表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

112/112

エピローグ

 文化祭が終わり、町では女の子達が変わらぬ日常を送っていた。

 そんな中、麻衣は買い出しで一人、商店街を歩く。


 普段、何気なく利用していた商店街だが、真相を知った後では色んなところが目につく。

 高品質低価格の商品やサービス、便利で利用し易い店舗。

 細かいところを見ても、利用者のことを第一に考えて作られていることが分かる。

 愛があるからこその拘りようだった。


(寮のお風呂を大浴場にしたのは、単に裸が見たいだけだと思うけど)


 所々に下心も見えるが、全体的に見れば非常に良い町だった。


「あ、可愛い」


 通り掛かったお店で、麻衣は美しいデザインの宝石入れを発見した。

 だが、値札を見て固まる。

 町の商品にしては、かなり高い。


 宝石の原石は自然公園の山にタダで落ちているものだったが、ある程度の大きさになると、趣向品として高価な設定で販売されていた。

 その宝石を入れる物であるので、値段もそれ相応の価格がつけられている。


(欲しい……)


 しかし、万年金欠の麻衣にとっては厳しい金額である。

 優奈にお願いすればタダで手に入るという考えが頭に浮かぶが、麻衣は必死に掻き消す。


(ズルはダメだわ。買うなら自分で貯めた、お金じゃないと)


 裏の支配者である優奈にお願いすれば、いくらでも融通してくれる。

 だが、曲がったことは嫌いな麻衣は甘えることは出来なかった。



 麻衣は宝石入れを諦めて先へ進む。

 すると、先にある本屋の前に人だかりが出来ていた。

 下級生達が来たとは言え、人口密度の低いこの町では珍しい光景である。


 何かと思った麻衣が覗いてみると、そこには優奈のCDやポスター、写真集などが積まれて販売されていた。

 麻衣は原因がわかり、ゲンナリする。

 今日は優奈の出すグッズの発売日だった。



 文化祭でファッションショーやライブに参加し、注目を浴びた優奈。

 歌も上手く、その完璧に設計された造形から憧れる子も出てきた。

 それに気を良くした優奈は調子に乗って、自分の写真集やカバー曲を出すことにしたのである。

 普通なら黒歴史になるが、ズバ抜けた美貌と町の編集力のおかげで、どれも完成度の高いものとなっていた。


(いくら美人でも、よくあんなのを売り出せるわね……)


 何とも言えない気持ちで眺めていると、同じような顔をしてグッズを見ている未久と結衣を見つける。

 隣には希海も居た。


「あ、どうも」


 麻衣の姿に気付いた未久達は会釈をする。

 町の真相を知ってから、四人の間に妙な連帯感が生まれていた。


「二人とも、ずっと迷ってるんだよ。欲しかったら買えばいいのに」


 希海が痺れを切らしたように、麻衣に報告してくる。


「えっ、あれ欲しいの?」

「いえ……町に住んでるなら、買った方がいいのかなって思いまして」


 優奈は町の支配者であり、ある意味、王とも言える。

 だから、そこに属する二人は住民として買うべきかと悩んでいた。


「あたしは優奈姉ちゃんのことは好きだけど、こういうのには興味ないから買わない」


 何も知らない希海は呑気に言う。

 真相を知ってから、二人は優奈への対応に困っていた。


「それが正しいわ。いらないなら買わなくていいのよ。優奈を喜ばせても、何の為にもならないわ」

「……じゃあ、止めます」


 軽い助言で二人はあっさりと買うのを止め、麻衣は、この場に優奈が居たらショック受けてただろうなと笑う。


「そうよ。好きに生きればいいわ。それがあの子の望みでもあるんだから」


 裏の顔を知ったことで、より優奈への理解が深まっていた。



 麻衣が寮の前まで戻ってくると、そこには美咲と真琴の姿があった。


「ほっ」


 寮の壁に向かっていた美咲は壁を蹴り、バク宙をした。


「凄いことやってるわね……」

「やってみたら出来た」


 美咲は、あっけらかんと言う。


「あたしはコンクリートの上でやる勇気はないけど、ボールプールとかの前でなら似たようなの出来るぜ」


 薬のおかげで運動神経が上がっていたが、その中でも運動が得意な二人が突出して効果を出せていた。


「私は出来そうにないわ」


 身体の性能的には出来ることでも、麻衣は自分では全くできそうになかった。

 やる勇気もさることながら、身体の使い方にも差があった為、運動が得意でもない普通の子にとっては敷居が高いことである。


 そこで麻衣は、真琴が手に持つ袋に気付く。

 その袋からは丸まったポスターが飛び出ていた。


「それって……」

「これ? 優奈の」


 真琴は袋を開いて、中の写真集やCDを麻衣に見せる。


「買ったの!?」


 優奈のグッズ、それも発売した三種全てがあった。


「優奈は友達だから買ってやらないとな」


 友達が出したからと、真琴は応援の為に購入していた。


「ケチなのに意外だよねー」

「友達のは別だろ。頑張って出したのなら買ってやらないと」


 友達想いの良い子だった。


「う……そんなこと言われたら、買わないのが悪い気がしてくるわ」

「麻衣は買ってねーの? あたしらより仲いいのに」

「智香は買うみたいだけどね。私は近いからこそ要らないというか買い辛いというか」

「そういうもんか」


「じゃ、私は戻るわ」


 あまり優奈のグッズについて喋ることはない為、麻衣は話を切り上げる。


「おう、またな」

「バイバーイ」


 麻衣は二人と別れ、寮の中へと入った。

 平然とした態度で歩くが、二人と離れたところで息をつく。


「……真琴に優奈のことバレたらヤバいわ」


 真琴との会話中、管理者を信奉していたことを思い出し、麻衣は内心ドキドキだった。

 管理者を操っていたのが優奈だと知られたら、信奉の対象が移るのは明らかである。

 そうなったら、どうなるか。

 詳しくは想像できずとも、大変なことになる予感しか麻衣はしなかった。


「絶対に知られないようにしなきゃ」


 麻衣は改めて気を付けようと、心に刻んだ。




 エレベータで上がり、智香の部屋へと戻って来る。


「おまたせーって、何してんの?」


 部屋に入った麻衣が見たのは、おしゃぶりをした優奈を抱きかかえる智香の姿だった。


「ばぶばぶ」


 優奈は喋らず、手を動かして赤ちゃんの真似をしている。


「赤ちゃんごっこだって。優奈ちゃん、まだ生後半年だから、本来ならこうやって、お世話しないといけないんだよ」


 智香が説明すると、優奈がおしゃぶりをしゃぶりながら麻衣に言う。


「麻衣ママも抱っこしてー」

「誰がママじゃ。大体、優奈は普通の赤ちゃんとは全然違うでしょーが」

「それでも赤ちゃんであることには変わりないよ」

「おっさんでもあるでしょ」

「はうっ」


 優奈はショックを受ける。


「はいはい、優奈ちゃんは女の子だよ」


 ショックで固まる優奈を智香は優しく頭を撫でる。


「智香ママー」


 慰めてもらった優奈は手を伸ばして甘える。

 その手は智香の胸をガッツリと揉んでいた。


 それを麻衣は呆れた目で見ている。


「男なのか女のか、大人なのか子供なのか赤ちゃんなのか、訳の分からない存在だわ」

「当の本人も分かってないという」

「ほんと、難解な存在だわ」


 優奈の立ち位置が確定できなくて、麻衣は頭を抱える。


「でも良かった。麻衣ちゃんと智香ちゃんが、あの二人みたいに、どう接していいのか分からなくなってたら、どうしようかと思ってた」

「いや、分からないわよ。分からな過ぎて、これまで通りに接するしかないだけ」

「えぇ……」


 年齢性別が分からない上に、町の権力者でもある。

 いくら考えても分からない為、二人は考えるのを諦めて、普通に接することにしていた。


「私も分かんないけど、優奈ちゃんは優奈ちゃんだから。何であったとしても、私は優奈ちゃんの友達だよ」

「そうね。ここまで付き合ったら、友達であることには変わりないわ」


 どんな存在であっても、二人は友達として優奈を受け入れてくれていた。

 二人の想いを受け、優奈は感極まる。


「二人とも……。でも、出来たら友達から一歩踏み出して、恋人になってくれると嬉しいな」

「つけ上がるんじゃないの」


 欲を出した優奈が麻衣に一刀両断される。


「あはは」


 そしてそれを見た智香が笑う。

 仲が良い三人だった。


 これからも平和で幸せな楽園の日常は続いて行く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エロゲー版『作ろう! 無知っ娘だけの町 プラス無限ダンジョン』FANZAにて好評発売中。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ