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98話 智香の目覚め

 寮の智香の部屋。

 智香と麻衣は二人でテレビゲームをしていた。


「そういえば、ここ来る時に四年生の三人組見かけたんだけど、結衣ちゃんが凄く明るくなってたわ。大人しいのは、そのままだけど、生き生きしてるっていうか元気になったっていうか」

「私も、この前見た。理沙ちゃんと二人で遊んでたけど。あの二人が仲良くなるのって、ちょっと意外」

「優奈が動いたみたいよ。未久ちゃんのことで味占めちゃって、下級生の子に色々お節介してるっぽいわ。今日もそれでいないんじゃない?」

「優奈ちゃん、優しいね」


 智香は僅かに頬を染める。


「優しいは違うでしょ。自分よりも相手を優先してるから、まだいいけど、あの子、下心でしか考えてないわよ」

「それでも相手の為に動くのは立派だと思うよ。しかも、女の子のこと大好きなのに、嫌われること覚悟してなんて」

「まぁ、そうかもね。ある意味、博愛だから、方向性が間違ってなければ聖人と言えなくもないわね」

「そうだよ! 優奈ちゃんは凄く優しい子なんだよ」


 智香はゲームそっち退けで麻衣に主張した。


「……自棄に優奈のこと持ち上げるわね」

「あっ」


 指摘された智香は恥ずかしそうに、ゲームに意識を戻す。

 だが、モジモジしながら言葉を続ける。


「あのね……私、優奈ちゃんのこと好きになっちゃったかも」

「はぁ!? 好きって、どういうこと!?」

「気が付くと優奈ちゃんのこといつも目で追っちゃうの。いない時も、優奈ちゃんのことばかり考えるようになっちゃって」

「嘘でしょ……」


 それは恋の反応そのものであった。


 お金に釣られてキスをしていくうちに、無意識に優奈のことを意識し始め、とうとう恋心に近いものとなってしまっていた。

 以前、大浴場で麻衣に注意されてからは、智香はしないよう我慢していたが、その時には既に手遅れの状態だった。


「変じゃないよね? 優奈ちゃんもそういう趣味だし、漫画やアニメでも女の子同士で恋愛してるでしょ」

「私はちょっと分からないわ」

「そうだよね……」


 智香は顔を俯かせる。

 いくら同意を求められても、これまで常に否定的な態度を取っていた麻衣としては肯定できなかった。


「智香はどうしたいの?」

「自分でもよく分からない。優奈ちゃん皆のこと好きだから、多分私だけ見てくれることはないと思う。それでも……」

「ちょ、ちょーっと待って。好きになっちゃったかもって言うことは、まだ確定じゃないのよね? 勘違いって可能性もあるのよね? ね? ね?」

「うん……」


 智香に喋らせていたら、行くところまで行ってしまいそうだと思った麻衣は慌てて止めた。

 まだ恋心か否かは智香も分かっていない状態である。


「だったら先走るのは良くないわ。時間制限がある訳でもないのだから、ちゃんと分かるまで、これまで通りでいるべきよ」

「そうかな?」

「下手に拗れて気まずくなっちゃうのは嫌でしょ? 最悪の事態を避ける為にも慎重に行くべきよ」

「分かった」


 智香が納得してくれたので、麻衣は一先ず安堵する。

 麻衣自身もどうするべきか分からなかった為、一旦棚上げして現状維持させることを選んだ。




 遊び終わって、智香の部屋から出た麻衣は、歩きながら頭を抱える。


「まさか智香がそっちに行っちゃうなんて……。あれ、絶対キスしてたせいよね」


 麻衣はもっと早く止めるべきだったと後悔する。

 キスのことは以前から知っていたのに、個人の自由だからと、少し文句つけるだけで終わらせていた。

 まさか、このような事態になってしまうとは思ってもいなかったのだ。


「どうにかして戻せないかしら……でも、互いに好き合ってるなら、邪魔するのも良くない気がするし……。うぅぅ、どうすれば」


 頭を抱えていると、丁度そこへ優奈がやってくる。


「やぁやぁ、どこ行くの?」


 呑気に話しかけてきた優奈を、麻衣はジト目で見る。


「呑気ね。こっちは、それどころじゃないっていうのに」

「何、トラブル?」

「ある意味ね……。全部、あんたのせいよ」


 麻衣は優奈に恨み節をぶつける。

 智香がおかしくなった元凶は間違いなく優奈だった。


「私!? 私、何かした? っていうか、何があったの?」

「……言える訳ないじゃない。優奈にだけは絶対に言わないわ」

「何で!?」


 智香が好意を持ってることを言ってしまったら、優奈がどう動くかなんて、麻衣には容易に想像できた為、言う訳にはいかなかった。


「何でも。いいから放っておいて」


 そう言って麻衣は走り去って行った。

 一人置いて行かれた優奈は訳が分からず、首を傾げる。


――――


「……マジ?」


 隠し部屋のモニタで優奈は、先ほどの智香の部屋での、やり取りを観ていた。

 廊下での麻衣の態度から、優奈は重大な問題が起こったのではと心配して、監視映像を遡ってしまったのだ。


「智香ちゃんがねぇ。何れ、そういう方向に差し向けるつもりだったけど、こんなに早く目覚めてくれる子が居たなんて」


 漫画やテレビなどで少しずつ仕込んでいた為、同性愛に目覚める子が出てくるのは、まだ先の話だと優奈は考えていた。

 しかし、智香は金銭目的とはいえキスを常習的にしていたことから、一早く目覚める結果となったのだ。


「特に仲がいい子だから嬉しいな。まだ恋愛感情なのかはハッキリと分かってないみたいだけど、このチャンス、絶対ものにしてみせる……!」

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