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106話 聞き込み調査

 まず四人が、やって来たのは運動場。

 そこでは現在、バトンリレーが行われていた。


 バトンを持った真琴が全力で走っている。

 その表情はとても生き生きとしており、楽しそうだった。


「好きなこと出来て、景品貰えるなんていいわね」


 競技に参加した子は、出し物を出した子と同様に粗品が貰えることとなっている。

 出し物で貰えるものよりはランクダウンしていて、基本的にお菓子くらいしか貰えないが、出る度に貰うことができる為、沢山出る子はそれだけ多く貰うことが出来た。


「かもんかもん」


 バトンを待ち受ける美咲。

 その姿はスポーツブラとパンツの下着姿だった。


「美咲、パス!」

「あいよ」


 バトンを受け取った美咲は下着姿のまま走り出す。


 それを見ていた麻衣達。


「あれはあれで害悪ね」


 未久達も苦笑いする。

 美咲は人前でも堂々と下着姿どころか裸にもなる為、下級生達の教育に悪影響だった。


「でも、陸上する格好に見えなくもないから」


 智香がフォローを入れる。

 スポーツブラとパンツ姿で走っているので、遠目で見たら陸上選手の恰好に見えなくもなかった。


「いや、見た目の問題じゃないわ……」



 呆れながらも眺めていると、競技を終えた子達が戻って来た。


「あ、未久ちゃん達だ」


 競技に参加していた希海が未久達の姿を見つけて駆け寄って来る。

 その後ろから真琴と美咲もやってきた。


「珍しい組み合わせだな。お菓子やるよ。出る度に貰えるから大漁なんだ」


 真琴達は競技で貰ったお菓子を麻衣達に渡す。


「ありがと。ちょっと聞きたいんだけど、優奈のことで変だなーって思ったことない?」


 麻衣は一先ず自然を装い、軽い感じで尋ねた。


「変? 特にねーな。変と言えば変だけど、変人度合いで言ったら美咲の方が上だし」

「なんだとー」

「文句つけるなら奇行止めろよ。突然道の真ん中で前転しだすとかさ。隣でやられると、あたしまで変な目で見られるだろ」

「知りませーん」


 ふざけるように問答する真琴と美咲。


「そういう意味じゃなくて。優奈の言動で引っかかったこととか、おかしいと思ったところはないかってこと」

「何だそりゃ? 何かあるのか?」

「何もないけど兎に角、何か心当たりあったら教えてちょうだい」


 優奈を怪しんでいることは、まだ言わなかった。

 信じる信じないで問答になるとややこしいので、まずは聴き取りを優先することにしたのだ。


「んー、特にないかな」

「変わった遊びすることあるよね。変態遊びとか」

「あれ、面白いよな。あー、でも、あの時は困ったな。罰ゲーム付きの勝負に執着してきた時」


 執着する理由を知っていた麻衣と智香は微妙な顔をする。

 未久はどうしてかと怪しんでいたので、麻衣が小声で教える。


「負けた人は勝った人の言うことを何でも聞くっていう罰ゲームだったのよ」

「あぁ……」


 セクハラ的な話だと分かり、未久達も微妙な顔になる。



 二人は特にないようだったので、麻衣はその横で他人事のようにお菓子を食べている希海に訊く。


「希海ちゃんは?」

「ないよ。優奈姉ちゃん、よく奢ってくれるから好き」


 奢っていると聞き、麻衣達は視線を交わす。

 希海に対しても頻繁に奢っているとなると、小遣いで貰った以上の金額を使っているという疑惑が益々深まる。



「そういえば、町に来る前に一度会ったことあるのよね? その時のこと、詳しく教えてくれない?」

「いいよ。うんとね。公園で遊んでた時に、知らないおじさん話しかけてきたの。ちょっと、お願いしたいことがあるって。聞いてくれたら、お菓子あげるって言ったから、ついて行ったんだ」

「そんな古典的な」

「それで神社の裏まで連れて来られて、そこでズボン下げてって言われて下げたら、写真撮り始めたの。暫く撮ってたからね、今度はパンツ脱いで横になってって言われたから、パンツ脱ぎ始めたら、おじさんもベルトガチャガチャやって脱ぎ始めて……」

「ちょっと待って。これ、聞いていい話なの?」


 雲行きが怪しくなった為、麻衣が慌てて止めた。


「? いいよ」

「ほ、ほんとに?」

「うん。脱ぎ始めて。でも、そこで急に走って、どっか行っちゃった」

「何で?」

「何でだったかな? あ、パトカーのサイレンが聴こえてきたからだ。その後すぐに優奈姉ちゃんが来たんだよ」


 前にその時の話に触れた際、優奈は自分で助けたと言っていた為、警察は優奈が呼んだのだろうと麻衣達は思った。

 だが、それと同時に麻衣は、優奈が変質者は殺したと言ったことを思い出す。


(まさか、本当に?)


 冗談だと思っていたが、疑惑が膨らんだ今、本当に殺したのではないかと思い始めていた。



「それで優奈はどうしたの?」

「お菓子くれなかったって落ち込んでたら、代わりにクッキーくれた。美味しかったよ」

「その後は?」

「それだけ。クッキーくれて、どっか行っちゃった」


 ただ単に助けたというだけの話だった。


 話を聞いていた真琴が言う。


「変態から守ったのか。優奈、すげーな」

「いいお姉ちゃんだよ」


 希海は未久が抱く優奈への不信感を払拭しようとアピールするように言う。

 しかし、正にその不信感で調査中だった未久には響かなかった。


「んで、何で優奈のこと調べてるんだ?」

「ちょっと気になることがあって」


 麻衣は怪しんでいることを真琴達に言うべきか迷う。

 だがその時、スピーカーから次の競技の案内がされた。


「次は綱引きか。わりぃ、もう行かないと」

「ええ、時間取らせて悪かったわね」


 真琴達三人が去り、再び四人だけとなる。


「大した話はなかったけど、怪しさは増したわね」


 未久と智香が頷くが、そこで結衣が言う。


「でも、良いことしかしてない」

「そうね。悪さしてるとは思ってないけど」


 怪しんではいるものの優奈の行動に悪意は見えず、女の子の為に動いているように見えた。


「信用するのは、まだ早いです。他人から見えているのは、ほんの一部分のみ。ハッキリ分かるまで信用すべきではありません」

「ええ……」




 その後も四人は引き続き聞き込みを行うが、目ぼしい情報は出てこなかった。


「あまりいい情報はないわね。手助けしてもらった子は何人か居たけど、無理矢理内容訊く訳にはいかないし」


 最近は下級生の問題解決にも努めていた優奈。

 聞き込みで、手助けしてもらったという子達とも話が出来たが、基本的にデリケートな内容だったので、踏み込んで聞くことは出来なかった。


「他に訊けそうな人いますか?」

「うーん、私ら以外とは関わり薄いのよね」

「なら一旦、状況を整理しましょうか」


 未久は周りに人が居ないことを確認してから、状況整理を始める。


「まず、優奈さんは町に来る以前に、住民になる子の複数人と面識を持っていた。

それも近い時期に、離れた場所で。

町では、どう見てもお小遣い以上のお金を使っているのに、稼いでいる様子を見た人はいない。

また、管理者に口利きできる立場で、裏で接触もしていた。

そして、この町は優奈さんにとって、とても都合のいい場所であると」

「待って。それだと優奈と管理者さんが結託してるみたいじゃない」

「はい。状況から察するに、その可能性が高いかと」


 麻衣達に衝撃が走る。

 教師や大人代わりとして町で活動しているロボット達の支配者として君臨する管理者。

 人類を助けるという崇高な目的で動いていることもあって、未久以外の女の子達は盲目的に正しいものだと信じていた。


「そうじゃなければ、他人の移住理由なんて知り得ません。遊園地でのこと覚えてますよね。店員ロボットが壊れた振りして暴れて。あれ、違和感覚えませんでした?」

「言われてみれば……」


 理由があったとはいえ、やったのは暴力と恐怖を与えることである。

 町を管理し、安全を守るロボットにしては、らしくない行動だった。


「私が同じことを頼んでも、やってくれるとは思えません。頼んだのが優奈さんだったから、したんだと思います」


 そこで智香が言う。


「そういえば町のことで、こうして欲しいって話を優奈ちゃんの前ですると、その通りになることが多い気がする」

「……」


 話し合えば話し合うほど、疑いが確信に変わって行く。

 四人は快適な楽園が崩れ去っていくような感覚だった。



「何の目的で何故結託しているのか、知るには本人に問い質すしかないですが……」

「多分、恍けられるわよ。問い質すなら、言い逃れできない証拠を突きつけないと」

「証拠なんてありますかね?」

「分からないけど、あるとしたら優奈の部屋かしら」

「でしたら、今すぐ行きましょう。今なら優奈さんは出し物で学校を離れられないのでチャンスです」


 四人は証拠を掴むべく、寮へと向かった。

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