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28話 写真撮影

 休日の昼下がり。

 寮のラウンジに麻衣と優奈の姿があった。


「見て見て、これ買っちゃった」


 麻衣は自慢げに、レンズのついた少し分厚いカードの形をした物を優奈に見せびらかす。

 それは町で販売されている携帯カメラであった。


「カメラ買ったんだ。いいね」

「でしょー。スマホないから、ちょっと写真撮りたいと思っても撮れなくて不便だったのよね。デジカメだから写真と映像しか撮れないけど、凄く小さいから、いつでも持ち歩けるわ」


 麻衣はそう言って携帯カメラを胸ポケットに入れてみせる。

 文明レベルとの兼ね合いで、それほど革新的な性能ではなかったが、それでも現代のものよりは、ずっと使い易い仕上がりとなっていた。


「あぁ、だから最近カメラ買ってる子をよく見かけるんだ」

「スマホ持ってた子は買うわよね。最初から持ってなかった人には、この不便さは分からないわ」


 小学生である女の子達はスマホを持っていても、持ち始めて然程経ってはいない為、中毒になっているような子はいなかった。

 だが、突然没収されるような形となったせいで不便さは感じていたのだ。

 その為、携帯電話の機能の一部であるカメラが、女の子達の一部で人気となっていた。


「せっかく買ったんだから優奈の写真撮ってあげるわ」

「お、いいよ。可愛く撮って」


 麻衣がカメラを向けると、優奈は全く嫌がることなく乗り気でポーズをとる。


「ナルシストめ。これでほんとに可愛い顔してるからムカつくわ」


 麻衣は文句を言いながらも、優奈を写真に撮る。


 美醜の基準は時代や地域によって移り変わるものだが、遺伝子から設計された優奈の身体は完璧に整った造りになっているので、世間一般で言う美人に十分該当していた。


 文句を褒め言葉として受け取った優奈はお返しに言う。


「ありがと。麻衣ちゃんも可愛い顔してるよ」

「何言ってるの。私は普通よ、普通」

「謙遜しなさんな。めっちゃ可愛いよ。思わずチューしたいくらい」

「それは止めて。この前のことがあるから冗談に思えないわ」


 先日の友人同士のキスは、麻衣の頭に強く焼き付いてしまっていた。

 酔っぱらったことでの事故とはいえ、小学五年生の女の子には刺激が強過ぎる出来事であった。


「冗談じゃないよ。マジで言ってる、マジで」

「怖いから。もう一緒に遊ばないわよ」

「嘘です。冗談ですから、これからも一緒に遊んでください」


 もう遊ばないと言われた優奈は発言の即時撤回を行った。

 その変わり身の早さに麻衣は呆れる。


「まったくもう……」


 呆れてはいたが、その表情には笑みが含まれていた。

 感性がずれていたり変態的なところはあっても、どこか憎めないと思っていたのだった。



「ねぇ、今度は私が撮ってあげる」

「いいわよ。変な風には写さないでね」


 麻衣は優奈に携帯カメラを渡す。

 受け取った優奈は、携帯カメラを麻衣に向けて構える。


「勿論。ばっちり可愛く撮ってあげるからね」


 麻衣をフレームに収め、撮り始めた。

 一度では終わらず、角度を変えながら何枚も写真を撮る。


「結構撮るわね……」

「可愛いから沢山撮っちゃう。現像、じゃなくて、プリントしたら頂戴」

「えー……ま、別にいいけど」


 麻衣は素っ気なく返事をしつつも、顔を僅かに緩ませる。

 優奈が本気で可愛いと言ってくれていることは分かるので、悪くない気分であった。


「ほらほら、そんな棒立ちした格好だけじゃなくて、ポーズとってみてよ」

「ポーズ? こう?」


 気を良くしていた麻衣は素直に従い、腰に手を置いてモデルのようなポーズをとった。


「いいよ、いいよ。その調子でどんどんポーズとっちゃって」


 優奈が要求すると、麻衣は言われるがままに色々なポーズをとっていく。

 最早二人は遊び感覚でやっていた。



 様々なポーズをとり、続けてソファーの上で片膝を立てて座る。

 その時、麻衣のスカートの隙間から中が見えた優奈は声を上げる。


「ちょっとちょっと、何で短パンなんか履いてるの!?」

「え? 何でって、スカート捲れてもパンツ見えないようにだけど?」


 普段からスカートを主に履いている麻衣であるが、下に履き込まないことはなく、いつもスパッツなどで下着が見えないようにしていた。


「別に見えてもいいじゃん。ここには女子しかいないんだから」

「いなくても恥ずかしいじゃない。色、白だし」

「全然恥ずかしくないって。脱ごうよ」

「嫌よ。優奈がパンツ見たいだけでしょ。変態」

「違う、違うよ。パンツなら、いつもお風呂入る時に見てるじゃん。これはファッションの問題なんだよ。スパッツやタイツならまだ分かるけど、短パンはないよ。ダサすぎる」


 優奈のファッションセンス的に、スカートの下に普通の短パンを履き込むことはNGであった。

 お洒落に気を使う方である麻衣は、ファッションとして率直にダメ出しされて怯む。


「う……わ、私もちょっと迷ったけど、今日は少し暑かったから」


 今の季節は初夏であるので、町の温度もそれに合わせて少しばかり暑さを感じる気温となっていた。

 過ごし易い気温であるが、下にスパッツなどを履き込んでいては余計に暑さを感じてしまう。

 日々、徐々に気温が上がっていく中、今日は流石に暑くて麻衣は丈の短い短パンを選ばずにはいられなかった。


「だったら履かなければいいじゃん」

「それだと見えちゃうじゃない」

「だから見えていいんだって。誰も気にしないから、その恥じらいは全くの無意味だから。智香ちゃんだって普通にそのままスカート履いてるよ」

「智香は……めんどくさいから履いてないだけだと思うわ。あの子、根はズボラでしょ」


 先日の一件以来、二人は智香の隠れた一面が目につくようになった。

 普段は品行方正の智香であるが、自室など他人に見えないところでは、とことんまでダラけていた。

 今も昨日の夜更かしのせいで、自室で睡眠中である。


 お酒を控えるようになっても、夜更かし癖は治らなかった。

 以前の生活ではそのようなことはなかったが、一人で自由に過ごせるようになったことから、これまで真面目に努めてきた反動で人一倍怠けるようになったのである。


「ま、まぁ、それは智香ちゃんは別にしても、他にも履き込んでない子多いから。美咲ちゃんや私とかね。麻衣ちゃんはパンツが見えることは恥ずかしいと思ってるみたいだけど、だったら何でパンツに絵柄や装飾がついてるの? ずっと隠してるなら、何もつける必要ないじゃん」

「……確かにそうね」

「パンツは見せるものなんだよ。だから恥ずかしいことなんてないし、逆に見えることの良さというものもある」

「良さって何よ」


 麻衣は訝しげな目で優奈を見る。


「一概には言えないけど、そうだね……。例えば、そこら辺でパンツが見えてる子がいるとするじゃん。同性でも、つい視線が行っちゃうってことない?」

「んー、まぁ見えてたら気になるわね」

「そう、普通見ちゃうんだよ。自分には関係ない赤の他人でも。男も老婆がパンツ出したりしてると、全然見たくなくても目が行っちゃうらしいよ」

「え”、そうなの?」

「うん、邪な気持ちが一切なくてもね。パンツを見せること、所謂パンチラには好み趣向関係なく、不思議と人を惹き付ける力があるんだ。

ファッションは他人に見せるものだから、これを利用しない手はない。

上手くパンチラさせることで、それがテイストとなり、人々の視線も集められる。

そうすれば、今のファッションを何倍も魅力的に見せることができるんだ。

パンツが見えてることは決して恥ずかしいことでもなんでもない。ファッションをより引き立たせるテクニック。

そう、パンチラはファッションテクニックの一つと言えるんだよ」

「そ、そういうものなの?」


 滅茶苦茶な理論であったが、熱く語る優奈に麻衣は思わず気圧される。


「麻衣ちゃんは結構お洒落に気を使ってるよね。なら、そんな無粋なものは脱ぎ捨てなよ。不要な羞恥心とダサい短パンを捨て去り、ワンランクアップしたお洒落な麻衣ちゃんを見せて」

「……そうね、お洒落するなら可愛く見えた方がいいわよね」


 優奈に唆され、麻衣はスカートの中に手を入れて短パンを脱ぎ去る。

 麻衣は半ば混乱状態であった。


「いいね。可愛くなったよ」

「そうかしら?」


 見た目は何も変わらなかったが、麻衣は満更でもない表情であった。


「それじゃあ、見えるように、くるって回って」

「えー、ちょっとだけだからね」


 麻衣は渋るポーズを見せつつも、嫌がることなく、その場で勢いをつけて回転をする。

 すると、遠心力によってスカートが舞い上がった。


 一瞬、白のパンツが曝け出されたところで一周回り切り、スカートによって再び隠される。


「どう?」


 感想を求める麻衣に対して、優奈はサムズアップする。


「ばっちり見えたよ。凄く良かった」

「そう?」


 麻衣は嬉しそうな表情を見せる。


「じゃあ次は自分で捲って見せちゃおっか」


 調子に乗った優奈は、より大胆な要求をした。

 しかし、混乱していた麻衣は躊躇する素振りも見せずに、スカートの裾を摘まんで持ち上げる。


「こんな感じ?」


 持ち上げられたスカートの下からは、股の部分の布地が見えていた。

 引き締まった太腿とクロッチの線によって、綺麗な逆三角形ができている。


「素晴らしい。最高だよ。でも、もっと思い切って上げちゃってもいいかな。そのまま上げてって」

「分かったわ」


 言われるがままに麻衣はゆっくりとスカートを上げていく。

 ピンクのパンツがどんどん露わになって行き、やがてパンツ右上側のプリントまで見え始める。


「おっ、プリントが見えてきたよ。何かな。兎さんかな?」


 プリントの下部には白い動物の足らしきものが見えていた。


「今日のは、ちょっと子供っぽいやつだから恥ずかしいわ」


 そう言いつつも、麻衣はスカートを上げる手は止めない。

 徐々にスカートは上がって行き、デフォルメされた可愛らしい兎が姿を現す。


「わ、可愛い兎さんだ。麻衣ちゃんらしい、いいセンスだね」

「そうかしら」


 パンツの絵柄を褒められ、麻衣は照れ笑いをした。

 だがその時、ラウンジの前を美咲が通りがかる。


 麻衣の方を見た美咲は驚いて声を上げた。


「うわ! 変態だー!」


 スカートをたくし上げて自分のパンツを見せつけていた麻衣の姿は、傍から見たら紛れもない変質者であった。


 美咲のその声で自分がやっていたことを今更ながら自覚した麻衣は、すぐさまスカートを下げて押さえる。

 そして真っ赤な顔になって優奈を睨み付けた。


「優奈ぁー!」


 騙されていたことに気付いた麻衣は、優奈に怒りをぶつけたのだった。

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