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7話 病院で治療

 それから優奈は作業ロボット達が開発を進めてくれる中、集めた資料を参考に設計を行いながら、スパイロボットを飛ばして、日本中の女の子達の情報を集め始めた。



 その数日後。

 優奈の姿は、とある病院の一室にあった。


 ベッドには少女が一人眠っており、その身体には沢山の管がつけられていた。

 そして所々には青痣や傷痕が見受けられる。


 母親からの虐待により暴行を受けた際、頭の打ち所が悪かった為、昏睡状態となっていた。

 そう、この少女は優奈が町作りを始める切っ掛けとなった子であった。


 事件から未だ昏睡状態が続いており、予断を許さない状況である。


「どう?」


 優奈が、少女にコードを伸ばしていたヴァルサに状態を尋ねる。


「記憶を補完する部分に破損はないようですので、完全な状態に修復することは可能です。ナノマシンのみで行う為、時間はかかりますが、記憶障害や、その他の後遺症が残ることはありません」

「そ。良かった」


 少女が完治することを知らされ、優奈は胸を撫で下ろす。

 スパイロボットで、この少女のことを見つけた為、慌てて駆け付けていたのだった。


 本格的な治療装置を使えば、数時間もかからずに完治させることはできたが、この重症をそんな短時間で全快させてしまうと、病院内が大騒ぎとなってしまうので、体内に注入したナノマシンで内部からバレないように治療することにしていた。

 ナノマシンにもステルス性を持たせている為、精密検査をされても見つかることはない。


「心の方も心配だから、起きたらメンタルケアもした方がいいかな?」

「ナノマシンによる治療で、脳機能も整えることになりますので、意識が戻った後の精神状態は比較的安定していると思われます。記憶は残っている為、考えることはあると思いますが、メンタルケアを必要とするまでにはならないでしょう」

「心配はいらないってことね」


 安心した優奈は眠っている少女の顔を覗く。


「町が出来た頃にまた勧誘に来るからね」


 それだけ言い、優奈は病室を後にした。




 病室を出た優奈はヴァルサを引き連れながら廊下を歩く。

 例の如く光学迷彩で姿を隠している為、他の人達からは認識されていない。


「さて、次の子は、と」


 優奈はモニタを表示して、地図画面にする。

 病院に来た目的は、さっきの子だけではなかった。


 モニタに移る病院の見取り図に記されたマークを追って歩くと、優奈の前に車椅子に乗った女の子が通りがかる。

 優奈よりも少し小さな、その女の子は、手で頑張って車椅子を漕いで進んでいた。


「お、居た居た」


 その子が次の目的の人物であった。

 優奈は姿を現すでもなく、車椅子の女の子の後をつける。



 そのまま後をつけていると、女の子は中庭へと出た。


 芝が生い茂った中庭はベンチなどが設置されており、ちょっとした公園のようになっていた。

 天候が曇り空だった為か人気は然程ない。


 そこまでついてきていた優奈は、周りを見て他に人が来ないことを確認してから、モニタでヴァルサを操作する。

 すると、ヴァルサ本体から一本のコードが伸び、その先端が緑色に淡く光り始めた。

 そして、その光る部分だけをステルスを解除して見えるようにする。


 女の子が光に気付くと、優奈はその光を動かして、まるで飛んでいるように見せながら喋る。


「こんにちは」

「えっ?」


 突然、何処からともなく聞こえて来た声に、女の子は驚く。


「私は妖精。今日は貴方を助ける為にやってきました」


 優奈は自分のことをそう名乗った。

 だが、女の子は光など無視してキョロキョロと周りを見回し始める。


「あの……私はここだよ」


 優奈は主張するように光るコードの先端を女の子の前で動かす。

 そこで女の子は再び光に目を向けるが、その目は非常に冷めたものであった。


「それ、レーザーポインタですよね? 声はスピーカーから出してるんですか?」


 女の子には悪戯だと思われていた。


「今の子は信じないかぁ……。設定とか演出、結構考えてきたんだけどな。まぁ、私の正体は何でもいいとして、君のその足なんだけど治したいとは思わない?」


 優奈が訊くと、女の子は表情を曇らせる。


 女の子の両足の機能は二ヶ月前、事故によって失っていた。

 事故の原因は、高齢者ドライバーによる運転ミスである。

 女の子は歩道を歩いていただけで、非は全くなかった。

 それなのに、彼女は足を永遠に奪われたのだ。


 だが、女の子の不幸は、それだけでは終わらない。

 足がもう動かないことを知った両親は、娘を欠陥品として見限り、愛することをしなくなったのである。

 娘への関心は薄れ、見舞いにも来なくなった。


 事故により、女の子はあまりにも多くのものを失ったのである。

 そんな女の子を不憫に思った優奈は、助けてあげようと接触を図ったのだった。


「君が望むなら、完全に元通りに治してあげるよ」


 優奈が治せることを告げると、女の子は怒り始める。


「できもしないこと言って揶揄わないでよ! 足の神経が死んでるんだよ! もう一生このままなの!」


 医者からは、もう二度と自力で歩けることはないと説明されていた為、既に希望は捨てていた。

 足を失い、親からも見捨てられ、女の子の心は絶望の中に居た。


「そう思っちゃうのも仕方ないよね。でも、嘘は言ってないよ。私なら治すことができる。本当かどうかは今は信じなくてもいい。ただ、足なんてもう一生治らなくていいと思ってないなら、遊びと思って少しだけ付き合ってほしい」


 優奈は切実にお願いする。

 予め立てていた筋書きと変わってしまった為、もうお願いするしかなかった。


「……何すればいいの?」


 訝しげな視線を向けていた女の子だが、足は治ってほしいとは思っていたので、怪しみながらも少しだけ相手にすることを選んだ。

 その返事を受け、優奈は笑みを浮かべる。


「じゃあ、服を捲くって足を見せてくれる?」


 優奈がそう言うと、女の子は病院服の裾を上げて足を露出させる。

 その太腿には大きな傷がつけられており、他にも痛々しい傷跡が所々に残っていた。


「ちょっと変な感じするかもしれないけど、そのまま動かないでね」


 ヴァルサが光るコードを動かし、女の子の太腿に触れる。

 そこから体内へとナノマシンを注入した。


 次に光るコードを太ももから少し離し、その位置から足へ向けてレーザーを当て始める。

 すると、女の子の足はから見る見るうちに傷痕が消えて行く。


 目に見えて綺麗になって行くその様子に、女の子は目を丸くさせていた。

 そうしているうちに、女の子の足は傷一つない綺麗な状態へとなった。


「はい、完了。もう動かしてもいいよ」


 完了の合図を受け、女の子が足に力を入れる。

 すると、ピクリと足が動いた。


「う、嘘……」


 女の子は信じられないような顔で、足を大きく動かし始める。

 女の子の足の神経は厳密には死んでおらず、ただ断裂しているだけだった。

 なのでナノマシンで繋げてあげれば、すぐに元通りの状態にすることができるのである。


「暫く使ってない状態だったから、違和感があるかもしれないけど、すぐに馴染むから。じゃ、私はもう帰るね」


 優奈が治療を終えて去ろうとすると、女の子が慌てて言う。


「あっ、あの、ありがとう妖精さん」

「ふふ、どういたしまして」


 コードの光を消し、優奈はその場を去った。


 これで、この子が移住する理由がなくなってしまったが、優奈は一切後悔はしていない。

 辛い思いをしていた少女が減っただけで満足であった。




 目的は果たした優奈であったが、まだ帰ることはせず病院内に留まっていた。


 引き続き、ステルス状態で院内を歩く。

 待合室で女の子を見つけると、ヴァルサでスキャンをし、ナノマシンを打ち込んだ。


「?」


 何かに触れた感じがした女の子は周りを見回すが、近くには何もおらず首を傾げる。


 優奈は院内を散策して、見つけた女の子を勝手に治療して回っていた。

 病院なので、困っている女の子には事欠かない。


「ついつい助けちゃうんだよね。あんまりやり過ぎると騒ぎになるから、良くないのは分かってはいるけど」


 住民勧誘とは関係がない為、いくら治しても優奈に得はない。

 しかし、それでも困っている子を見て見ぬ振りすることはできないのだった。



 優奈が廊下を歩いていると、横の扉が開く。

 そこから出てきたのは、母親に連れられた中学生になって間もない程度の少女だった。


 彼女の表情は暗く、目が死んでいた。

 尋常ではない様子に、優奈はぎょっとしてその子に注目する。


 どうしたのだろうと思いながら視線を送っていると、僅かに開いていた診察室の中から看護婦達の声が優奈の耳に入ってくる。


「さっきの子、暴漢に襲われたんだって。犯人は逮捕されたみたいだけど、相当酷いことされたみたいよ」

「可哀そうに。最近そういう事件増えてない?」

「そんなの昔からよ。昔は今よりも泣き寝入りが多かったからね」



 その話を聞いた優奈は悲しみと怒りを覚える。


 未来の技術を使えば心と身体は治すことができるが、暴行されたという事実はタイムマシンでも使わない限り消せない。

 あの子は一生その事実を背負って生きていかなければならなかった。


(犯罪者の始末もしないと。町ができるまで、やること一杯だ)


 不幸な目に遭う少女を減らすには、性犯罪者の駆除は不可欠である。

 新たにやることを見つけた優奈は、意気込んで病院を後にした。

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