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20話 クラスメイト

 二人はガチャガチャと筐体のレバーを動かす。

 戦況は均衡しており、白熱した戦いとなっていた。

 だが、それによって戦いが長引いていて、見ているだけだった優奈は退屈そうにしていた。


 暇を持て余した優奈は二人に言う。


「まだ時間かかりそう? ちょっとそこら辺見てきていい?」

「いいわよー」


 許可を得た優奈はビデオゲームコーナーから離れる。

 適当に見回しながら店内を徘徊していると、入り口近くのダンスゲームで遊んでいる子が目に入った。


 その子は初日以来よく真琴と行動を共にしている岩田美咲であった。

 美咲はダンスゲームで楽しそうに踊っている。

 その姿を見た優奈は思わず足を止めた。


 激しく踊る美咲。

 その動きに振り回されるように、美咲の胸が激しく揺れていたのである。

 美咲の体格は平均よりも少し大きい為、胸も小学五年生にしてはある方であった。

 それにも拘らず、ブラをしていないようで、胸は水風船が揺れるように暴れ回っている。

 本人はそんなことなど気にする様子もなく、楽しそうに踊っていた。


(これはこれは……)


 大きさはどうであれ、胸単体には然程興味はなかった優奈だが、そのあまりに自己主張してくる胸に注目せざるを得なかった。


 優奈はそのままを舐めるように美咲の全身を見回す。


 美咲はTシャツにハーフパンツというラフな格好であった。

 サイズがぎりぎりのようで、全身ぴっちりとしていて衣服の上からでも体格がはっきりしていた。


(スタイルの良い身体だなぁ。顔も結構良いし、モデル系の子だね。美しいけど、その中に可愛さも含まれていて凄く魅力的。最高)


 優奈は美咲の身体をじっくり眺めながら、心の中で論評していた。

 だがその時、後ろから唐突に声を掛けられる。


「おっ、優奈も来てたんだ」

「うひゃ!?」


 優奈が驚いて振り向くと、そこには真琴の姿があった。


「脅かしちゃった? ごめんごめん。そんなところで突っ立って何してたん?」

「えっと、美咲ちゃんの踊りが上手いから、ちょっと見てたんだ」

「あぁ、上手いよな。最初あたしも一緒にやってたけど、ついていけなくて諦めたんだ」

「そうなんだ」


 そこで踊っていた美咲が二人に気付く。


「あれー? 二人とも何やってるの?」

「優奈が美咲の踊りが上手いから見てたんだって」


 気付かれたため、真琴と優奈の二人は美咲の前へと移動する。


「御静聴ありがとうございまーす。優奈も一緒にやる?」

「いや、私そういうのやったことないから」

「大丈夫、大丈夫。初めてでもフィーリングでできるから。あたしもこれやったの今日が初めてなんだよ。ね、一緒にやろ?」


 美咲は一緒に遊んでほしいと言わんばかりに、優奈を誘う。


「んー、じゃあちょっとだけ」


 少女に求められては断ることなどできなかった。



 優奈は美咲の隣の台に乗り、一緒にダンスゲームをスタートする。

 二人は画面の見本映像に合わせて踊りを始めた。


「ほっ、ほっ、ほっ……」


 優奈はぎこちない動きで身体を動かす。


(踊りなんてしたのは小学生の時のお遊戯以来かぁ。正直、気恥ずかしいし、やる意味が分かんなくて好きじゃなかったんだよね。けど、女の子として踊るなら可愛らしくていいかも)


 優奈はちらりと横の壁に張り付けてある鏡を見る。

 そこには拙いながらも、可愛らしく踊る自分の姿が映っていた。


 優奈は鏡を意識しながら振り付けを行う。


「こうっ、こうっ、こうっ、で、こうっ」


 見栄えを重視で、表示にないオリジナルのポーズまで付け加える。


「おー。優奈ノリノリだねー」

「でも、ズレてるからHP思いっきり減ってってるぞ」


 踊りだけでなく画面も見ていた真琴が指摘した。


「え、嘘!?」


 優奈の画面ではミスの表示が連続して出ておりゲージががみるみる減少していた。

 ゲージが全部なくなればゲームオーバーである。

 ゲームオーバーになると強制終了されてしまうので、優奈は慌てて真面目に踊り始めた。



 そして程なくして一曲が終わる。


「ふぅふぅ……何とか最後までできた」

「次、どの曲がいい?」

「いやー、私はもう止めておく。こんなの続けてたらすぐへばっちゃう」

「えー、優奈軟弱ー」


 たった一曲であったが、優奈は巻き返すことに必死で、体力をかなり使ってしまい、既に息を切らせていた。


「じゃあさ、次これやろうよ。三人の中で一番強かった人は、他の人に何でも一つ命令できるってことで」


 美咲はパンチングマシーンを指して言った。


「何でも!? やるやる! めっちゃやる!」


 優奈は全力で誘いに乗る。

 少女に何でも言うことを聞かせられるというのは、優奈にとってあまりにも魅力的な話であった。

 だが、真琴の方は表情を曇らせる。


「あたしはパス」

「えー、やらないの?」

「そういうゲームあんまり好きじゃないんだよ。やるなら二人でやって」


 真琴は参加を拒否した。

 しかし、美咲は食い下がる。


「人数多い方が盛り上がるじゃん。ちょっと叩くだけだからやろうよ」

「そうそう、すぐ終わるからやっちゃいなよ。軽くでもいいからさ」


 食い下がる美咲に優奈も加勢する。

 その言葉には欲望が薄らと滲み出ていた。


「軽くだとあたしが負けるじゃねーか。三人で勝負するなら他のにしようぜ」

「私は別に勝負できるなら何でもいいよ。格ゲーと音ゲー以外なら」


 優奈的には勝負の内容は何でも良かった。

 だが勝つことが前提だったので、さりげなく自分に勝ち目の薄いジャンルは省くよう言った。


「他のにするのー? あたし、これやりたかったのにぃ」


 美咲が不満を言う。

 パンチングマシーンをやろうと言い出した本人である為、やはり他のものに変えられるのは不服であった。



 その時、奥から麻衣と智香の二人がやってくる。


「あら、ここで遊んでたの?」

「わ、何そのお菓子の山」


 美咲は麻衣が両腕にぶら下げていた駄菓子が入っている袋に食いつく。


「あ、これ? そこのやつで何か大量に取れちゃったの。これからこのお菓子食べながら少し休憩しようと思ってたけど、二人も一緒する?」

「「するー」」


 麻衣の誘いに、二人は即答した。

 優奈は勝負する話が流れる予感がしたが、駄菓子に目を輝かせている二人を止めることはできなかった。

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