表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

79/112

79話 身嗜み教室

 麻衣を講師役として授業が始まる。


「まずは着崩さない。部屋の中ではいいけど、外では人目を気にするように」


 麻衣は講義をしながら、美咲と真琴に服を着させる。


「暑いから脱いでるのに、着たら暑くなるじゃん」

「暑かったら薄着にする。それでも暑いなら我慢よ」

「ブーブー」


 二人からブーイングが来る。


「地上はもっと暑かったでしょ。はい、座る時はパンツ見せない。智香と優奈、隠しなさい」


 麻衣に言われ、智香と優奈は股を閉じてパンツを隠す。


「智香も初めの頃はしっかり隠してたでしょ。優奈のこと注意してなかった?」

「いつの間にか慣れちゃって……」


 智香は誤魔化すように笑う。


「ほら、緩んでる。美咲と真琴も短パンの隙間から見えてるわよ」

「このくらい、いいじゃん。そこまで気にしてたら座れないよー」

「ダメよ。これからは気を付けるように」

「むぅ」


 厳しく言われてムッとした美咲は立ち上がると、履いていた短パンとパンツを下げ、お尻を振って踊り始めた。


「ブリブリブリトー」


 それを見て爆笑した真琴も同じようにお尻を出す。


「ブリブリブリーフ」


 二人でふざけて踊り始めた。


「麻衣ちゃんが厳しくし過ぎるから……」

「私、そんな難しいこと言ってる?」

「あの二人は地上でも、あんまり気にしてなかったんだから簡単じゃないと思うよ」

「みたいね……。せめて、もうちょっとお上品になってほしいのだけど」


 そこで麻衣の言葉を聞いた美咲が言う。


「上品? おほほほほ、これ麻衣や。埃が残ってるよ」

「それ、意地悪オババ」


 麻衣は頭を抱える。

 二人に身嗜みを教育することは至難の業だった。


「ねね、クラスメイトに、お嬢様いるかな?」

「え? 聞いたことないけど、金持ちなら、ここ来ないでしょ」


 すると、優奈が言う。


「そうとも限らないよ。上流階級は上流階級で辛いことだってあるし。例えば政略結婚の相手として、脂ぎったオッサンを宛がわれるとか」

「あぁー、そういうのもあるのね。……まさか優奈が?」

「違う違う、私は至って平民だよ」

「ま、そうよね。って、いつの間にか話が脱線してるじゃない。身嗜みの話に戻すわよ」


 話を戻され、美咲達は苦い顔をする。


「前々から思ってたけど美咲、ブラつけたら? あんた、この中で一番大きいんだから」

「いらないよ。今まで一度もつけたことないし」

「私もここに来るまで、つけたことなかったけど結構いいわよ。町のだからかもしれないけどフィット感があって、つけてて心地いいわ」

「必要性を感じられません。あんなのつけたら余計に暑くなる」

「暑くなるのはそうだけど、美咲ぐらいの大きさならつけるべきよ。じゃないと、それより小さい私が笑いものになるわ」

「ぎゃはははは」


 美咲は麻衣を指をさして笑う。


「笑うんじゃないの! 真面目に言うけど、今後のことを考えたらつけた方が絶対いいわよ。私達ゆっくりにでも成長はしてるんだから」

「えー」


 美咲が、ごねていると優奈が言う。


「気が向いたらでいいんじゃない? 遺伝子が修復されたおかげでブラつけなくても、垂れたり型崩れしたりすることはないんだから」

「そうなの? じゃあ付ける意味は?」

「お洒落。あと動き易くかな。大きい子のは揺れるのを防げるから、スポーツとかだと、つけるのと、つけてないのとでは違いが出てくるはず」


 優奈の話で美咲が興味を持つ。


「パワーアップアイテム? それなら、つけてみてもいいかも」


 スポーツなどで有利になるという部分に惹かれ、着用に前向きになった。


「それで、つけるの……」


 麻衣はガクリと肩を落とす。


「あたしは、つけても意味ないよな」


 真琴は自分の胸をアピールするように強調して言う。

 その胸は平らで、膨らみは僅かだった。


「ファッションでもあるから、つけていいと思うよ。小さいのには小さいのの魅力があるし。そのしなやかなラインにはキャミソールもいいけど、スポーツブラも全然あり。薄っすら膨らんだ乳房が強調されて、逆に全体的な可愛さが引き立てられる」

「止めろ止めろ。別に気にして言った訳じゃねーからっ」

「そう? 気にしてないならいいけど、胸に間違ったコンプレックス抱いてる子多いから」

「気にしてねーよ」


 真琴は強がっている訳でもなく、本当に気にしていない様子だった。


「ま、気にする歳じゃないわよね。私達」


 年齢的に胸の大小について気にしている子はいなかった。


「よし、じゃあ皆で胸の大きさを比べっこしよう」

「しないわよっ」


 気にしていないのならと優奈が提案したが、麻衣に一蹴された。



 麻衣は本筋に戻して話を続ける。


「ブラはそれでいいとして、後は何があるかしら……。化粧をしてみるってのはどう? すれば、ちょっとは身嗜みに気遣うようになるんじゃない?」

「ないよ」

「え?」

「この町に化粧品なんてのはないよ。成長が止まる、即ち老化がないってことだから、スキンケアなんて必要ないでしょ? だから、手荒れクリームやリップクリームの類もないんだ。それが必要な状況になら、もう病院で完全に治してもらった方が早いし」


 遺伝子の修復と成長停止の薬によって、肌は丈夫で常にみずみずしく、滅多なことでは荒れたりしないようになっていた。


「そっか……。ちょっぴり興味あったんだけどな。お洒落する化粧もないの?」

「色々塗りたくるやつ? あんなの、お面つけてるのと一緒じゃん。本当の顔じゃないし、肌まで痛む。若い頃から化粧してる人とか悲惨だよ? 肌へのダメージが蓄積したせいで、まだ三十前なのにシワ塗れで老婆みたいに見られたりして」

「うげ、そうだったの」

「私達には不要なものなんだよ。化粧なんてしなくても、皆こんなに可愛いし」

「はいはい。化粧がダメなら後は他に何があるかしら?」


 麻衣は優奈の戯言を軽く流して話を続ける。

 だが、美咲が面倒臭そうに言う。


「別に、このままでいいじゃん」

「ダメよ。せめて女として最低限のことは気を付けられるようにならないと」

「めんどくさーい。そんなの麻衣が気にしなければいいだけじゃん」


 美咲と真琴はやる気が全くなかった。


「……優奈、説得お願い」


 自分では駄目だと判断した麻衣が優奈に投げる。


「私? 私もどちらかというと気にしない性質だよ。それはもう盗撮されるくらいに」

「分かってるわよ。でも、お洒落の心得はあるから説得できるはず。少なくとも、私はそう信じてるわ」

「そんな言い方されたら、やるしかないじゃん」


 引き受けた優奈は美咲と真琴の二人に向かって説得を始める。


「二人とも。とりあえず下品なのはダメ。可愛くない。上品にしなくてもいいけど、普通にしてほしいんだ」

「あたしは普通にしてるつもりだよ。何がダメなの? パンツ見えるの?」

「パンツはいいよ。寧ろ、ちょい見せするくらいが可愛い」

「パンツ一丁で相撲やレスリングは?」

「オールオッケー。素晴らしい」


 全肯定し出した為、麻衣が慌てて間に入る。


「ちょっと、ちょっと。何がオールオッケーよ。全然ダメじゃないの」

「パンツには拘りがありますから。それが私のお洒落です」

「……ダメね。使えないわ。智香お願い」


 優奈はダメだと判断した麻衣は、次に智香に説得をお願いした。


「えぇ……」

「智香が最後の希望なの」


 真剣にお願いされ、智香は渋々説得を始める。


「えっと……人前では身嗜みをした方がいいんじゃないかな」

「身嗜みに気を遣わないのは、いけないことなの? 先生は怒らないよ。怒られないなら、別に悪いことじゃないんじゃない?」

「そうだよね。私もそう思う」


 一発で言い負かされてしまった。


 優奈は同情するように麻衣の肩に手を置く。


「諦めよう。町で規制されていない以上、他人をどうこうすることなんて出来ないのだから」

「うぅ……うがー!」


 麻衣は突然後ろを向てお尻を突き出すと、スカートを捲って半ケツを出した。


「ブリブリブリリアントダイヤモンドー」


 美咲と真琴がやったように、お尻を振って踊り始めた。


「麻衣ちゃんが壊れた……」


 優奈は麻衣の落としたデジカメを拾う。


 スッ……


 レンズを麻衣に向けると、智香が手で止める。


「それは流石に可哀そうだよ」


 麻衣が壊れたことで、身嗜み教室は失敗で終わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エロゲー版『作ろう! 無知っ娘だけの町 プラス無限ダンジョン』FANZAにて好評発売中。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ