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38話 骨折

 平日の放課後。

 小学校の端にあるアスレチック遊具の中では、優奈と真琴、美咲の三人が駆けまわっていた。


「捕まえたっ」


 優奈が下品な笑みを見せながら、真琴の背中に抱き付く。


「うわ、やられた。またあたしが鬼かよー」

「ふふふ、頑張って捕まえてね」


 優奈はさりげなく真琴の背中に頬ずりしてから離れる。

 三人は他に人がいないのをいいことに、アスレチック遊具の中で鬼ごっこをしていた。


「くそー。優奈は逃げるの遅いのに、何で追いかけるのだけは早いんだよ」

「熱意の差かな」

「何じゃそりゃ。鬼でいるのは嫌だから、本気出してるってこと?」

「そうそう、そんな感じ」

「だったら逃げるのも頑張れよ」

「手は抜いてないつもりなんだけどなぁ」


 鬼の時は不審に思われることなく抱き付ける為、本気を出した優奈は潜在能力を解き放つが如く、運動が得意な二人を凌駕するほどの実力を発揮していた。

 だが、逆に逃げる時は頑張れば頑張るほど触れ合えなくなるので、どうしても本気にはなれなかった。


 そこで遊具の上から、美咲が顔を出す。


「じゃあまた罰ゲームつける? 罰ゲームつけると優奈やる気出すでしょ」

「おっ、それってまた何でも言うこと聞かせられるっていう?」

「そそ」

「おおお、是非つけましょう! 俄然やる気出てきた……!」


 優奈は俄然燃え上がる。

 餌があるなら本気を出すのは容易であった。


 あからさまにやる気を見せる優奈に、真琴が訊く。


「優奈って罰ゲームつけたら、すげーやる気出すけど、あたしらに勝ったら何やらせたいんだ?」

「え? うーん……まだ決めてない」

「決めてないよかよっ」


 真琴はガクッと身体を落とす。

 優奈は何でも言うことを聞かせられるというだけで夢が広がり過ぎて、簡単には決められなかった。


 そして美咲が言う。


「そいじゃあ、鬼になった回数が一番少ない人が勝ちね」

「おけ」「了解」

「よーい、スタート」


 美咲が始まりの合図を出した。

 直後、真琴が隣りにいた優奈の肩を触る。


「はい、タッチー」


 すぐ隣だった為、優奈は逃げる間もなかった。

 鬼を移した真琴はすぐに背を向けて逃げる。


「ちょ、そんなのあり?」

「優奈、鬼一回なー」


 真琴はそう言いながら駆けていく。


「くっ」


 優奈は慌ててその背を追い始める。

 鬼になった回数で勝敗が決まる為、初っ端からの失点は非常に痛かった。


 失点を巻き返すべく、優奈は全力で真琴を追う。


「うおおおおお」


 本気で勝ちを取りに行こうと、力を振り絞って走る。

 前回の泳ぎの競争では大差で負けた優奈だが、今回は十分な勝算があると見ていた。


 先程までの鬼ごっこでは、逃げるのは兎も角、捕まえるのは優奈の方が勝っていた。

 欲望を逃げる方にも向ければ、十分勝てる見込みがあるのだ。



 優奈が真琴を追いかけていると、別で逃げていた美咲の近くを通りがかる。

 逃げる真琴より距離が近いと判断した優奈は、透かさず標的を切り替えて美咲の方へと走り出す。


「うわっ、こっち来た」


 向かってきた優奈を見た美咲は慌てて逃げる。


「おおおおお」

「優奈、本気出し過ぎ。怖いよー」


 真顔で全力疾走してくるその姿は恐怖以外の何者でもなかった。


「捕まえてやるー」

「わー」


 その光景はまるで、なまはげに追いかけられているような様子であった。

 優奈が美咲の背に向けて手を伸ばす。


「あと少し……あと少しで追いつくぞー……と、見せかけて!」


 美咲を追っていた優奈は急に方向転換し、近くで様子を伺っていた真琴の方へと飛び掛かった。


「うおっ」


 突然飛び掛かってきた優奈に驚く真琴。

 だがその直後、優奈の腕がアスレチック遊具の金属棒に当たる。

 飛び掛かった勢いで強く打ち、金属音が鳴り響く。


 腕を打った優奈は、ぴたりと動きを止めた。

 その音で足を止めた美咲は優奈を見て固まる。

 真琴も逃げ出そうとはせずに、優奈を見ていた。


 時が停まったかのように静寂が流れる。

 二人の視線の先、優奈の腕は間接ではないところが思いっきり曲がっていたのだった。


 自分の腕を見た優奈は、腕を軽く上げて言う。


「……やっちゃいました」


 すると、二人は水を打ったように騒ぎ出す。


「うわああああ! 大変だー!」

「どどどどうすんだよ。完全に折れてるじゃん! 保健室!? 病院!?」


 完全に折れた腕を目の当たりにして、二人は大慌てであった。

 反対に優奈は冷静に言う。


「あぁ、大丈夫。保健室の先生呼ぶから」


 そう言うと、優奈は遊具の周辺で作業をしていた清掃ロボットに向けて声を上げる。


「すみませーん。怪我したんで保健室の先生お願いします」


 優奈が声を掛けても、清掃ロボットは反応を示さず掃除を続ける。

 だがその時、小学校校舎の保健室の外扉が開かれ、養護教諭ロボットが出てきた。


 養護教諭ロボットは素早い動きで、すぐに優奈達の下に駆けつける。

 そして即座に優奈の腕の治療を始めた。


 養護教諭ロボットがその腕にスティックを押すと、優奈は腕の痛みが瞬く間に消える。

 次に折れた腕の角度を垂直に戻し、そこに湿布のような物を巻き付けた。


「処置完了です。今、ナノマシンが骨の修復を行っているので、十五分は腕を動かさずに安静にしてくださいね」

「はーい」


 あっという間に治療の処置を終え、養護教諭ロボットは保健室へと帰って行った。


「じゃあ続きやろっか」

「できる訳ねーだろっ」

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