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52話 放課後のゲームセンター

 平日の学校を終えた放課後。

 商店街の表通りを優奈と智香の二人が歩いていた。


 本日、新しくゲーム専門店がオープンした為、そこへ行った帰りであった。

 ゲームソフトを購入した智香は買い物袋を片手にニコニコ顔で歩く。


「見るだけのつもりだったのに買っちゃった。積みゲーがどんどん増えちゃうよー」


 ゲーム専門店は豊富な品揃えで、どれも楽しそうなソフトばかりであった為、智香は大満足していた。

 隣を歩く優奈も智香が満足してくれたことにご満悦あった。


「やりたいのが沢山あるのはいいことだよ。けど、お金は大丈夫?」

「えへへ……ちょっとピンチかも」

「じゃあ、あれいっとく?」

「うん、後でお願いするね」


 智香は躊躇うことなくお願いをする。

 キスでの金銭のやり取りは最早二人の間でルーチンワークと化していた。


 その時、通りがかった女の子集団が優奈達に気付いて声を掛けてくる。


「優奈さん、やっほー。あ、智香さんも」

「はぁーい」


 手を振ってくる女の子に優奈は手を振り返す。

 そしてそのまま互いに挨拶だけして通り過ぎた。


「理沙ちゃん達とも遊んでるの?」

「ううん、特には。偶にちょっと話すぐらいかな」

「ふーん」


 女の性質からか、女の子達は気の合った子同士でグループを作り、その中で遊ぶ子が多かった。

 しかし町には善良な子を集めていた為、グループでの対立などはなく、関係は良好である。


「安心して。この前、麻衣ちゃんに他の子と遊んでもいいけど、付き合いは悪くならないでって言われたから、二人を差し置いてまで遊んだりはしないよ」


 その言葉を聞いて智香が笑う。


「そんなこと言ってたの? 麻衣ちゃんって結構寂しがり屋だよね」

「そこがまた可愛いんだよ」

「ふふっ」


 麻衣が聞いていたら怒るだろうなと思いながら、二人は笑い合う。


 その時、優奈は通りがかったゲームセンターの中に真琴の姿を見つけた。


「あ、真琴ちゃんだ」



 ゲームセンター入口の近くにあるパンチングマシーン。

 その前で真琴は真剣な表情をして立っていた。


 徐に構えると、パンチングマシーンの的に向けて殴りかかった。

 しかし、的に当たる前に拳が止まる。

 真琴はすぐに再度構えて拳を突き出すが、同じように途中で止まった。

 その行動を二度三度繰り返す。

 そして今一度パンチを繰り出そうとしたところで、力が抜けたようにしてその場にへたり込んだ。


 その様子を見ていた優奈と智香は、慌ててゲームセンターの中へと入って真琴の下に駆け寄る。


「真琴ちゃん大丈夫!?」

「あ、優奈に智香。恥ずかしいところ見られちゃったな」


 二人は真琴に手を貸して起こす。


「一体、何を」

「いやな。自分で治せないかと思って頑張ってみたんだけど、ちょっとまだきつかった」


 真琴はトラウマを克服しようと、一人努力していた。


「そんな無理しなくてもいいのに。焦っても悪化させるだけだよ」

「ドラムのゲームができたから、いけると思ったんだよ。やってることは殆ど変わんないだろ?」

「心理的なものだからね。ドラム叩くのは普通にできるの?」

「そりゃもうバリバリ」

「なら、そのドラムの一つがケツ太鼓だったら?」


 優奈は後ろを向き、お尻を出した。

 それを見た真琴は吹き出す。


「ぶはっ。ちょ、それは不意打ちだろ」


 真面目な話をしていたところに唐突にぶち込まれた為、真琴は笑いを堪えることができなかった。

 爆笑する真琴を見て、優奈と智香の二人も笑顔になる。


 一頻り笑って落ち着いたところで真琴が言う。


「はぁー……優奈のそういうところ好きだわ」

「ほんと!? 私も真琴ちゃんのこと大好きだよ」

「ははは、ありがと」


 互いに好きだと伝え合うが、その意味は微妙に違っていた。



 三人はせっかくだからということでゲームセンターで遊ぶことにした。

 レースゲームの筐体に三人並んで座り、競争を行う。


「くらえ」


 真琴がハンドルを回し、自分が運転する車を優奈の車にぶつける。

 タックルを受けた優奈の車は壁へと追突して大破した。


「うわー、やられたー」


 優奈の車は修復されてコースに戻される。


「へへへー」


 真琴は抵抗がある素振りは全く見せず、得意げに笑う。


「結構リアルだけど、これは大丈夫なんだ?」

「テレビゲームはあんまり気にならないな。実際に攻撃してる訳じゃないし」

「ん? この前の魔法少女の遊びはダメだったんだよね? あんまり変わんなくない?」

「あれはリアル過ぎというか見た目現実だろ。やっぱり画面の中と外じゃ全然違うよ」


 レースゲームの画面も実際の風景と区別がつかないくらいの精巧さであったが、モニタという一枚の壁があった為か、真琴のトラウマには引っかからなかった。


「なるほど。ゲームで慣れたら大丈夫にならないかな?」

「あー、どうだろ?」


 真琴が首を傾げると、智香が口を挟む。


「ならないと思うよ。もしなるならゲームで殺しまくってる私は大変なことになっちゃってる」


 ゲーマーの智香が自ら言うだけに、その説得力はかなりのものであった。

 いくらリアルでもゲームと現実は別であった。


「テレビゲームで治せるんだったら苦労はしないさ。ところで、さっきから気になってたんだけど、そのガチャガチャするのやると何か変わるん?」


 真琴が隣で運転する優奈の手元を見て、そう尋ねる。

 優奈はシフトレバーでギアを切り替えながら運転していた。


「マニュアル選んだから、これやらないとスピード上げられないんだよ」


 レースゲームを始める際、優奈は一人だけMTを選択していた。

 このレースゲームはリアルさを追求したもので、操作は本物の自動車運転と同じやり方であった。


「へぇ、それでやると、あたしらの車より速さ出んだ?」

「いや、変わらないよ。自動で切り替わるギアを手動でやってるだから」

「それ意味なくね?」

「無駄な操作なのは否定できないけど、これが楽しいんだよ。この忙しい感じが堪らない。昔の車は全部こういう操作しないといけなかったんだ」

「ふーん? そういえば、この町って車全く通ってないよな。あたしらが大人になったら、売り出したりするのかな」


 MTの楽しさを理解できなかった真琴は話題を変えていく。


「需要があれば遊園地のゴーカートみたいな感じのところと作ってもらえるとは思うけど、町を走らせることはないんじゃないかな」

「何で?」

「単純に危ないから。まぁ、未来の安全装置がつくだろうから事故は有り得ないけど、車が通ってたら、今みたいに全く警戒しないで気楽に道を歩くことはできないでしょ」

「あー、そうだな。美咲とか道のど真ん中で寝そべってたけど、車通るようになったら、そんなこと絶対できないよな」


 事故は防げても大きな車が行き来することになれば、どうして警戒させてしまう。

 将来的にはそれなりの広さになる町も、移動は地下鉄で代用できる為、町でのストレスを極力与えないようにしようと、優奈は車の導入を予定していなかった。


「そもそも現代の車なんて、移動が便利になる代わりに一定確率で死傷するようなものだからね。どこにでも一瞬で行けるワープ装置だけど、低確率で身体がバラバラになる、なんてのがあっても普通使わないでしょ。それを利便性や利益の為だけに、人命を無視して無理矢理使わせてるのが今の世の中。本来、今の時代にはあってはならないものなんだよ」

「……優奈、事故にあったことでもあるの?」


 異様に強い姿勢で語る優奈を不審に思い、真琴は疑問をぶつけた。

 優奈は一瞬言葉を詰まらせる。


 まだ女の子達を迎え入れる前、町を作っている最中、優奈は暇があれば病院の女の子達を治療して回っていた。

 その中で自動車事故で痛ましい姿となった女の子を多く見て、少女を傷つける車という存在に怒りを覚えていたのである。


「いや……町に来る時に管理者に自動車事故に遭った子の話を聞いたんだよ。管理者は町の住民の勧誘意外にも、病院で病気の子や怪我をした子を治して周ったりしてたみたいなんだけど、自動車事故で怪我した子が結構いて、見てられないほど酷い状態だった子も多かったらしい」

「管理者さん、あたしらのことだけじゃなく、そんなことまでしてたんだな。やっぱりすげーや」


 優奈の話を聞いた真琴は感動と尊敬の眼差しを見せる。


「真琴ちゃんにとっては命の恩人だもんね」

「ああ、だからあたし管理者さんには本当に感謝してるんだ。これ終わったら、また神社行ってこようかな」

「それはもうしなくていいと思うよ……。真琴ちゃんの感謝の想いは十分伝わってるから」

「そう?」


 そんな感じに三人は雑談しながらゲームセンターで遊んだ。

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