自分では気づかない
「臭い」
陽国から真と別れて最低限の宿と野宿で急いできたのに。文佑から言われた一言にファンリーは肩を落とす。
労いの言葉ぐらいくれたって、兄上は俺に冷たい。そんなに臭うのかな?
自分自身の臭いを嗅ぐが全くわからない。
「ハイン殿、愚弟が申し訳ない」
ハインに会釈程度に文佑は頭をさげる。
「大丈夫ですよ」
ハインはにこやに笑っているがファンリーから離れて腕で鼻を押さえている。
う。やっぱり臭いのか。
「リーどうにかしてこい」
文佑らリーを睨む。
「兄上、わかりました」
ファンリーは状況を早く知りたいのにししぶしぶうなずく。
前回も宿泊した場所にファンリーは拠点をおいた。湯あみしてすっきりして早々と宿屋をでる。
かなり臭かったのかな。
宿屋の店に入るなり部屋に押し込められ頼んでもないのに大きな桶にたっぷりのお湯を部屋に持って来てくれた。
一階は食堂だったし、宿屋の女将に悪い事しちゃったな~。
文佑達がいた場所に戻ろうとした時、ファンリーは見知った顔を見かける。
あれ?ユアンなんでこんな所に陽国に戻ったはず。ユアンに近づこうとすると後ろから声をかけられた。
「リー?」
声をかけられた方を向くとファルークがたっていた。
「おぅ。ファルーク」
先程見ていた場所を見るがユアンらしき人はいなくなっていた。ユアンがまた戻ってくるはずないし、気のせいか。
「リー、久しぶりだな。こんなに悠長にしていていいのか?お前の所の姫さん大変な事になってるぞ」
「ユナが!」
ファルークの肩を力強くぎゅっと握る。




