14話 優奈の隠し部屋
深夜。
女の子達が寝静まり、寮は静寂に包まれていた。
優奈の部屋では、床に並べられた布団の上で、麻衣と智香が寝息を立てている。
だが、その横のベッドに優奈の姿はなく、空の状態であった。
部屋に備え付けられていたクローゼットの中。
そこには他の子の部屋にはない隠し扉があった。
扉の先には隠し部屋が作られており、その部屋には沢山のモニタが設置されていて、画面には日中の町の様子が映し出されている。
そのモニタの前に優奈の姿があった。
椅子に座ってモニタを見る優奈は、パジャマに下はパンツ一枚の姿であった。
その手には布状のものを持っており、押さえつけるように鼻に当てている。
そしてもう片方の手も、股の間に挟み、そちらも押し付けるようにしていた。
「うん、特に問題は起こってないね」
優奈は今日の女の子達の動向を確認していた。
確認をしながら、優奈は布を当てた鼻から息を吸い込む。
その布の端には”ともか”という文字が書かれていた。
優奈が今履いているパンツにも端に”まい”と書かれている。
そう、それは二人のパンツであった。
それだけではない。
優奈の横には籠一杯のパンツが盛られている。
これは女の子達が今日履いていたパンツであった。
町は優奈の支配下である為、洗濯に出したものを回収することなど簡単なことである。
バレることはないので、優奈は洗濯前に、一服の清涼剤として楽しませてもらっていた。
「初日だから溶け込めてない子もいるけど、後悔してたり帰りたがっている様子はなさそう」
未完成の状態での受け入れの為、優奈は上手くいくか不安であったが、今のところ目立った問題は出ていなかった。
「しかし、みんな思っていた以上にしっかりしてるなぁ。私が子供の頃なんてこんな自立してなかったぞ。やっぱり親に頼れない環境だったからなのかな」
大人がいない新しい環境であるが、女の子達は一人でも立派に生活していた。
今回、町に来た女の子の多くが、親がいなかったり当てにならなかったりと、自分で何とかしないといけない環境で生きていた為、全体的に自立心が高い傾向にあったのだ。
中でも特別素行がいい子を集めたということもあって、誰かが問題を起こすこともなく、皆素直に新しい生活を受け入れている。
「それがいいことなのか悪いことなのか分からないけど、町の運営としては順調ってことでいいよね。当面はみんなと仲良くすることに専念して、状況を見て次の受け入れを決めるってことにしようか」
そこまで言ったところで、大きな欠伸をする。
「ふわぁー……。私もいい加減寝ないと」
睡眠時間が少ないと明日に支障が出るとのことで、優奈は確認作業を切り上げて寝ることにした。
パンツを履き替え、着ていたパジャマを整えてから隠し部屋を出る。
優奈の部屋では変わらず麻衣と智香が眠っていた。
二人は布団であるが、家主の優奈が寝る場所は端のベッドである。
ベッドを一度見た優奈は再び布団で眠る二人を見る。
「こっちで寝ちゃおっと」
そう言い、並ぶ二人の布団の間に潜り込んだ。
二人に挟まれ、優奈は幸せな気分になる。
(今日はいい夢見られそう)
優奈は目を閉じ、眠ろうとする。
「ぅぅ……」
だがそこで、隣の智香から小さく唸り声が聴こえてきた。
優奈が視線を向けると、智香は呟くように寝言を言う。
「お母さん、私もっとしっかりするから……」
「……」
朝。
天井のパネルによって映し出された朝日が、町を照らしていた。
窓から差し込む日差しで優奈が目を覚ます。
「んんーっ」
身体を起こして背伸びをする。
その声で、窓から外を見ていた麻衣が振り向く。
「あ、起きた? 優奈、何でこっちで寝てたのよ」
「え、あ、それは……ちょっと寝ぼけて」
「起きた時、真横に居たから吃驚したわよ」
「ごめんごめん」
話に区切りがつくと、麻衣は再び窓の外へと視線を戻す。
「何見てるの?」
「ん? 商店街。優奈も見る? 昨日よりお店、大分増えてるの。建てるの凄い早いから、見てて面白いわよ」
寮の窓からは商店街を見下ろすことができた。
商店街の奥の方では、作業ロボット達が忙しなく建設作業を行っていた。
その作業速度は非常に早く、出来上がっていく様子が目に見えて分かるので、傍から見て楽しいものであった。
現在、ロボット達は商店街の開発に力を注いでいる。
凄まじい速度で店舗が増えているが、店で扱う商品の大半は一つの製造機によって掛け持ちで作られており、その生産速度は現代では考えられないほど早い為、いくら店舗や扱う品数が増えても支障はなかった。
そこで部屋の扉が開き、智香が中に入って来るが、半分布団に入っていた優奈の姿を見て驚く。
「優奈ちゃん、今起きたの? もう先生迎えに来るよ 急いで支度しないと」
言われて優奈は時計を見る。
時刻は八時四十分を周っていた。
優奈は慌てて布団から飛び起きる。
「げ、やばっ。麻衣ちゃん教えてよっ」
「ごめん、商店街見るの夢中で気付かなかった。というか、私も支度しないとっ」
優奈と麻衣は慌てて支度を行った。