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96話 下級生達の友情

 ディナーは優奈のお勧めとのことで、ホテル屋上にあるレストランへとやってきた。


 遊園地唯一の宿泊施設であるホテル。

 そこは高級リゾートホテルさながらの絢爛さで、非常に豪華な作りをしていた。

 屋上にあるレストランも同様で、野外でサラダバー有りというラフな感じでありながらも、高級感が漂うお店となっていた。


「お肉おいしー!」


 六人は注文したステーキを頬張る。

 皆が食べているのは霜降りやサーロインなどの高級肉で、普段の食事よりもワンランク上の食べ物だった。

 この食事の代金も入場料に含まれている為、全部タダである。


「ここって泊まれるのね。長期休暇の時とか、ずっと居座れそうだわ」

「一泊三百円だよ」

「う……高いわね」

「宿泊料というよりは延長料と考えた方が適切かな。泊まることで次の日も遊べるって感じで」

「そう思うと安いかも。あーもう、お金の使い道が多過ぎるわ」


 麻衣と優奈でそんなことを話していると、話を聞いていた未久が尋ねる。


「ここでの生活って、そんなにお金かかるんですか?」


 麻衣は金欠金欠とよく言っていたが、未久が生活を始めた、この数日、あまりお金を使うことはなかった為、疑問に思っていた。


「あーっと、色々買ったり遊んだりするとね。ただ生活するだけなら全然お金かからないわよ。無駄遣いせず堅実に……って、自分で言ってて自己嫌悪」

「魅力的なものが沢山あるから仕方ないよ。一気に買おうとはせず少しずつ買い揃えて行くのがコツ。それでも足りないなら自分で稼ぐこともできるから」

「それが簡単じゃないのよね。町の売り物って、クオリティ高いのしかないから、そこにライバルとして参戦するのは厳し過ぎるわ」

「まぁそうかもね。どうしても稼ぎたいなら、ここだけの話、簡単な方法もあるよ」

「止めなさい」


 小声で未久に囁く優奈を麻衣は慌てて遮る。


「絶対に言うんじゃないわよ」

「えー。困ってたら援助してあげたいじゃん」

「だから、それは……。兎に角、黙りなさい。何でもないから、気にしないでね」


 優奈を無理矢理黙らせた麻衣は笑って誤魔化す。

 未久は訳が分からず、キョトンとしていた。



 そこで付け合わせのコーンスープを空にした希海が言う。


「このコーンスープ美味しい。お代わりできないの?」

「勿論できるよ」


 優奈はテーブルの呼び鈴を鳴らして店員ロボットを呼ぶ。

 すると、すぐに店員ロボットが優奈達のテーブルへとやって来た。


「この子にコーンスープのお代わりお願い。あ、ついでに空いたお皿も下げて」

「畏まりました」


 食べ終わったサラダの皿などを店員ロボットが回収して行く。

 皆も手伝って渡していると、優奈が皿を差し出したタイミングでロボットが手を出してしまい、強くぶつかる。


「あ」


 弾かれた皿は大きく上へと飛んだ。

 空高く跳ね上がり、落ちてきたのは店員ロボットの頭にだった。

 皿が直撃し、大きな音がレストランに鳴り響く。


 頭を強打した店員ロボットはグラグラと身体を揺らす。


「だ、大丈夫ですか?」


 麻衣が声を掛けると、店員ロボットは異音を出し始める。


「ピー、ガガガ……」


 異音を出しながら、手足をくねらせるロボット。

 明らかに様子がおかしい為、皆は唖然として店員ロボットに目を向けていた。


 すると、店員ロボットは突然テーブルを掴み、ひっくり返す。


「きゃあ!」


 テーブルが吹っ飛び、上に乗っていた食べかけの食べ物やドリンクがぶちまけられた。


「これは不味いかも」


 そんなことを言っている間にロボットは優奈の腕を掴む。

 そして強い力で優奈を投げ飛ばした。


「うわああああ!」


 壁まで飛ばされ、そこにあったビュッフェの料理が乗っているテーブルが崩れる。


「優奈!?」


 麻衣と智香は慌てて、優奈の下へと駆け寄る。


「ぼ、暴走してる。未久ちゃん達、逃げて」

「え? え?」


 優奈が逃げるように言うが、未久達は突然のことに混乱して動けずにいた。

 そうしているうちに暴走した店員ロボットが迫り、未久の腕を掴んだ。

 そのまま身体を持ち上げられ、遠くへと投げ飛ばされる。


「わあああああ」


 柵を飛び越え、屋上から投げ出されるギリギリのところで、端についていたビニールの庇の上へと乗っかった。

 一命を取り留めたと皆が安堵したその時、ガコンと音がして、庇が外れる。


「!」


 未久は咄嗟にホテルの建物へと飛び付くと、それを待っていたかのようなタイミングで庇が完全に外れて下へと落下して行った。


「「未久ちゃん!」」


 未久はホテルの壁ギリギリのところで掴まっていた。


 希海と結衣は慌てて助けようと駆け寄る。

 麻衣と智香も駆け寄ろうとしたが、優奈に手を掴まれて止められた。


「二人は行かなくていいよ」

「何で!? 早く助けないと!」

「未来のロボットが、あんな簡単に壊れると思う?」


 優奈が疑問を投げかけると、焦って早く行こうとしていた二人は動きを止める。


「……言われてみれば」

「これもシナリオ通りだから大人しく見てて」


 二人は怪訝な顔をして首を傾げる。



 その間も事態は進んでいた。

 希海と結衣が未久の手を掴み、懸命に引き上げようとしている。


「むぐぐぐぐ」


 二人に引っ張られ、未久は少しずつ這い上がって来る。

 このまま行けば助かりそうだと未久が顔を上げるが、そこで見たのは二人の背後へと迫って来る暴走した店員ロボットだった。


「来てる! 二人とも逃げて!」


 狂ったようなおかしな動きをしていて、近づいて来るスピードは然程速くなかったが、既にかなり近くまで迫って来ていた。

 振り向いて確認した希海と結衣は急いで引き上げようとする。


「もういいよっ。私のことはいいから早く逃げてっ」

「そんなこと言っちゃダメ! すぐに助けるから」


 結衣も頷き、二人とも未久を見捨てようとはしなかった。


「間に合わないからっ。このままだと二人まで……」

「頑張れー。もう少し」


 懸命に助けようとする二人。

 しかし暴走した店員ロボットは、もう真後ろにまで来ていた。

 三人に向け、ゆっくりと手が伸ばされる。


 未久がもう駄目だと思ったその時、店員ロボットの手が未久を掴み、一気に引き上げた。


「さ。ここは危ないので柵の内側へ」

「へ?」


 店員ロボットの態度がいきなり正常に戻った為、三人はキョトンとする。


「てってれー! ドッキリ大成功!」


 優奈が何処からかパネルを取り出し、三人へと見せる。

 パネルには「ドッキリ大成功」とデカデカと書かれていた。


 そのドッキリ宣言に、三人のみならず麻衣と智香も唖然とする。


「ちょっと、悪質じゃないの?」

「まぁまぁ、これには事情があるんだよ。未久ちゃんは家族に裏切られたトラウマのせいで、他人が信用できなくなってたんだ。友達とは仲良くしつつも、いつか裏切られるかもって一線を引いて付き合ってた。だから、そうじゃないよと教える為に、このドッキリをやったんだ。所謂、ショック療法ってやつ」


 その話で事態を飲み込めた未久は優奈を睨みつける。

 顔は怒りの形相になっており、相当怒っているようだった。


 透かさず店員ロボットが謝罪をする。


「脅かしてしまい、申し訳ございません。私としても必要なことだと思い、優奈さんの作戦に賛同して協力しました」

「あっ、えっと……」


 唐突に意外なところから謝罪をされた未久は、ロボットに怒っていいのか分からず困惑する。


 続けて店員ロボットは希海と結衣に向けて訊く。


「希海さん結衣さん、自分の身に危険が迫っていたのに、逃げずに助けようとしたのはどうしてですか?」

「だって友達だもん」


 希海が答えると、結衣も同意見だと深く頷く。


「あたしには家族いなかったから、よく分かんないけど、未久ちゃんのことは裏切らないよ」


 さも当然のように言う希海。

 その瞳は何処までも澄んでいた。


「……うん。信じる」


 希海の純粋さに当てられ、未久はもう一度信じてみようという気になった。


 もう大丈夫だと判断した店員ロボットは、これで退散することにした。


「では私はこれで。一応補足ですが、今回は必要があった為、危害を加えるような行動を取りましたが、通常時このようなことが起こることは、まず有り得ません。万が一、落ちてしまった場合も、即座に助けられるよう備えておりましたので、町の安全性に関しては心配なさらぬよう」


 それだけ伝えて店員ロボットは去って行った。


 優奈は仲良くしている下級生三人を見て、麻衣と智香に言う。


「水を差すのも悪いから、私達は別々で楽しもうか」


 食事の途中であったが、優奈達は下級生組とは別れ、別々で遊園地を楽しんだ。





 後日。

 優奈達は休日の商店街で下級生三人組と遭遇した。


「おや? 三人でお買い物?」


 優奈に声を掛けられた未久は眉を顰める。


「あ、はい」


 返事をするが、その様子は如何にも警戒している感じだった。


「休日も遊べるようになって良かったね」

「うん!」


 優奈が他の下級生二人に向けて言うと、希海が元気よく返事をした。

 すると、未久が二人の手を引く。


「私達、用事がありますので。行こ」


 若干強引な感じで引っ張り、未久は二人を連れて去って行った。


 取り残された優奈達。


「もしかして嫌われちゃった?」

「そりゃあね。荒治療とはいえ、やったことって性質が悪いドッキリでしょ。嫌われるのも当然だわ」


 優奈はショックを受ける。


 こうなる可能性を優奈も考えていなかった訳ではない。

 ロボットに全て任せて実行するという手もあったが、なまじ首を突っ込んでしまった為、自分がやるしかないと思って決行してしまったのだ。


「未久ちゃんの為ならと思ってやったけど、嫌われるのは悲しい……」


 学年が違う為、多少嫌われても影響は薄いと優奈は考えていたが、実際嫌われるとなると、やはりショックであった。


「自業自得よ。でも私は評価してあげる。やったおかげで未久ちゃんは救われたのだから」

「……うん。未久ちゃんが救われたのなら十分だよね」

「優奈にしては上出来だわ。私が慰めてあげるから元気出しなさい」

「ありがと。じゃあ、ベッド行こうか」

「そっちの意味じゃないわっ。せっかく慰めてあげようとしたのに、一気に慰める気失せたわ」

「そんなー。慰めてよぉ」

「もう手遅れよ。ま、機会があったらフォローしといてあげるから、それで我慢しなさい」


 優奈への好感度という代償を払うことになったものの、未久の問題は無事解決した。

 だが、それによって、また新たな問題が出てくることを優奈は懸念する。


(未久の問題は何とかなったけど、そのせいで負担をかけてしまっている子がいる。そっちもどうにかしないと)

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