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68話 理沙へのプレゼント

 寮の隠し部屋。

 優奈はモニタの脇に映し出されている女の子達の映像を観ながら、次の受け入れに向けての作業をしていた。


「夏は開放的でいいね。コレクションがどんどん貯まってく」


 モニタの正面にはプログラムの文字列が沢山並んでいるが、脇には町の現在の様子が映っていた。

 夏の暑さから、みんな薄着をしており、美咲や真琴がよくしているみたいに、パンツ一丁姿になっている子も見受けられた。


 監視カメラの映像は常時データベースに蓄積されている。

 優奈は女の子達といつでも触れ合える為、見返すことはほぼなかったが、自己満足としてコレクションしていた。


「しっかし意外と、これ大変だな」


 優奈がメインで作業していたのは、育児プログラムの作成であった。

 次の受け入れは幼い子も居れる為、ロボットに育児させる必要があるのだ。


 元々あったデフォルトの育児プログラムは未来の価値観を基準としてあったので、そのまま使うと浮世離れした子に育ってしまう。

 だから、現在の価値観プラス優奈に都合がいいように、設定変更しなければならなかった。


 幼い子への教育はデリケートである為、細密な設計が必要である。

 優しく良い子に育つようにしつつも、それぞれの個性は消えないようにする。

 その上で途中で問題が出ないよう、シミュレーションを何度も繰り返していた。


 ヴァルサが手伝ってくれるとはいえ、優奈の要望を全部入れるには自分が主導してやらなければならない為、骨が折れる作業だった。


「大事なことだけど、息抜きしながらでもないとやってられないよ。こんなの」


 優奈はモニタ画面を切り替えて、監視カメラを全体に表示させる。

 映し出されたのは智香の部屋だった。


 居間にいた智香はテレビゲームをしていたのだが、上はキャミソール、下はパンツだけという、だらしない姿だった。

 相変わらず、友達と遊ぶ時以外は自室に籠ってゲーム三昧している。


「智香ちゃんは、ぐーたらで可愛いな」


 優奈はカメラをアップさせて、だらしなく開いている智香の股の部分を拡大表示させる。

 高性能カメラで鮮明に映し出された映像からは、パンツの縫い目までハッキリと見えていた。


「あーあ、横着な座り方してるからパンツのゴム伸びちゃってるじゃん」


 床に押し付けて引っ張るように斜めに座っていたので、パンツの足を通す部分のゴムが伸び伸びになっていた。

 優奈はカメラの向きを変えて、横から覗き込むようにゴムが伸びた部分からパンツの中を覗く。


 中を確認した優奈は満足気な顔をして、画面を切り替えた。



 次に映ったのは寮二階の食堂横にある調理室。

 そこでは麻衣が一人、料理をしていた。

 作っているのは白鳥の形と思わしき不恰好なシュークリーム。


「麻衣ちゃんはお菓子作りに挑戦中かな?」


 最近、麻衣は料理を趣味にしており、智香に教わったりして、優奈にもよく差し入れをしてくれていた。

 料理は動画にして番組にすることもできる他、オリジナル料理を開発して、

レシピが評価されて使われるようになれば、町からの報酬で稼ぐこともできる。


 だから、麻衣は楽しさからやっているというよりも、お金の為にやっていた。

 動機は不純であるが、練習を重ねることで少しずつ成長してきている。


「料理で稼ぐのは難しいと思うけど頑張ってね」


 優奈は密かにエールを送って、画面を切り替える。



 続いて映し出されたのは、先日バーベキューをやった自然公園の川辺。

 そこには真琴と美咲の姿があった。


 真琴は河原から釣りを行っており、美咲は川に入って水面を覗いている。


「うぉりゃー!!」


 美咲が勢いよく川の水をひとかきすると、その手には鱒が握られていた。


「熊かよ」


 美咲は手掴みで魚を取っていた。


 魚はロボットだが、売店で食用のものと交換することができる他、現物ではなくお金に換えることもできる。

 ただ、値段は数円から十円程度なので、それで稼ごうと思うと労力には全く合わない。


 二人はお金稼ぎのことなど考えず、暇潰しでやっていた。

 優奈は画面を美咲に合わせてアップする。


 美咲は衣服が濡れないようにか、パンツだけの姿となっていた。

 更に画面をアップして、胸をなぞるようにカメラを下にずらし、パンツを大画面で映す。


 映像は鮮明で、陰部の一本筋の食い込みまでハッキリ映っていた。

 優奈は舐めるようにそこを見る。


「いいねぇ。みんな夏休みを満喫してて何より」


 十分視姦してから、また画面を切り替える。



 今度映ったのは理沙の部屋だった。

 理沙の部屋は比較的片付いており、物が綺麗に整っていつつも、所々に置かれた私物から女の子らしさが見える洗礼されたお洒落な様相をしていた。


 部屋に居た理沙はベッドの上に寝転んで、ハンドクラフトの本を読んでいる。

 その姿は下だけ履いておらずパンツ丸出しで、智香と似たような格好をしていた。


 最近は夏の暑さから、寮内でこのような恰好をする子は割と多い。


「理沙ちゃん、今一人か……。そういえばプレゼント渡さなきゃいけなかった。丁度暇みたいだから、今行こっと」


 誕生日プレゼントを用意していたことを思い出した優奈は、作業を中断して理沙に会いに行くことにした。




 理沙の部屋。


「ふんふんふんー」


 理沙は上機嫌で鼻歌を歌いながら、変わらずベッドの上で本を読んでいた。


 その時、玄関からノックの音が響く。


「あ、はーい」


 来客の知らせを受け、理沙は玄関へと出迎える。

 玄関の扉を開けると、そこに居たのは満面の笑みを浮かべた優奈だった。


「優奈さん、どうしたの?」


 すると、優奈は背中から紙袋を出す。


「はい、これ。誕生日プレゼント。遅くなってごめんね。なかなか渡す機会なくて」

「本当に用意してくれたんだ。社交辞令だと思ってた」

「女に二言はないよ」


 優奈は力強くそう言って、自分の胸をドンと叩く。


「ふふ、ありがと。上がってく?」

「じゃあ、お邪魔させてもらおうかな」


 貰って、さよならでは申し訳ないと理沙は思い、部屋へと誘うと、優奈は素直に誘いに乗り、上がることにした。



 二人で理沙の部屋に上がり、居間へと入る。


「こんなの貰ったら、お返ししないといけないね。優奈さんの誕生日いつ?」

「お返しなんていいよ」

「貰うだけなんて悪いよ」

「気にしなくていいよ。貰ったらお返しってしてると、ずっと続いちゃうでしょ。今回は私がプレゼントしたいからしたってだけだから」

「おぉ、イケメンだ。他の皆にもこうやってプレゼントあげてるの?」

「いや、誕生日プレゼントあげたのは理沙ちゃんが初めて。誕生日って聞いたから反射的にあげるって言っちゃったけど、皆にあげてたら収拾がつかなくなることに気付いて、実は後悔してたりしてます」

「あははっ、確かに。これ返そうか?」

「今回は貰って。理沙ちゃんの為に選んだやつだから」

「じゃあ、有難く頂きます。今開けていい?」

「どうぞ、どうぞ」


 理沙は紙袋の封を開け、中に入っていた物を取り出す。

 出てきたのは犬のぬいぐるみだった。


「ぬいぐるみ……」


 理沙は神妙な表情で犬のぬいぐるみを見る。


「前にぬいぐるみ専門店を外からチラチラ見てたから、好きなのかなーって思って」


 監視カメラで理沙の行動はチェックしていたので、リサーチはばっちりだった。


「見てたの? うわー、恥ずかしいっ」

「何で恥ずかしがるの?」

「高学年なのに、ぬいぐるみって子供っぽいじゃん」

「そう? 大人でもぬいぐるみ好きな人、割といるから、別に恥ずかしいことじゃないと思うけど」

「大人でも? ほんとに?」

「子供の頃から大切にしてるって話、よく聞くよ。芸能人でも、そういう人いるし」

「そうなんだ……」


 優奈の話を聞き、理沙はホッとした顔をする。

 子供だからこそ、子供っぽいことに敏感だった。


「本当は欲しかったけど、周りは全然持ってないから買い辛くて……」

「これからは自信持って買いなよ。この町には馬鹿にする子なんていないんだからさ」

「そうする」


 理沙は改めてぬいぐるみを正面から見る。


「この子、めっちゃ可愛い。名前なんて言うの?」

「キャラものじゃないから、特に名前はないよ」

「名無しかぁ」

「私の名前つけてもいいよ。いない時は私だと思って大切にして」

「友達の名前つけて大切にしてたら、ヤバい奴じゃん。優奈さん面白いこと言うね」


 理沙は冗談だと思って爆笑している。

 優奈は本気で言ったのだが、訂正するのは止めておいた。


「はー、笑ったわ。面白かった。ねー」


 理沙はぬいぐるみに喋りかけるようにして言う。

 だが、すぐにハッとして、恥ずかしそうに優奈の顔を窺う。


 その可愛らしい反応を優奈は微笑ましく見ていた。

 恥ずかしがる理沙を優奈がニヤニヤしながら見ていると、理沙は表情を落として口を開く。


「優奈さんから見たら、私ってどんなイメージ?」

「イメージ? んー、明るくて今どきの女の子って感じかな?」

「チャラチャラしてる?」

「まぁ、そう見えなくもないけど、チャラチャラしててもいいと思うよ」


 すると、理沙は俯きながらも真面目な顔をして言う。


「……実は私、ここに来る前は真面目ちゃんだったんだ。うちの親、昔から目茶目茶厳しくてさ。誕生日でも買ってくれるのは知育玩具や歴史の本とか、そんなのくらいで、自由な時間は勉強以外やること許さないって感じ。スマホはあったから、偶に隠れてゲームはしてたけど、命懸けでやってたな」

「そうなんだ」


 「知ってたけど」と優奈は心の中で呟く。


「その反動でこんな感じになっちゃったけどね。あの時は毎日辛くて、唯一物心つく前に買ってもらった、ぬいぐるみが心の支えだったから、それで、ぬいぐるみが好きになったの」


 理沙はぬいぐるみをギュッと抱き締めると、顔を上げて優奈に言う。


「プレゼント、本当にありがとね」

「どういたしまして」

「私の印象、大分変わったっしょ?」

「そだね。思ってたより、ずっと可愛い子だった」

「うぅ。もー、そんなことばっか言ってるから、麻衣さんにキツく当たられるんだよ」

「ご尤もです……」


 二人は笑い合う。

 今日のことで、優奈は理沙と一気に距離が縮まった気がした。

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