「はいはいー」
「……(軽すぎないか……? この人。大丈夫だろうか……)」
嫌がられたらどうしようかと思った。さすがの私もちょっと傷つく。
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「いいかい? まずは1人で生きていけるように私が魔法を教える。なに、君はちゃんと魔法の才能があるから、なんとかなるよ。……あ、お師匠様と呼んでもいいんだよ? 憧れてたんだよねぇ」
「……レーナ様、で」
「うん、それもいいね!」
そうして私はフィンミルン様……フィン君に色々教えることになった。長く生きてきたのに、弟子がいなかったから、なんだか初めてで、楽しい。
魔法の使い方、魔物の倒し方、冒険者ギルド、薬草に剣術。
まんべんなく教えていく、つもりだった。
「いたぞ!」
「おまえがフィンミルン様を連れ去ったのだな!? フィンミルン様こちらです、もう大丈夫ですから」
「っ...…!」
姿は変えた。2人とも。バレないはずだったのに。
「こんにちは、あなたがレーナ、ね」
「王妃様...…」
「私を侮られちゃあ、困るわ。あなた達くらい、すぐ見つけられちゃうの、……呪いをどうやって解いたのかは気になるけど……」
「う……」
予想はしてた。あの呪いをあつかう王妃様だ。フィン君は...…
……というか、王妃様ってこんなにのこのこ現れるものなのかな……あと、一々言い方が嫌だなぁ。なんか、癪に触る。なんでだろ。
「.…..おう、ひさま」
「私のフィンミルン、あぁ、可哀想に。帰りましょう? 大丈夫よ、もう心配いらないから」
……よくまわる口である。
「……レーナ様をどうするおつもりですか」
「ふふっあはは! 分かってるくせに!」
そう言った途端、炎が私を襲う。気づいたらフィン君は衛兵に保護されている。.…..またフィンくんをあの地に戻すわけにはいかない。もっと酷い環境になるかもしれないし…...それに、私か助けるって、守るって決めた、私の弟子だから。
「っ..….レーナ様!」
「...…大丈夫よ」
私は迫ってくる炎を打ち消す。
その隙にフィン君を助け出して……
逃げてきた。思いっきり!! 笑
本気を出せばあんな敵、どうってことないのだ。
……うそだけど。ちょっと、いや結構やばかったが。
こうして、私はこの王子との旅が始まった。
普通なら逃亡生活になるところだが、そこはまぁ、魔法でちょちょいっとね。本気を出せば倒せる。よゆーよゆー。本気を出すと魔力の消費が激しくて困るんだけど何とかなった。
「……バレてたくせに、どうやったんだ」
「……ふふっ」
「ん?」
「まだ内緒~!」
「はぁ?」
ーーーあるところに、
とても仲の良い旅人2人組がいたとさ。
その旅人たちは、
ドラゴンを倒しただとか、魔王にあったことがあるだとか、伝説の2人組なんて言われている。…とかなんとか。
そして、ひとつの国が、その影響により滅んだとか。
まぁ、国のトップが変わっただけだし、元々不満は強かったので、みなが手伝ってくれたそうな。
「.…..次はどこへ行くんだ?」
「そうだねぇ..….」
私は、今日も旅をする。
この少年とともに。
「ん〜、じゃあ! 東の国に行こう!珍しいものが沢山あるんだって!」
「分かった。……行ったことなかったのか」
「君は? なんかないの?」
「……一緒に旅が出来ればそれでいい」
「おやおやまぁまぁ、」
「そのにんまり顔やめろ」
「ごめーんごめん」
あれだけ退屈で、なにかないかとなんとなく始めた旅だった。それが、こんなに楽しくなるなんて。
「行こうか!」
まだまだ2人の旅は続く。
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