表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/112

18話 自己確認

 廊下に出た優奈は、すぐさま隣の視聴覚室に駆け込んだ。

 そして誰もいないその教室で声を上げる。


「ヴァルサ! 男のホログラムを年齢別に、いくつか出して」


 すると、すぐに教室内に何人もの男性の姿が現れた。

 少年から老爺まで、様々な年代の立体映像が揃っている。


 優奈はそのうちの一つである少年のホログラムに近づく。

 そして抱きしめるように手を回して頬を寄せた。

 数秒で離れ、優奈は自分の腕を確認する。

 すぐに腕を戻すと、続けて隣のホログラムにも同じことを行う。


 その繰り返しで全てのホログラムを周った。

 そして最後に優奈は再び自分の腕を確認する。

 その腕は鳥肌で一杯であった。


「よし、大丈夫。男に魅力なんて感じてない」


 身体の反応から、男を好むようになるという最悪の事態には陥ってないことが分かり、優奈は心底安心した。

 一連の行為は性的趣向が変わっていないことを確認していたのである。


「私は少女が、女の子が好き。男なんて何とも思わない……」


 優奈は心が変わらないよう、自己暗示するように自分に言い聞かせる。

 身体や趣向が変わってしまっても、その理想とする心、少女への愛だけは曲げたくはなかったのである。


「以前の自分とは別人であっても、私は今の私として楽園を完成させる」


 誰に言う訳でもなく一人宣言した。


 そしてホログラムを消して家庭科室へと戻った。




 優奈が戻ると、家庭科室では変わらず女の子達が自分の作った料理を食していた。

 そこで調理実習を行うことにした目的を思い出す。


 自分の席に戻った優奈が、麻衣と智香の二人に言う。


「ねぇねぇ、おかず交換しない?」


 女の子達の料理は大分食べ進められている。

 これが優奈の一番の目的であったので、このまま食べ終わらせる訳にはいかなかった。


「いいよ」


 智香は快くオッケーを出した。

 だが、麻衣の方は難色を示す。


「私は二人みたいに上手くできてないからちょっと……」


 智香に手伝ってもらっていたものの、大半の部分は麻衣自身が作っていたので、二人のものと比べると不出来な部分が多かった。


「大丈夫、大丈夫。ちょっとくらい悪くても気にしないから」

「私が気にするのよっ」

「そう? そこまで酷い出来じゃないから、気にする必要なんてないのに」


 優奈が麻衣の料理を見る。

 そのハンバーグは多少不恰好な形ではあるが、特別酷いと言うほどのものではなかった。

 家庭の食卓にでてきたとしても十分許容される出来である。


「それでも比べられるのは恥ずかしいじゃない。私は遠慮しておくから、交換は二人でやってちょうだい」

「え、ほんとに交換しないの?」

「今回は止めておくわ」

「そんなぁ」

「何でそんなに残念がるのよ。別に私が入らなくたっていいじゃない」

「麻衣ちゃんの手料理が食べたいんだよぅ」


 優奈は本音を曝け出して言った。

 その言葉に麻衣は笑う。


「ふふっ、何よそれ」

「味とか関係なく、手料理ってのは価値があるんだから」

「よく分かんないけど、そんなに食べたいの?」

「はい。麻衣ちゃんの手料理、プライスレスです」

「益々、訳分かんないわ……。でも、そんなに食べたいなら仕方ないわね。交換してもいいわよ」


 優奈に切望され、麻衣は折れた。

 満足のいく出来ではなかったが、自分が作った料理をそこまで欲しがられるのは悪い気分ではなかった。



 三人はそれぞれ料理を一部分だけ切り分けて交換する。

 優奈は二人の料理を得て、満面の笑みを見せていた。


「それではっ、まずは智香ちゃんのオムライスからいただきます」


 優奈はニコニコ顔で智香のオムライスを口へと運ぶ。

 そして幸せそうに噛み締め、じっくりと味わってから口を開く。


「うん、美味しい! 是非ともお嫁に欲しいね」

「あはは、ありがと」


 智香は冗談だと思って笑ってお礼を言うが、優奈は至って本気であった。


「じゃあ、次は麻衣ちゃんのだね」

「ほんと微妙だから期待しないでよ」

「大丈夫、分かってるって。じゃあ、いただきますっ」


 優奈が麻衣のハンバーグを口にする。

 智香のオムライスを食べたと同じように幸せそうに噛み締める。

 その笑顔は一瞬たりとも崩れることはなかった。


「うんうん、いいよ。十分美味しいじゃん」

「本当に? 無理に気を遣わなくてもいいのよ?」

「気なんて遣ってないって。ちゃんと美味しいよ。智香ちゃんのと比べたら流石に差はあるけど、初めてでこれなら十分過ぎるほど評価できる」

「そ、そうなんだ。良かったわ……」


 麻衣は胸を撫で下ろす。

 手放しで持ち上げるのではなく、あくまで初めての料理として評価してくれた為、納得して受け入れられたのであった。


「味もそうだけど、これが麻衣ちゃんの初めての手料理って思うと感慨深いね。ほんと食べれて良かった。感動しちゃう。ていうか好き。私のお嫁になって」


 テンションがずっと高いままだった優奈は、勢いで麻衣にも求婚する。

 そんな優奈の姿に、麻衣は先程までの不安がすっかり吹き飛んでしまい、晴れやかな表情となっていた。


「料理なら優奈の方が上手じゃない。それなら私が優奈をお嫁にしたいくらいよ」

「え! それは是非っ」

「じゃあ式場どこにしましょうか」


 麻衣は優奈の話を合わせて冗談を返して話を続ける。

 本気には思われていなくても、優奈はそのやり取りだけで十分満たされていた。

 それを智香は横で微笑ましく見る。


 他の子達もそれぞれ楽しく雑談をしており、みんなは和やかに昼食の一時を過ごした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エロゲー版『作ろう! 無知っ娘だけの町 プラス無限ダンジョン』FANZAにて好評発売中。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ