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94話 ミッドナイト遊園地

 後日。

 優奈はいつもの二人と下級生三人の計六人で地下鉄駅へとやってきていた。


「うっわ。切符料金、五百円とか滅茶苦茶高くない?」

「それ、入場料代わりだから」


 切符売り場で麻衣が見ていたのはミッドナイト遊園地行きの切符。


 今日は優奈の呼びかけで、新規オープンした遊園地に行こうと、駅へと来ていたのだ。

 切符料金・五百円というと町では高額に思えるが、入場料がそこに含まれており、アトラクションや飲食は無料で、他ではお金がかからない為、全体で見ると非常にリーズナブルであった。


「今日は私が誘ったんだから奢るよ」

「そういう訳にはいかないわよ。ちゃんと自分が遊ぶ分くらいは自分で出すわ」

「金欠なのに難儀だね」


 出会った頃から変わらず、こういうところは真面目だった。


 優奈は続けて下級生三人に言う。


「君達のは全部奢るから、遠慮はしないで」

「「ありがとうございまーす」」


 下級生達は素直に優奈の申し出を受けて奢られる。

 だが、未久だけは文句あり気な顔で優奈をじっと見ていた。


 今日は休日である。

 平日の放課後しか遊ばない主義だった未久は当然のことながら嫌がったが、優奈によって半ば無理矢理連れて来させられていた。



 優奈達は切符売り場で六人分の切符を買い、改札を進んで遊園地行きの電車へと乗り込む。

 すぐに発車してトンネルに入ると、十数秒もしないうちにトンネルを抜けて窓から景色が広がった。


 暗闇の中ライトアップされ、煌びやかに輝く立体の遊園地。

 まだ真昼間であるにも拘らず夜空が広がっており、華やかなイルミネーションが輝く、四六時中ナイトパレード状態であった。


「わぁ、凄い」

「これだけでもアトラクションに乗ってるみたいね」


 遊園地シェルターに入っても、すぐに駅には着かず、外周を一回りしていた。

 これは遊園地の全体像を電車の窓から眺望させる演出で、麻衣の言う通り、アトラクション的な意味を持たせていた。


 一周してワクワク感を高めたところで駅に到着する。

 駅を出た優奈達の耳に聴こえてきたのは、とても賑やかなウキウキする音楽だった。

 空には風船が飛んでいたり、鮮やかなライト演出で彩られたアトラクションが見えたりして、皆のテンションが一気に上がる。


「何処行く? 何処行く?」

「ジェットコースター! あ、コーヒーカップも!」

「いいよ。行きたいところ全部行こ」


 興奮気味の六人は早速アトラクションを巡り始めた。


――――


「わー!」「きゃー!」


 六人を乗せた車両が急降下して、下に溜まった水に突っ込む。

 大きな水飛沫を上げ、浮き上がって来た車両が発着場へと戻って来た。


 アトラクションを終えて車両から出てきた六人だが、その表情は皆笑顔だった。


「これも面白かったー!」


 希海は興奮冷めやらずに走り回る。


「思った以上に遊びまくれるわね。待ち時間ないのがいいわ」


 六人は並ぶことなく、ノンストップで各アトラクションを楽しんでいた。

 遊園地はオープン間もないのに人が少なく、貸し切りに近い状態だった。


 オープンしたことは町の皆に通達されており、テレビでもCMを流していたのだが、入場料が割と高めであることや、下級生がまだ電車の乗り方を授業で習っていないこともあって敷居が高く、行く人が少なかった。



 お喋りしながら歩いていると、優奈が不意に足を止める。


「次はあそこ行こうか」


 皆は優奈が指さす先にあるアトラクションを見る。


「え」


 それは、お化け屋敷であった。


「い、嫌よ。私は入らないわ」

「私も進んでは入りたくないかな」


 麻衣と智香が難色を示す。

 夏休みに強烈な肝試しを体験した二人は、そのことがトラウマになっていた。


「肝試しよりは怖くないから大丈夫」

「何で分かるのよ。優奈も初めてでしょ?」

「前の肝試しの時、先生反省してたじゃん。だから流石に調整してるでしょ。特に下級生も入れるところなんだから」

「確かに」


 低学年の子に肝試し並みのことをしてしまったら、泣くどころでは済まない事態になってしまう。

 ロボットがそんなことをするはずがなかったので、麻衣も納得せざるを得なかった。


「あたしは行きたーい」


 グズグズしていると希海が急かすように意思表示して来る。


「ほら、希海ちゃんもそう言ってることだし。みんなで行こうよ」

「仕方ないわね……」


 それでも二人は乗り気ではなかったが、行きたそうにしている希海達の様子を受け、皆で行くことにした。




 お化け屋敷の入り口に来たところで、優奈が言う。


「せっかくだから四年生五年生のペアで行こうよ。親睦を深める為に」

「んー、まぁいいんじゃないかしら。賛成」


 お化け屋敷の怖さがどのくらいのレベルか不明瞭であったが、緩くなっているなら親睦を深めるのに丁度いいとして麻衣は賛成に回った。


 すると、未久がいの一番に名乗りを上げる。


「優奈さんと一緒がいいです」

「私? 勿論、いいよ」


 指名された優奈は嬉しくてニヤける。


「じゃあ、あたしは智香姉ちゃん」


 続けて指名したのは希海だった。


「希海ちゃんは智香ちゃんをご指名かぁ」

「うん。智香姉ちゃん優しいし、しっかりしてるから」

「「えっ」」


 優奈と麻衣の声が重なる。

 希海がどうしたのかと首を傾げると、麻衣が慌てて言う。


「な、何でもないわ。確かに智香となら安心して回れるわね。良いチョイスよ」


 麻衣は褒めて誤魔化す。

 しっかりしているとは正反対の本性を持っているとは言えなかった。


「じゃあ私は結衣ちゃんとね。いい?」


 結衣は異論ないと頷く。



 ペアが決まり、それぞれ時間を空けて、お化け屋敷に入ることとなった。

 まず優奈と未久ペアが中へと入る。


 中は洋風の薄暗い廊下だった。

 入口の扉が閉まり、先へと進み始めたところで未久が口を開く。


「単刀直入に言いますが、余計なおせっかいは止めてください」

「やっぱり迷惑だった?」

「無理矢理連れてきておいて、迷惑ではない訳ないじゃないですか」


 未久は怒っていた。


「そっか……。ごめんね」


 面と向かって迷惑と言われたら、優奈はもう謝るしかなかった。

 優奈がションボリした姿を見せると、未久は気まずそうな顔をする。


「奢ってくれたことには感謝してますが、出来たらこういうことは止めて欲しいです」

「このままずっと上辺だけの付き合いでいいの?」

「はい。その方が気楽ですから」

「本当に? 寂しくない?」

「寂しくなんてありません。私は一人でも生きていけますから」


 その時、壁に飾ってあった額が落ちる。


「ひっ」


 驚いて小さな悲鳴を上げる未久だが、優奈と目が合い、顔を赤くさせる。


「う、嘘じゃないです! 私は一人でも……」


 必死に主張しようとしていると、未久が視線を向けている優奈の奥の壁に、ぼやけた人影が薄っすらと映る。


「だいじょう……」


 ドサッと後ろで何かが落ちる音がする。

 未久が恐る恐る後ろを向くと、塊が起き上がり、人型の形を成した。


「ひ……」


 直後、人型の何かが二人の方へと駆け出した。


「ひぎゃー!!!」


 迫って来る人型に悲鳴を上げた未久は、半泣きで逃げ出すように走って行った。


――――


 お化け屋敷を回し終えた優奈・未久ペアが外で待っていると、中から麻衣と結衣ペアが出てくる。


「普通に怖かったわ」


 麻衣と結衣の表情は微妙に強張っていた。


「また失禁した?」

「してないわよ! けど、これ低学年の子は絶対無理よ」


 緩くしていたが、それでも恐怖を感じるレベルだった。

 とはいえ、お化け屋敷の目的は怖がらせることである。

 恐怖を抱きつつも完走は出来ていたので、難易度調整としては完璧であった。



 遅れて、智香と希海ペアが出口から出てくる。


「最後の二人も戻って来たね。どうだった?」


 感想を訊いた優奈に、希海が興奮気味に言う。


「智香姉ちゃん、凄かったよ。お化けが襲ってきても普通に歩いてた」

「おー、流石は智香ちゃん。耐性あるね。希海ちゃんは怖くなかった?」

「智香姉ちゃんが居たから怖くなかったよ」

「そうなんだ。偉い偉い」


 優奈が頭を撫でると、希海は嬉しそうに笑う。


「優奈達はどうだったのよ?」

「え? どうって……」


 優奈が未久に視線を向けると、未久は恥ずかしそうに視線を逸らす。


「普通に怖がったりして、楽しみながら回ったよ」

「よく楽しめるわね……。もう怖いのはいいわ。次はもっと明るいところ行きましょ」

「なら、とっておきのところがあるよ」

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