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60話 ボウリング場

 そして四人は引き続き商店街を歩きながらお喋りする。


「……でね、夜遊びするお店探ししてたの」

「すげーな。朝までとか、あたし絶対起きてられない」

「起きてるのはちょっぴり辛いけど楽しいわよ。前はお洒落なバーで明るくなるまでお喋りしてたの。何で盛り上がったかはあんまり覚えてないけど、凄く楽しかったわ」

「あぁ、夜遊びって何かテンション上がるよな。朝まで起きてたことはないけど、美咲に連れられて夜遊んだことはあるから気持ち分かる」

「そうそう、何か知らないけど楽しいの。今度は何処に行こうかしら。さっきから探してるけど、なかなか決まらないのよね。真琴、何処かいい店知らない?」

「うーん、いいお店かぁ。遊べるところは結構知ってるけど、夜通しとなるとなぁ。どんなところがいいか希望とかある?」


 真琴は選択肢を絞る為に希望を訊いた。

 すると、智香が即座に答える。


「お酒があるところで」

「ダメよダメ! 何ちゃっかり要望出してるのよ。今度はお酒なしって言ったじゃない」


 智香の希望を麻衣が即却下した。

 最初の取り決めでは、お酒がないところでやるということで話がついていた。

 智香も渋々承諾したことだったが、前回のバーでの楽しい記憶が薄らと残っていたこともあって、まだ完全には諦めきれていなかった。


「ちょっとだけ、ちょっとだけだから」


 智香は頼み込むように言う。


「ちょっとで済まないでしょ。一緒に遊ぶときぐらい我慢しなさいよ」

「でもぉ」

「でもじゃないの。智香が酔っぱらうと、こっちが大変なんだから。ねぇ」


 麻衣は真琴に視線を投げかけて同意を求める。


「あ、ああ……お酒はあんまり飲まない方がいいんじゃないですかね」

「真琴ちゃんまで……。何で敬語?」


 真琴に敬語で対応され、智香は首を傾げた。


「ほら、真琴もそう言ってるんだから、いい加減諦めなさい」

「むぅ……」


 智香は不満げ顔をするが、それ以上食い下がることはしなかった。



 智香が黙ったところで、麻衣が改めて希望を述べる。


「希望はとりあえずお酒がなくて、飽きずに居られるところがいいわ」

「酒がなくて、飽きずに、か……なら、ボウリングなんてのはどう? 前に美咲に連れられて初めて行ったんだけど、楽しくて結構長い間遊べたんだ」

「ボウリング……いいかもしれないわね。やったことないけど、面白そうだわ」

「めっちゃ面白かったよ。夜遊びじゃなくても、一度は行ってみることをおすすめするぜ」

「二人はどう思う?」


 麻衣は優奈と智香に意見を求める。


「いいんじゃない? 私はどこでもいいから、任せるよ」

「麻衣ちゃんと優奈ちゃんが行きたいならどこでも」


 二人とも人任せな態度だった。

 優奈は女の子と遊べるなら何処でも良く、智香はお酒がないので半ば投げやりになっていた。


「もぅ、二人とも適当なんだから。じゃあ、時間もあるし試しに行ってみる? というか行くわよ」


 二人が人任せだったので、麻衣は決定事項にして言った。

 周りから異論は出ず、麻衣達はボウリング場へ行くこととなった。


「じゃ、あたしは寮に帰るわ」


 真琴は一人、帰ろうとする。


「あれ? 一緒に来ないの?」

「ボウリング場、金かかるから。別に高い訳じゃないけど、あんまりお金使いたくなくてさ」


 貧乏性の真琴は無駄な出費を極力抑えたかったのだった。

 一人抜けようとする真琴に優奈が申し出る。


「それなら真琴ちゃんの分は私が出すよ。紹介料としてさ」

「マジ? あー、でも、悪いからいいや。あたしがケチってるだけのことだし」


 一瞬喜ぶ顔を見せた真琴だったが、優奈に払ってもらうのは悪いと思い、遠慮し出した。


「大した金額じゃないから、そんなの気にしない。私達も人数が多い方が楽しいしさ。ほら、嫌じゃないなら行こうよ」


 優奈真琴の手を引き、有無を言わさない勢いで連れていく。

 強引であったが、奢られて得することから真琴は抵抗することまではできず、そのまま連れられて行った。




 四人は商店街にあるボウリング場へとやってくる。


「悪いな。遊ぶ代金払ってもらって」


 カウンターで真琴がやはり自分で払うと言いだした為、また一悶着あったが、優奈が半ば強引に払うことで会計を済ませた。

 ボウリングをする準備をしながら申し訳なさそうにしている真琴に向けて麻衣が言う。


「気にすることないわよ。優奈がお金持ってたって、碌なことに使わないんだから」


 麻衣が優奈と智香に視線を向けると、二人は誤魔化し笑いをする。

 その様子に、一人だけ意味が分からない真琴は不思議そうな顔をした。


「そういえば優奈って、あんまり物買ってないよな。二人の部屋は結構ごちゃごちゃしてるのに、優奈の部屋はそんなに物ないし。あ、スピーカーはあったっけ。結構デカいの」


 真琴は三人の部屋を思い出して言う。

 ゲーマー仕様の智香の部屋や、インテリア小物やクロスでお洒落に飾られた麻衣の部屋と比べると、優奈の部屋は質素に見えるのだった。


「あー、あるわね……」


 スピーカーと聞き、麻衣は微妙な反応を示す。


「音楽聴くんだ?」

「そう思うでしょ。けど違うのよ。部屋に遊びに言った時、知ってる曲が流れてたから普通に聴いてたんだけど、何か違ってたの。それでよく聴いてみたら、その曲、優奈が歌ってたの」

「はい?」

「優奈、カラオケで録音作って、自分で聴いてるのよ」


 麻衣は自分で言いながら引いた様子を見せる。

 その話を聞き、真琴も表情を強張らせた。


「ま、まぁ、上手いならいいんじゃね?」

「微妙だったわ。下手ではないけど、上手くもない。だから余計にヤバいのよ。微妙な歌を自分で喜んで聴いてるとか、ナルシスト過ぎて引くわ」


 散々な言われように、優奈は押し黙る。

 みんなには引かれていたが、これは目的があってのことだった。

 女の子だけのこの町では男の存在を徹底的に排除している。

 それは音楽でも同じで、男性ボーカルの歌う曲はミュージックショップでも買うことはできず、商店街やテレビで流れることもない。

 唯一、カラオケでのみ自分で歌えるようになっているだけである。


 しかし、カラオケだけでは耳にする機会はほぼないに等しく、廃れることが目に見えていた。

 男性ボーカルの曲にも名曲は多くあるので、それは勿体ないと思った優奈はボーカルを置き換えて流通させようと考えたのだ。

 所謂カバー曲である。

 機械で女性の声に変えることもできたが、せっかくなら女の子達の手によってカバーすべきと、手始めに優奈が自分から始めたのだった。


 真琴は引きつつも優奈をフォローする。


「今は微妙でも、そんなことやるくらいだから、すぐに上手くなると思うぜ。優奈の将来は歌手だな」

「そんなことになったら益々ナルシストに磨きがかかるじゃない。勘弁してほしいわ」


 頑張って前向きにフォローした言葉を麻衣が一刀両断する。

 あまりの言いように、それまで黙っていた優奈が口を開く。


「真琴ちゃんはいい子だね。それに引き換え、麻衣ちゃんは言いたい放題言ってくれちゃって」

「あれは流石に言いたくもなるわよ。今までの中で一番引いたわ」

「そんなに? 自分で録って聴くの結構楽しかったんだけど……。あ、夜遊びのお店、カラオケでもいいんじゃない? ボウリングの後にでも」

「カラオケはちょっと……」


 カラオケの提案に麻衣は難色を示す。


「何で?」

「だって、人前で歌うのって何か恥ずかしいじゃない。優奈には分からないと思うけど」


 麻衣が理由を述べると、智香も続く。


「私もカラオケに行く勇気はないかな。普段、音楽聴かないから歌える曲もないし」


 これまで一度もカラオケに行ったことのなかった二人はあまり乗り気ではなかった。

 カラオケは人前で歌わなければならない為、初めての人には少々敷居が高かった。


 そこで真琴が思い出したように言う。


「カラオケってお酒なかったっけ?」


 その言葉に智香が真っ先に反応する。


「あ、それなら行ってもいいかも」

「尚更ダメじゃない! カラオケは却下よ」


 お酒で興味を持った智香だったが、麻衣にあっけなく却下されてしまった。

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