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4話 町作りを閃く

 優也と女の子はショッピングモールを二人で歩きながら話す。


「私、渡辺麻衣。五年生よ。あなたは?」

「うん?」

「名前よ名前。まだ名前も学年も知らないでしょ」

「あー、名前かぁ。確かに、まだ言ってなかったね。えっと、私の名前は……ゆ、優奈。安藤優奈。学年は、同じ五年生」


 名前の一部を変え、優也は優奈と名乗った。


「やっぱり同じ学年だったんだ。よろしくね」


 同じ学年と分かり、麻衣は嬉しそうに喋る。

 優也改め、優奈の身体の年齢は、小学生の高学年の年齢、十一歳、十二歳に設定して構築していた。

 子供の成長は個人差が激しい故、大凡の設定ではあったが、偶然にも背丈も麻衣とほぼ同じであった。


「ところで、さっき近い年代の子と喋るの久しぶりって言ってたけど、それってどういうこと?」

「あれは、その……ええっと……わ、私、最近こっちに引っ越してきたばかりなんだけど、前住んでた所がすっごい田舎だったから、歳の近い子がいなくて……」

「へぇ、そうなの。どこに住んでたの?」

「そんな遠くないけど、山の方。麻衣ちゃんは何処に住んでる?」

「すぐ近くよ。そこのね……」


 和やかな雰囲気で話しているが、優奈は内心冷え冷えであった。


(うぐぐ、何も設定考えてなかったから、ボロが出そう……)


 名前も住んでいるところも、その場の思い付きで答えていた。

 このままでは、設定に食い違いが出てしまうことは必至である。


 困った優奈は、互いを詮索する流れを変えようと話題を変える。


「ね、ねぇ、これから何処で遊ぶ?」

「ん? あぁ、そうね。どこにしようかしら」

「私はどこでもいいよ。麻衣ちゃんの行きたいところで」

「だったら雑貨屋ちょっと見てって良い? 小物のインテリアで買おうか迷ってた物があるの」

「勿論。インテリア集めてるの?」

「集めたいけどお金がね。最近金欠気味だから、どうしても欲しいやつだけ買ってるの」

「そうなんだ。私も何か買おうかな。雑貨の良し悪しとか分からないから、おすすめあったら教えてよ」

「いいわよ。ここの店、可愛いのいっぱいあってね……」


 麻衣は饒舌に語り始める。


 好きなものについては語りたいと思うのが人間の性である。

 そっちの話に誘導することで、詮索することを避けさせ、凌いでいこうとしていた。



――――



「何て言ったと思う? 元は私のお金だから捨てるのも自由って言ったのよ」

「そりゃ酷い」

「でしょ。いくらお小遣いから買ったものでも、勝手に捨てるなんてありえないわ」


 二人はそれからもショッピングモールの中を周りながら雑談していた。

 あれから特に詮索されることもなく、二人はあっという間に打ち解けていた。


 喋っていた麻衣は視界に入った時計で今の時刻に気付く。


「あら、もうこんな時間。そろそろ帰らないと」


 外はもう日が暮れようとしていた。


「あぁ、もう夜かぁ」

「何だか私ばかり喋っちゃってたわね」

「ううん、凄く楽しかったよ」

「なら良かったわ。そうだ。連絡先交換しましょ」


 麻衣はポケットからスマートフォンを取り出した。

 一瞬目を輝かせる優奈だったが、スマートフォンを破壊したことを思い出す。


「あ、私スマホ持ってない……」

「あらら、残念。ま、近くに住んでるなら、また会うこともあるでしょ。じゃ、またね」


 麻衣は特に別れを惜しむこともなく、あっさりと去って行く。

 その後姿を、優奈は半ば呆然としながら見送るしかなかった。



 そして見えなくなったところで声を上げる。


「うわああああ、勿体ない! 麻衣ちゃんの連絡先がぁぁぁ」


 交友関係を結べるチャンスを逃し、優奈は嘆かざるを得なかった。

 不要と思って破壊したことを今になって心底後悔する。

 しかし、持っていたところで登録されている名前が優也の方であったので、それはそれで別の問題が起こっていたが。


 優奈は諦めたように大きくため息をつく。


「はぁー……ほんと残念。でも、楽しかったな」


 詮索から逃れる為に優奈は聞き手に徹するしかなかったが、それでも少女との交流は夢のような出来事であった。


 少女と楽しく和気藹々と過ごす。

 これこそが優奈の求めていたものである。


「もうずっと遊んでいたい。いっそのこと小学校にでも通おうか」


 優奈は子供として新しい生活を送ることを考える。

 学校に通えば、少女との交流は容易にできるであろう。


 しかし優奈としての戸籍や身内もない為、普通の子供として学校に通うには、様々な工作活動をして準備しなければならない。

 その上、そこまでして身分を作っても、学生としての時間の大半は学業に奪われるので、自由に交流できるのはそこまで多くはなかった。

 放課後・休日は学校に行かなくても先程のように交流できる為、割に合うかは微妙なところである。



 そんなことを考える優奈であるが、その時、近くにあった家電屋のテレビから流れる音声が、その耳に入ってくる。


「長女の頭部を殴り重傷を負わせたとして、母親の……を傷害の罪で逮捕したことを発表しました。長女の身体には痣があり、日常的に虐待が行われていたと見て調査を進めております。搬送された長女は尚も意識不明の状態が続いており……」


 それは虐待のニュースであった。

 今時、特に珍しくもない事件であるが、優奈は心を痛ませる。


(可哀そうに……。何で可愛い女の子にそんな酷いことができるかなぁ)


 どんな事件であれ、少女が被害に遭うというのは悲しいことであった。


(殺そうとするくらいなら、私が引き取ってあげるのに。ヴァルサがあれば、そんなところで暮らすよりも、よっぽど幸せに生きられる場所を……)


 そこまで考えたところで、優奈の頭に名案が閃く。


「そうだ! 作ればいいんだ。女の子だけの楽園を」







 自宅へと戻った優奈はヴァルサのモニタを操作して、町作りの試算をする。


 未来では汚染された環境から逃れる為、皆シェルターの中で生活していた。

 一つ一つが独立しており、インフラや発電、食物生産ができるよう完備されている。

 その技術を使えば、一つの町を作ることは可能であった。


 現代の社会インフラに一切頼らない、外界から完全に隔離された場所。

 虐待を受けていた子は平穏な生活を送ることができ、優奈は誰にも邪魔されない楽園で、女の子達に囲まれて生活することができる。

 正に一石二鳥の計画であった。


「実際に運用されてたモデルがあるのはいいね。凄く参考になる」


 シェルターという運用例があった為、町設計のイメージが非常にし易かった。

 インフラ設備などは、そのまま真似すればよく、街並みなど自分が変えたいところを変えるだけでいい。


 整備もロボットを巡回させて自動で行わせるので、人が働く必要は全くなかった。

 そこに世話をするロボットも置けば、子供だけでの生活も十分に可能であろう。


「作る場所はー、やっぱり地下が安定かな」


 外部からの介入を防ぐ為、町の存在は絶対に秘匿しなければならない。

 無論、ヴァルサがあれば全世界を敵に回しても勝つことはできるが、そうすると管理しなければならない範囲が世界全体になってしまうので、優奈的にはそれは避けたかった。

 地下に建設して、更に未来の技術で感知されないようにすれば、何人たりとも見つけることは出来ない。


 優奈が作成場所を地下に設定すると、モニタに候補地が割り出される。

 地質や地殻変動による影響など様々な観点から問題ない場所だけ表示されたが、未来の技術なら、その気になれば何処にでも作れる為、候補範囲は日本だけでも非常に広域に亘っていた。


「地下なんて何処も同じだから、地元でいっか」


 地域については特に拘りはなかった為、優奈は適当に近場に作ることにした。


「次は大きさだけど、これはまだ決められないんだよなー。とりあえず町として必要最低限の大きさは確保して、後は拡張できるようにしておこう」


 町の大きさは、女の子をどれくらい集められるかや何人まで管理かによって変わる為、先に決めることは出来なかった。


 一先ずの大きさを設定すると、シェルター建造に必要な素材が表示される。


「うわ、とんでもない量」


 まだ外郭とインフラ設備の一部だけの分であったが、莫大な数の材料が要求されていた。

 町を一つ作るのだから再構築装置を作るのとは訳が違う。


「流石にこんなには買うお金ないしなぁ。というか、こんな量どこにあるっていうんだ」


 優奈が頭を悩ませていると、そこでヴァルサが声を発する。


「材料は各地に打ち捨てられている廃墟を解体して調達することを提案します。日本各地には手つかずで放置されている建築物が無数にありますので、それらを解体していけば事足りるでしょう」


 廃墟には建物の他、廃車や機械類も放棄されていることもあるので、材料の種類も豊富である。

 優奈を生まれ変わらせることに使った再構築装置も利用すれば、必要な材料はほぼ全て賄えるのだった。


「ナイスアドバイス! 廃墟いいね。それで決定で。じゃあ詳しいことは追々決めるとして、早いとこ取り掛かるとしよう」


 町作りは大掛かりで時間がかかる為、優奈はすぐさま始めることにした。

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