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93話 未久の人間不信

 休日。

 学校のグラウンドでは美咲と真琴、そして美咲が居た施設の子達が集まって、サッカーをしていた。


「へい! パス、パス」


 みんな楽しく遊ぶ中、特に真琴は生き生きとした表情をしていた。


 ロボットの穴埋めではなく、生徒達だけで行う団体スポーツ。

 それは真琴が移住当初から望んでいたことだった。

 低学年の子も多く、ちゃんとした試合にはなっていないけど、これまでは、それすらもできなかったので、真琴は十分満足していた。



 真琴達が遊んでいると、学校の向かいにある寮から優奈が出てきた。

 商店街に買い物に行こうとしていた優奈だが、遊んでいた真琴達を見つけて、そちらへとやってくる。

 そして、コートの端にいた美咲に声を掛けた。


「施設の皆でサッカー?」

「そうだよ。あれ? 何で、この子達が同じ施設って知ってるの?」

「あ、いや……偶に集まってるの見かけたから、そうじゃないかなって」

「そっかー」


 優奈には、まだ希海以外の子は紹介されていなかった。

 だが、下級生が来てから日数も経っており、その間に集まっていたことは何度もあったので、優奈は何とか誤魔化すことが出来た。



 二人で喋っていると、近くに居た希海が優奈に気付く。


「あ、優奈姉ちゃん」


 表情を明るくした希海は駆け寄ってきて、優奈に抱き着いた。


「希海ちゃん」


 抱き着かれた優奈は顔を綻ばせる。


 元から人懐っこい子であるが、最初の出会いでお菓子をあげたり、商店街で奢ったりと餌付けをしていた為、優奈はとても懐かれていた。


「人懐っこくて可愛いなぁ。うちに持って帰りたい」

「いいよ。あげる」


 優奈が思わず心の声を漏らすと、美咲が答えた。


「やったっ。希海ちゃん、もーらい」


 優奈は喜んで希海を抱きしめ、希海も嬉しそうにしている。


「いや、あげるなよ。その子は物じゃねーぞ」


 突っ込みを入れてきたのは真琴だった。


「おりょ。サッカー終わった?」

「終わってねーよ。ゴール決めて区切りがついただけ。見てなかったのかよ」

「お喋りしてて見てなかった」

「試合中にお喋りするな、とは言わないけど、ボールくらいは見とけよ……。まぁいいや、優奈も来たことだし休憩するか」



 休憩となり、サッカーで遊んでいた子達はグラウンド端、遊具隣にある休憩場で、それぞれ持ち込んだお菓子やジュースを食べながら休憩を行う。

 人数はそれほど多くなかったが、みんなガヤガヤと賑やかだった。


「こうやって皆といると施設に居た時のこと思い出すよ」


 美咲が休憩しながら、そう呟いた。

 希海を膝の上に乗せてお菓子を食べさせていた優奈が、その呟きを聞いて言う。


「下級生の子達、連れてきてくれた管理者に感謝だね」

「うん。でも、いない子もいるんだよねぇ」

「あー……いない子は選ばれなかったんだよ。何かしら問題がある子とかは、町での生活に適さないと判断されて除外されるんだ」

「ほんとだ。いないのは性格悪かったり物盗んだりする子だよ」

「ちょっと可哀そうだけど、平和な町を維持する為には仕方ないんだよ」

「お天道様ならぬ管理者様が見てるってやつかぁ。悪いことはするもんじゃないね」


 美咲は連れて来ない理由に納得した為、不平不満は言わなかった。



「そういえば希海ちゃん。いつもの二人はいないの?」


 施設組限定の集まりでもないのに、仲のいいはずの未久と結衣の姿がなかった。


「休みの日は遊んでないよ。誘っても未久ちゃん断るんだもん」

「え、何で?」

「分かんないけど、休みの日はダメだって。あと、お泊りも断られた」


 仲良さそうにしていた三人だったが、遊ぶのは平日の放課後だけだった。

 その理由は、未久が誘いに乗らないこと。


(何か用事がある、ってことはないよね。ということは多分あれか)


 移住の理由も何もかも知っていた優奈は心当たりがあった。


(……ちょっと、お話してみるか)





 寮にある未久の部屋。

 自室に居た未久は一人クロスワードパズルを解きながら暇を潰していた。

 するとその時、チャイムが鳴る。


「はーい」


 来客が来た為、未久はクロスワードパズルを解くのを止め、玄関に出た。

 扉を開けると、そこに居たのは優奈であった。


「今いい?」

「あ、はい」


 未久は扉を大きく開けて、優奈を中へと招き入れる。

 部屋を上がり、二人は居間へと入った。


「突然ごめんね。今、何かしてた?」

「いえ、暇してたので全然大丈夫です」

「暇なら友達と遊べばいいのに」

「……あの、用件は?」

「いや、さっきね。希海ちゃん達と会ったんだけど、未久ちゃん放課後以外は誘い断るって言ってたから、何でかなって思って」


 優奈が尋ねた瞬間、未久は真顔になる。


「友達だからって休みも遊ばないといけないんですか?」

「そういう訳ではないけど、他の子達は休日どころか泊りがけで遊んだりもしてるよ」

「私は適度な距離を保ちたいんです。近付きすぎて仲違いしない為にも」

「大人な考えだねぇ。私達、まだ子供なんだから、そんな上辺だけの付き合いなんてよくないと思うよ」

「そんなの私の勝手じゃないですか。友達と、どう付き合おうと、優奈さんには関係のないことですよね!?」


 上級生相手だったが、未久にとっては譲れない問題だったので、一貫して否定する態度だった。


「他人を信用できない気持ちは分かるよ。場所によっては出し抜き、騙し合いが当たり前の世界もあるからね。地上では失望したのだろうけど、ここは全然そんなところじゃないから」


 優奈のその言葉を聞いた未久は一気に警戒を強める。


「……ロボットに聞いたんですか?」

「ロボットは個人情報なんて漏らさないよ。未久ちゃんの感じから勘で言っただけだけど、やっぱり図星だった?」


 カマかけに引っかかったと思った未久はムッとするが、観念したように話し出す。


「学習したんです。身内ですら簡単に見捨ててくるのですから、人間なんて所詮その程度なんですよ。変に期待してしまわない為にも深く関わるべきじゃないです」

「地上では、そう言う付き合いも、ありだと思う。でも、ここは皆の楽園なんだから、そんな寂しいことは言わないで欲しいな」

「これが私にとって一番いい距離なんです。別に喧嘩した訳でもないですし、これからもそれなりに仲良くやっていくつもりですので、放っておいてください」


 取り付く島もなかった。

 未久の態度は頑なだった為、優奈は一旦退くことにして、未久の部屋を後にした。

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