ファン家
「おまえ、馬車も使えるんだな」
玉鈴は馬車の荷台で横になったフェイの手当てをしながらファンリーに話しかける。
ファンリーが馬車の運転をし、ユナが今までファンリーが使っていた馬に乗っている。
「おまえって、まぁいいけどね。ファン一族だからな」
「ファン一族?」
ヨウ国出身のフェイ、玉鈴はあぁと納得する。その答えにユナが反応する。
「ファンとは黄色のファンなんだ。ヨウ国の王は公式な場では必ず黄色の服をお召しになる。その着ている体を守る一族がファン家なんだ」
ユナはさらにキョトンとする。
ユナは幼い頃に祖父からヨウ国、ヤカモズの事を教えてもらったが細かい事まではわからなかった。
「守るっていっても戦争や兵を動かすようなことがなければ仕事がない。有事がなけば畑仕事や土木なんかを担当してたんだ。土なんかも黄色だろ。収穫や土木に必要な荷を運ぶ為、ファン家では必須なんだよ」
「それも20年前まででしょ。今や国の中心で働く王様の信頼が強い一族ですよね」
フェイが体を起こす。
ははとファンリーは乾いた笑いをする。
「それでも兄上がファン一族の名前の由来を忘れるなって」
「そうか」
少しうつむき玉鈴はうなずく。その様子を見て何か思ったのかフェイが捕捉しはじめる。
「ヨウ国には初代の王様から色のついた名字をもらった一族がいるんだ」
「例えば黒家、黒は王様が公式の場でかぶる帽子が黒、髪の毛も黒。頭脳を司り宰相や大臣を多く排出している」
慰めにもならないかもしれない事をいったかなとフェイは玉鈴の顔を優しく見る。そんなフェイを無理に微笑んでかえす。
「その一族と青一族の内乱のせいでファン家は中心にかりだされて本当にいい迷惑だよ」
玉鈴はさらに落ち込む。そして見えない所からフェイはファンリーをにらむ。
この後3日間、ファンリーは足の親指のつけねにかゆみを覚える。ファンリーは革の靴でなかなかかけず悶絶する。その姿を見てフェイはふんと鼻をならすのだった。




