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95話 VRファンタジーワールド

 優奈に連れられ、皆がやってきたのは西洋のお城のような建物。

 大きさは体育館程度とお城としては小さめだったが、アトラクション施設の中では大きい方であった。

 入口には「ファンタジーワールド」という看板がつけられている。


 優奈達は入り口から中へと入った。

 すると、皆の前に広がったのは青空と素朴な村の風景だった。

 室内であるはずだったが、空や先行きは果てしなく広がっており、空は外とは真逆の真昼間だった。


「何、ここ」

「前にアトラクションのテスターで魔法少女やったでしょ? あれの実装版」


 それを聞いた麻衣と智香は目を輝かせる。


「またあれで遊べるの? やった」


 魔法少女をやった時は非常に楽しんでいた為、また出来るとなると二人とも大喜びだった。


「凄く面白いわよー」


 何も知らずキョトンとしている下級生三人に、麻衣は満面の笑みで言った。



 村人ロボットの案内に従い、六人は武器屋の露店へと移動する。

 そこには杖の他、剣や槍、弓、銃など沢山の武器が並べられていた。


「ここで使いたい武器を選んで」


 麻衣達は露店を囲んで武器を見る。


「杖だけじゃないのね。サバゲーみたいな感じなのかしら」

「ノンノン。サバゲーはリアル志向だけど、こっちはファンタジーだから、テレビゲームみたいに派手なアクションができるよ。例えば……」


 優奈は剣を手に取り、その場で下向きに構える。

 溜める動作をしてから、上に斬り上げると、衝撃波が地面を走るようなエフェクトが発生した。


「すごーい! 何それー!」


 派手な演出を見て、下級生達も興奮していた。


「武器はどれも派手な技が使えるよ。色々試して、自分に一番合う武器を選んでごらん」


 皆は一斉に武器を選び始める。


 それぞれ試したりして選んでいると、麻衣が置いてあった本を手に取る。


「この本は何?」

「それも武器だよ。杖の回復魔法特化版みたいな感じの。後でつけることになるけど、ダメージ食らったら電撃で痺れるから、回復魔法で解除するんだ」

「あぁ、例のね……」

「ダメージは絶対食らうと思うから、誰か一人は持っていた方がいい」


 すると、皆は顔を見合わせる。


「どうしよっか。私は出来たら他の使いたいけど……」


 皆、他の子の様子を窺うばかりで名乗り出る子はいない。

 回復はあまり人気がないようだった。


 誰もやらないのならと優奈が名乗り出ようとしたところで、結衣が手を上げる。


「私、やる」

「いいの? 他に使いたいのあるなら、私がやってもいいけど」


 優奈が訊くと、結衣は首を横に振る。


「分かった。じゃあ、回復は結衣ちゃんに決定で」


 回復役が決まり、他の子達は再び武器選びを始める。


「っていうか優奈、詳しくない? 本当に初めてなの?」

「本屋にガイドブックが売ってたから、エスコートする為に予習して来た」

「……よくやるわ」


 予習までして備えていた優奈に、麻衣は呆れていた。



「よし! これにしよ」


 次々と使う武器を決めて行き、皆が選び終える。

 そしてダメージ制御の首輪を装着し、準備を完了させた。


「じゃあ、出発しよう」


 準備万端の状態となった六人は張り切って村の外へと出た。




 村を出てすぐ、最初に出てきたのはスライムのモンスターであった。


「おぉー、モンスターだ」


 画面越しではないリアルなモンスターに、下級生達は目を輝かせる。


「前見たのより小さいわね」

「そりゃあ最初の雑魚モンスターだから。デカいのは、まだ先でしょ」


 出てきたスライムは体育館で出てきたものとは違い、腰丈程度の大きさしかなかった。


「ねーねー、攻撃していいの?」

「ああ、いいよ。思いっきりやっちゃって」


 優奈から許可を貰った希海は大剣を振り被る。


「よーし。いくよー。やー!」


 大剣が振り下ろされると、衝撃波と共に斬撃がスライムを襲う。

 だが、スライムの弾力性のある身体が衝撃を吸収し、倒すまでには至らなかった。


「次は私が!」


 続けて未久が剣を振り、斬撃を飛ばす。

 スライムは二発の真空刃を受け、身体が半分崩壊するが、まだ息があるようだった。


「とどめは結衣ちゃんだね。攻撃魔法もあるから、やってごらん」


 優奈に教えられながら結衣はスライムに向け、光の攻撃魔法を放つ。

 光の玉が勢いよくぶつかり、スライムの身体が消し飛んだ。


「倒したー。いえーい」


 下級生達はハイタッチをして喜ぶ。

 だが、それを見ていた麻衣と智香は何とも言えない表情だった。


「どしたの?」

「いや、こう言っちゃなんだけど、杖と比べると技がショボくない?」


 下級生三人がやった攻撃は体育館で遊んだ杖の攻撃よりも大分地味だったので、二人は杖以外の武器を選んだことを後悔していた。


「あぁ、ここはRPG形式になってるから。沢山倒してレベルが上がると派手なのが使えるようになるよ」

「レベルもあるの!? いいじゃない。やる気出てきたわ」


 前回との落差でテンションが下がっていた二人だが、成長して行くタイプのものだと知って、一転やる気を出し始めた。




 それからも六人で先を進み、敵を倒して行く。

 みんな大ハマりして夢中で倒していた為、どんどんレベルが上がり、エフェクトも派手になって行った。


「炎来るわよ!」

「任せて!」


 優奈が前に出て盾を構えると、透明のバリアが皆を囲った。

 直後、ドラゴンの口から放出された炎が優奈達を覆うが、そのバリアに守られ、誰一人としてダメージは受けなかった。


「行くわ」


 炎が消えた瞬間、麻衣が飛び出して、槍を突く。

 すると槍の幻影が現れ、五連続の突きがドラゴンに浴びせられた。

 間髪入れず後方の智香が弓を打ち上げ、矢の雨を降らせる。


 連携による連続攻撃を受けてドラゴンが怯む。


「チャンスよ!」


 麻衣の号令で、皆一斉に攻撃を仕掛ける。

 派手なエフェクトが浴びせられ、ドラゴンはボコボコにされていた。

 為す術もなく、タコ殴りにされたドラゴンは力尽きるようにして倒れると、その身体を消滅させた。


「ふぅ。大分進んだわね。何処まであるの?」

「何処まででも。マップは進む度に更新されるし、装備やレベルも無限に上がるから飽きるまで遊べるよ」

「うそぉ。そもそも建物自体そんな広くないでしょ」

「ふっふっふ。気付いてないようだね。いっぱい進んだけど、実は建物内をぐるぐる回ってただけってことに」

「えっ……言われてみたら、入る前に見た建物の大きさよりも、遥かに沢山歩いてるわ。すご、全然気付かなかった」

「景色の映像や時には地面を動かすことで、狭い空間でも広い世界を演出することができる。これが未来の技術さ!」

「凄いけど、何で優奈が自慢げなのよ」

「てへへ」


 つい自慢してしまった優奈は笑って誤魔化す。

 普段から、ふざけてばかりだったので麻衣はいつもみたいに、ふざけただけだと思い、気にすることはなかった。


「終わりがないなら、どうしましょうか。そろそろ、ちょっと疲れてきたけど」

「あたし、お腹空いたー」


 希海が空腹を訴えた為、優奈は腕時計を見る。

 すると、時刻は十九時を過ぎていた。


「もう、こんな時間か。進捗は保存されるから、切り上げて食べに行こ」

「さんせーい」


 優奈達は冒険を切り上げ、ファンタジーワールドから出た。

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