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39話 罰ゲーム禁止

 三人はアスレチック遊具の隣にある休憩所へと移動した。


「鬼ごっこは遊具の中でやるもんじゃねーな。危ねーわ」

「だね。続きは普通に運動場でやろう」

「いや、今日は止めとこーぜ。怪我人出ちまったし」

「私は大丈夫だよ。もう完治するから気遣いご無用」

「あたしが気にするんだよ。あんなとんでもない大怪我見せられてすぐじゃ、気になって真面に鬼ごっこなんてできない。ってか、罰ゲーム自体もう止めようぜ。優奈、張り切り過ぎるから危ない」

「それは、ちょっと短絡的じゃないですかい? 今日は少し失敗しただけだから、そんな止めるなんて言わないでよ」


 優奈の目的は罰ゲームだったので、なくすことだけは絶対に反対だった。


「あたしも止めた方がいいと思うな。優奈が本気出してくるのは面白いけど、怪我しちゃったら台無しだよ」

「え! 美咲ちゃんまで? これからは気を付けるから、止めるなんてしないでよ」


 美咲まで罰ゲーム廃止に賛成したことで、不利を悟った優奈は焦り出す。


「そうは言ってもな。一度でもあんな怪我されたら、どうしても気遣って楽しく遊べないしさぁ」

「もう絶対怪我なんてしないからっ。お願いしますっ」


 どうしても廃止にされたくない優奈は縋るように頼み込む。

 しかし、先程の酷い怪我を目の当たりにした真琴と美咲は、いくらお願いされても意見を変える気にはなれなかった。



 二人が困り果てていると、丁度その時寮から出て来ていた麻衣が、騒ぎに気付いて寄ってくる。


「何? 揉めてるの?」

「あ、麻衣。いやさ、さっき罰ゲーム付きで鬼ごっこやってたんだけど、優奈が張り切り過ぎて骨折しちゃったんだ」

「骨折!? 優奈、大丈夫なの?」


 麻衣は驚いて優奈のことを心配する。


「あ、うん。保健室の先生に治療してもらったから大丈夫。あともう一二分で完全に治るよ」

「へぇ、そんなすぐ治っちゃうんだ」


 すぐに治るとのことで、麻衣は感心しながらもホッと安堵する。


「すげーよな。あたしも怪我治してもらったことあるけど、ほんとすぐ治る。って、それは兎も角として、骨折れたのにまたやりたいって言うんだよ。罰ゲーム付けると張り切り過ぎて危ないから、もう止めようって話になったんだけど、優奈は続けたいみたいで。麻衣からも諦めるよう言ってやってくれよ」

「罰ゲームねぇ……」


 話を聞いた麻衣は、目を細めて優奈を見る。

 続けたがっている理由が、麻衣にはバレバレであった。


「ま、これを機に、もう止めた方がいいんじゃないかしら。色んな意味で危ないから、どの道また大変なことになるわよ」


 麻衣は優奈ではなく、二人に向けたかのように言った。

 廃止派が増え、ますます劣勢となった優奈は唸るしかなかった。


「なぁ、分かってくれよ。いつ怪我するかも分からない遊びなんて面白くないしさ。ずっととは言わないけど、暫くはそういうのは、なしでやろうぜ」

「う……分かったよ。ごめんね、我儘言って」


 激しい抵抗を見せていた優奈だったが、女の子から真摯に説得されては、流石に引き下がらざるを得なかった。


 優奈が折れたことで、真琴と美咲は胸を撫で下ろす。

 これで一件落着であった。



 話が着いたところで、麻衣が優奈に言う。


「ところで、最近よく、その二人と遊んでるわよね」

「うん。友達、沢山作りたいからね」

「ふぅん……。色んな子と遊ぶのはいいけど、付き合い悪くならないでよ」


 興味ない感じの態度をしているが、言葉の内容は自分達との遊ぶ時間を減らしてほしくないとのことだった。

 そんな言葉を投げかけられた優奈は顔をニヤつかせる。


「何? 焼きもち?」

「ち、違うわよっ。何で私が焼きもちなんか焼かないといけないのよ。馬鹿じゃないの。私はただ、付き合い悪いとそれが普通になって、あんまり仲良くなくなっちゃうから忠告しただけっ」


 麻衣は怒って否定するが、言っている意味は大して変わらなかった。

 慕われていることが実感でき、優奈は益々表情を緩ませる。

 だがそれと同時に、先程の言葉を受けて考える。


(でも確かに広く付き合おうとすると、どうしても浅くなりがちになるよね……。これから沢山友達増やしていこうと思ってたけど、あんまり欲張り過ぎるのもよくないかな)


 町を作るからには、移住してきた子全員と交友を深められるくらいになりたいという意気込みだった。

 しかし、それで付き合いが浅くなるのは優奈の望むところではない。

 優奈は今後の交友関係の拡げ方について改めて考えることにする。


 そんな優奈を余所に、美咲が麻衣に言う。


「だったら麻衣も一緒に遊ぶ?」

「え、今? んー……別に良いわよ。何して遊ぶの?」

「まだ決まってなーい」


 誘っておいてまだ何も決まっていなかったことに、麻衣はガクッと身体を落とす。


「だったら服屋行かない? 私、今から行こうと思って外出たのよね。真琴の服、地上で着てたやつでしょ。大分痛んでるから買い替えたら?」


 麻衣は提案ついでに、真琴に衣服の買い替えを勧める。

 真琴が来ている服は上下共に所々が擦れており、大分使い古されているようであった。


 買い替えを勧められた真琴は、微妙に嫌そうに答える。


「あたしのはいいよ。まだ十分着れるから」

「着心地気にならない? こっちで買った服、全然違うわよ。私、こっちの服に慣れたせいで気になっちゃって、地上から持ってきた服、まだ着れるけど買い替えることにしたの」

「それは知ってるけど、あたしは着れれば何でもいいから。別にちょっとやそっと痛んでたって、何の支障もねーよ」


 真琴はアピールするように、その場でスクワットをする。

 だがその時、ビリッと音が鳴った。


「あ……」


 腰を屈めた状態で、真琴は動きを止める。

 スクワットしたことによって、真琴の短パンはお尻のところが大きく裂けてしまっていた。


「ま、まぁ、ちょっとくらい破れてても気にしないし」

「いや、場所的にダメでしょ」


 破れが大きい為、後ろからはパンツが丸見えであった。

 そこで美咲が言う。


「真琴はケチだからねー。もっとボロボロになって紐状態にでもならない限り、買い替えないんじゃない?」

「ケチって……。別にそんなケチじゃないだろ。どっか遊びに行く時は出してんじゃん」

「でも最初は渋るよね。今みたいに」

「……」


 真琴は反論できなくて黙る。

 買い替えを渋っていたのは気にしないからでなく、貧乏性だからであった。


 黙った真琴を麻衣がフォローする。


「私も結構貧乏性だから分かるわ。けど、ここのものはどれも凄く質が良くて激安だから買っちゃうのよね。小遣いは毎月貰えるんだし、ここのは何買っても損しないから、気にせず買っちゃいなさいよ」


 長年の不景気により、女の子達は生まれた時から不景気だった為、みんな大なり小なり倹約的な傾向にあった。

 だが、それでも麻衣や智香のように金欠になるほどお金を使ってしまうのは、それだけ町で売られている品がお得だからである。

 倹約家だからこそ、コストパフォーマンスを重視するのだ。


「うーん……」


 真琴はそれでも尚、難色を示す。

 財布の紐が緩くなった子は多いが、まだお金を使うこと自体に抵抗がある子も中にはいた。


 その様子を見て優奈が言う。


「それなら今着てる服を下取りに出せば? それだけ使い古されてるなら、新品と同じくらいの値段で買い取ってくれるはずだよ」

「何それ。そんなのあんの?」

「初日の案内で説明された時は軽くしか触れてなかったかな。衣服は生活必需品だから、金銭の負担にならないよう使用状態によって高値で買い取ってくれるんだ。お洒落でコロコロ下取りに出そうとすると、安値でしか買い取ってくれないけど、ちゃんと大切に長く使ったものなら高値で買い取ってもらえるよ」


 衣服に限り、地上とは逆の査定基準で買取を行っていた。

 この町では女の子達の衣食住が保障されている。

 お洒落の為に頻繁に買い替えるのは贅沢に当たるが、普通に着る分なら必要経費として、実質無料で買い替えることができるのだ。


「へー、だったら買い替えようかな」


 お金が殆どかからないと知り、真琴は買い替える気になった。


「私もそんなのがあったなんて知らなかったわ。せっかくだから今着てるの下取りしてもらおうかしら」


 麻衣も下取りに興味を示すと、優奈は透かさず麻衣の着ている衣服に目を向け、鑑定をする。


「うーん、麻衣ちゃんのはまだ結構綺麗だから、あんまり高くはないと思うよ」


 麻衣の衣服は特に傷んでいる様子もなく、まだまだ着れる状態であった。


「やっぱり? でも、元々買い替えるつもりだったから安くても諦めるわ」

「もうちょっと使用感出してからにしてほしいんだけどなぁ」

「何で優奈がそんなこと気にするの? 高く売れても奢らないわよ」

「あ、いや、他人のことでも勿体ない気がして。あはは……」

「優奈もなかなかの貧乏性ね。私も勿体ないのは分かってるけど、もう着る気になれないから仕方ないわ」


 麻衣は元々処分するつもりだったので、少しでも貰えるだけ良しとしていた。

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