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91話 キッズパーク1

 商業区にある室内遊具施設・キッズパーク。

 下級生の移住に合わせてオープンした施設の一つである。


 商店街の中では比較的大き目の施設で、中にはボールプールやエアードーム、ボルダリングなどの他、目の錯覚を利用したトリックアートや大型遊具などが色々ある。



 最近オープンしたとのことで、優奈、麻衣、智香の三人は放課後、キッズパークへと遊びに来ていた。


「わぁ、面白そう」


 智香達は施設内を見回して目を輝かせる。

 中は室内遊具が盛り沢山で、子供が大喜びするようなところだった。


「面白そうだけど、子供っぽいのは、ちょっと遊び辛いわ」


 年齢制限があるものはないが、幼い子供が遊ぶような遊具は、高学年の麻衣達には利用し辛かった。


 麻衣の言葉を受け、優奈が言う。


「だったら、大人っぽい遊びを織り交ぜてすればいいよ」

「どんな?」

「新規オープンで人は多いでしょ? まだ暖かいから薄着の子も多い。そんな子が飛び跳ねたり登ったりするとなれば、パンチラするのは必至。だから、保護者気分で皆のパンチラをカメラに収めながら遊べば恥ずかしくないよ」

「馬鹿じゃないの。真面目に聞いて損したわ。大人の遊びじゃなくて犯罪者の遊びでしょ」

「ここでは犯罪じゃないから」

「盗撮は犯罪でしょ」

「そんな刑罰、この町の法律にはないよ。というか法律自体ないし」


 この町での法律は明確には定められていない。

 決めても誰も見ないだろうし、覚えてられないだろうと優奈は敢えて作らなかった。

 だから、基本的に物事の良し悪しは一般常識で計ることとなり、問題があった場合や分からないところはロボットがその都度、判定を出すことになっている。


「そういえば、日本の法律関係ないようなこと言われたような……。でもじゃあ、盗撮してもいいってことなの?」

「盗撮がいい悪いというよりも、嫌がらなければオッケーって感じ。嫌な思いをする子がいなければ問題ないんだよ」

「確かに、それはそうよね。男がいないから、そういう風になってるのかしら?」


 被害者が居なければ何の問題もないと麻衣は納得した。


「という訳で撮りまくってよ」

「嫌よ。何で私のカメラで、そんなの撮らないといけないのよ」


 以前、優奈に乗せられて撮ったパンチラ写真は麻衣にとって苦い思い出だった。


「一枚につき十円あげるって言っても? いっぱい撮ったら結構稼げると思うよ」

「……お金釣るのはズルいわ」


 夏祭りのくじで大損したダメージは所持金という形でまだ残っていた為、麻衣は少し揺らいでしまう。


「どう? 魅力的じゃない?」

「ダメ。撮らないわ。違法じゃないなら、自分でカメラ買って撮ればいいじゃない」

「麻衣ちゃんに撮らせたパンチラだからこそ価値があるんだよ」

「……いい性格してるわ」


 麻衣は何とか優奈の誘惑を突っ撥ね、とりあえず遊ぶことにした。


「どこ行く?」

「どこにしましょうか」


 すると、智香が指をさす。


「あれがいいな」


 それは空気でパンパンに膨らんだ巨大な動物のキャラ。

 お腹の部分が、かまくらみたいに空いており、中では飛び跳ねて遊ぶことが出来るエアードームだった。


「よりにもよって一番子供っぽいのを」

「ダメ?」

「しょうがないわね」


 麻衣は若干抵抗があったが、智香の希望ということで、三人でエアードームに行くことにした。


――――


 エアードームの中で三人は楽しく飛び跳ねる。


「あはははっ。これ、楽しいわっ」


 最初は難色を示していた麻衣も、始めて見たら思いの外楽しかったようで、恥ずかしさを忘れて楽しく遊んでいた。


「麻衣ちゃん、パンツ見えてるよ」

「好きに見なさい」


 飛び跳ねることに夢中の麻衣は、優奈のセクハラを適当にあしらう。

 一時期は身嗜みに気を付けようとしていたが、もう完全に諦めていた。


 反応がいまいちだった為、優奈は構ってもらおうと麻衣に向けてヒップアタックする。


「どーん」

「ひゃ」


 麻衣はお尻に突き飛ばされるが、その表情は笑顔だった。


「やったわね。仕返しよっ」


 楽しんでいた麻衣はノリノリでお返しのヒップアタックをする。


「おっと」


 優奈はギリギリのところで避ける。


「当たらないよ」

「むぅ、だったら……」


 麻衣は正面から優奈にしがみつくと、一緒に倒れた。

 抱き着かれたまま、二人して、弾力性のある床で跳ねる。


「どうよ」


 麻衣は、したり顔で優奈を見る。


「麻衣ちゃんに抱き着かれて嬉しい」

「変態め」


 優奈を喜ばせただけと気付き、麻衣はすぐに離れた。


「もっとやってくれても良かったのにー」

「やーよ」


 麻衣はテンションが上がっていたが、セクハラめいた遊びには付き合ってくれなかった。


「じゃあ智香ちゃんに」

「いいよ」


 優奈に下心があることは知られていたのに、智香は快くオッケーした。


 両手を開いて待ち受けてくれる智香へ、優奈は喜んで飛び掛かる。


「ひゃっ」


 二人して床に倒れると、優奈は床を握って固定し、跳ねる勢いで腰を上下に動かし始めた。


 パンパンパンパンパン!


 股を開いた智香の腰に優奈の腰が打ち付けられる。


「ドアホ!」


 すぐさま麻衣が、上で腰を振る優奈を蹴飛ばした。


「どわあああああ」


 勢いよく蹴飛ばされた優奈は床を跳ねて壁にぶつかる。


「冗談にしても、やることがエグ過ぎるわ!」

「ウケると思ったんだけどなぁ」

「ドン引きよ」


 度を越えたセクハラに麻衣は引いていたが、それよりも先日の智香の言動から不安の方が大きかった。


(あまり二人を絡ませない方がいいのかしら。でも、友達なのに引き離すのは違うような気もするし……)


 目覚めそうになってる智香にとって、優奈は有害な存在だった。

 だが、友達を疎遠にさせることは出来ない為、麻衣は頭を抱えるしかなかった。



 どうしたものかと麻衣が考えていると、突然背中に人がぶつかって来た。


「きゃっ」

「あ、ごめんなさい」


 ぶつかってきたのは未久であった。

 希海と結衣の二人も近くにいる。


「あら、貴方達も来てたのね。楽しんでる?」

「はいっ」


 三人も飛び跳ねていてエアードームを満喫していた。


 そこで後ろから近付いてきた優奈が小声で麻衣に言う。


「麻衣ちゃん、シャッターチャンスだよ」

「いや、撮らないわよ」


 スカートで飛び跳ねていた未久と結衣はパンツが丸見えで、パンチラ写真を撮るには絶好のチャンスだったが、麻衣は後輩を売ることはしなかった。


 すると、希海が言う。


「ねぇねぇ、さっきやってたこと真似してもいい?」


 麻衣は表情が硬くなる。


「さっきって?」

「抱き着いて、どーんって倒れる遊び」


 優奈の卑猥な行為のことではなかったので、麻衣は胸を撫で下ろす。


「いいわよ。私も一緒にやってあげる」


 麻衣は希海に抱き着いて、床に倒れる。


「あはははは、面白ーい」


 希海は大喜びだった。


「じゃあ、私も……」


 優奈も入ろうとすると、麻衣が透かさず言う。


「さっきの、あれは絶対に止めなさいよ」

「はぁい」


 智香も当然参加し、六人で楽しく遊んだ。

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