62話 発展を続ける町
朝の商店街。
智香を背負った優奈と麻衣が歩いていた。
「結局、カラオケ行っちゃったわね。しかも智香ってば、私がちょっと寝てた隙に飲んでるし」
麻衣が優奈の背中で爆睡する智香の頬をつつく。
当初はボウリングを予定していた三人だが、先日遊びすぎた為か三人とも筋肉痛になってしまっていたので、予定を変更して飲食店の梯子からのカラオケで一夜を明かすこととなった。
「楽しかったからいいじゃん」
「そうね。カラオケがあんなに楽しいとは思わなかったわ」
初めは渋っていた麻衣も一度踏み込んでからは、恥ずかしさを越えた先の楽しさを見出して、進んで歌うようになっていた。
「何事も挑戦が大事だよ。カラオケもスカート捲りも」
「……スカート捲りは後悔しかないわ」
夜遊びで満足げな顔をしていた麻衣は優奈の言葉で表情が沈む。
また新たに麻衣の黒歴史が追加されたのだった。
その時、三人の後ろから美咲と真琴が小走りで迫ってくる。
「優奈達、おはー」
そう言いながら、すれ違い様に麻衣と優奈のスカートを捲って通り過ぎる。
「あ、こらっ」
麻衣が声を上げるが、二人は止まることなく走り去って行った。
そんな二人の背を見ながら優奈が言う。
「美咲ちゃんにまで伝わってるね。スカート捲り、流行るかも」
「そんな流行り、断固阻止するわよ。というか、真琴のトラウマ、結構治ってきてない? スカート捲りにしてもカンチョウにしても」
「確かに軽減されてきてるかも。まだ格闘みたいなことはできないようだけど、良い傾向だね」
「良い傾向なのはそうなんでしょうけど、ちょっかい出される身としては素直に喜べないわ」
「ははは」
麻衣は愚痴を言いつつも、本気で嫌がっている様子はない。
嫌な時は、ちゃんと言えば止めてくれると、分かっていたからである。
悪戯好きの嫌いがあっても、町に居る子はみんないい子であった。
喋りながら歩いていると、公園に差し掛かる。
商店街の隣に位置する自然公園。
草木が多く茂り、澄んだ水が山の中腹から流れる。
自然の豊かさが売りのその公園は、敷地は非常に広く、後方にある山も敷地に含まれている。
山の上の方から続く長い滑り台があり、他の遊具も小学校のものより立派なものとなっていた。
遊具の他にも、川から続く水場や売店なども設置されている。
手前のアスレチック遊具では、先程走り去って行った美咲と真琴が楽しく遊んでいた。
「あら、こんなとこ、いつの間にできたの?」
「昨日の夜か朝の暗いうちじゃない? 昨日見た時は工事中だったから」
「こっちの方面は滅多に来ないから、全然気付かなかった。それにしても山なんて久々に見たわ。何かこの町で見ると変な感じね」
「ここ自体、人工的に作られた場所だからね。今後開発が進めば、どんどん自然豊かになって地上により近づいてくると思うよ」
「もうすぐ夏休みに入ることだし、これから色々楽しみだわ」
「だね」
町も女の子達との仲もどんどん発展していく。
楽園は少しずつ、そして着実に優奈の理想へと近づいていた。